【自己紹介】卒業式の日に突然陽キャになった俺
高校の卒業式の日。
式が終わり、教室に戻ってきたクラスメイトたち。
ひとりひとり順番に、みんなに向けて一言、最後の挨拶をしていく。
俺は最初に自分の挨拶を済ませた。
みんなの挨拶がまだ続いているが、おれはニヒルにひとり教室から立ち去ろうとした。
しかしなぜか魔が刺して、その場に残ることにした。
高校のときの俺はひねくれていた。
そしてひとりぼっちだった。
まだまだ幼かったので、それがよいことだと思っていたのだ。
そして50を過ぎた今も、そんな難儀な性格を引きずっている。
しかし今日見た夢の中では、俺はその場にとどまった。
そしてみんなの最期の挨拶に耳を傾けた。
ひとりひとりの挨拶が、おもしろい。
今まで意図的にみんなと関わってこなかったけど、
コイツはこんなことを考えてたんだな、
こういう人だったんだな、
なんだ、面白い人だったんだな。
そんな気づきがあった。
高校生活でぜんぜん仲の良くなかった女子が、
最後の挨拶の中で「わたし今日が誕生日なんです」と言った。
たぶん当時の俺なら、無言を貫いていただろうが、
今日見た夢の中の俺はそれに対し
おめでとー!!
と即座に反応した。
するとクラスメートたちもそれに倣い、
口々に
おめでとう!!
おめでと!!
とリピートした。
別に心はこもっていない。
おめでたいだなんて思ってない。
ただ誕生日だとアピールするから、
それに反応しただけだ。
しかしそれがとても楽しかった。
笑っていいとも!の客がタモリに反応する。
「そうですね」
アレに近い。
タモリがしゃべったから、
それにただ反応して「そうですね」と言ってるだけ。
スタジオアルタの客に心なんてない。
俺の「おめでとー!」にも心はない。
しかしとても楽しかった。
心のこもってない「おめでとう」
脊髄販社の「おめでとう」
それがすごく楽しかった。
みんながなにか言ってる。
それに反応する。
そのことがすごくすごく楽しかった。
心なんて、きっと後からついてくる。
「わたし今日誕生日なんだよ」
そんなふうにアピールする人がいたら、
おめでたいって思ってなくても、
カタチだけでも「おめでとう」と言ってみる。
その言葉が欲しくてアピールしているわけだから、
「おめでとう」と言われた人は嬉しくなる。
その様子を見て、おめでとうと言った俺も嬉しくなる。
お互いに嬉しくなるのなら、言ったほうがいい。
心があろうがなかろうが、そんなものは関係ない。
恥ずかしがることはないし、悪いことをしているわけでもない。
なんかゆってほしそうにしているヤツがそこにいるのならば、なんかゆってやる。
それだけで、みんなしあわせになれるのだ。
夢の中の卒業式で、
俺はその後もクラスメートたちの挨拶に合いの手を入れ続けた。
なんかみんな嬉しそうにしてたわ。