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〜見たことのあるクラスメイト〜 聞いた話②

職場のY君に聞いた話

Yさんが中学校2年生に上がったばかりの頃、クラスにWと言う転校生がやってきたという。

Wは気さくな男子生徒で、転校してから数日で彼の周りにはいつも人だかりができていたらしい。

また、友人の聞くところによると髪型はスポーツ刈りで、日本離れした堀の深い顔のイケメンという話だった。

ここで話だった、というのには訳がある。

Yくん曰く、Wの体は普通の人間なのだが、首より上がおかしな事になっていたらしい。

そこには人間の頭は無く、その2、3倍はある蟹とカマキリを合体させたような、そんな言いようの無いものがあったという。

最初、Wが転校して教室に入ってきた時、何かのコスプレなのかと思ったそうだ。

しかし先生や周りの生徒の反応見る限り驚いた様子は無く、暫くしてこれは自分にしか見えていない事に気づいたという。

それだけでもかなり困惑する状況だが、Wに関してYくんをさらに困惑させることがあった。

それは、明らかに人間には見えないWに対し、強い既視感を覚えたというものだっだ。

記憶には無い、しかし見た事がある、気がする。

それを裏付けるかのように、Wは事あるごとにYくんに話しかけてきたそうだ。

Yくんはそれに対し、できるだけ普通に、最低限の接し方をしていた。バレたらこの化け物に何かされるのではないかと思ったらしい。

この状況をどうにかしようと、YくんはまずWに対する既視感を探る事にしたそうだ。

両親に頼んで、小学校、幼稚園、自分が赤ん坊の頃の写真が入っているアルバムまで引っ張り出してもらい、Yくんは何かWに繋がるものはないかと探した。

すると、幼稚園の頃のアルバムの中に一枚気になる写真を見つけたという。

その写真は家の前でYくんと見知らぬ少年が肩を組んで写っているという物だった。Yくんはこの少年に対して、Wを見た時の既視感に似たものを感じたらしい。

しかしYくんはこの少年について思い出せる事は無く、母親も覚えてないという。

結局Yくんはその写真以外何かを見つける事も無く、その日は寝てしまった。


次の日、いつも通りYさんは庭に埋めてあった父の足を掘り返すと、それを朝食にし、制服に着替えて家を出たそうだ。

学校に着くと教室には既に大半のクラスメイトが登校しており、キシキシと大きな牙を鳴らしながらお喋りをしている。

周りの友人たちに挨拶しながらYくんが自分の席に座ろうとすると、教室の後ろから、あっ、という声が聞こえた。

Yくんが後ろを振り向くと、Wがこちらを驚いた顔で見ていたそうだ。

狼狽しているWに心配したYくんが近づき声を掛けると、Wは明らかに動揺した顔をしたまま固まっている。

Yくんはその後もWに話しかけたが、どうにもふわふわとした返事しか返って来ず、始業のチャイムが鳴ると同時にWは話を打ち切って、そそくさと自分の席に戻っていったそうだ。

Yさんは釈然としない思いを抱きながらも自分の席に座ると、Yくんはある事に気づいた。

Wに感じていた既視感や怖さがすっかりなくなっている。

そんな事を思っていると、担任の先生が大きなハサミを鳴らしながら教室に入ってきた。

静かにと先生が言ったが、それでも話すのをやめない生徒に対し、先生はハサミを振り下ろす。

生徒の頭の殻が割れ、脳味噌が飛び出している。床に飛び散った脳味噌に周りの生徒が群がっていく。

Yくんがその光景を見ていると、強い違和感と吐き気が襲ってきたという。

漠然と何かがおかしいのは分かるが、その何かがわからない。

突然後ろから誰かが走ってくる音がする。

振り向くと足音の正体はWだった。

そしていきなりYくんの頭を張り倒したのだという。


Yくんが椅子から転げ落ち、顔と背中の痛みに身悶えていると、張り倒した張本人であるWが大丈夫かと声をかけてきた。

大丈夫な訳あるかと文句を言おうとすると、目の前には化け物の頭をしたWの顔があった。

その瞬間、Wの顔がさっきまで普通の人間の顔だったことに気がついたそうだ。

あれが違和感がなくなった正体かと思うと同時に、先程まで目に写っていた世界が一瞬のうちに頭に流れ込み、そのままYくんは気を失ってしまったらしい。

目を覚ますとYくんは病院のベットで寝ていたという。

その後医者から診察を受けたが、頭と背中の打撲以外はなんの異常もなく、その日のうちにYくんは退院できたそうだ。


Wはこの出来事以降、失踪してしまったという。

友人の話では、Yくんの頭を張り倒した後、そのままWは教室から出ていきそのまま戻って来なかったらしい。

その後、Wやその家族とも音信不通になり、家も夜逃げのような有様で、学校では大変な騒ぎになった。でも結局、Wは見つからなかったという。

また、事件があったその日、Yくんの家に空き巣が入った。

金品などの換金性の高いものは盗まれてはいなかったが、その代わりにアルバムや写真といった類のものが一つ残らずなくなっていたという。

その出来事の後、Yくんは特に大きな問題もなく大学に進学し、卒業後今の会社に就職した。今年の春には結婚も控えている。

私はあれこれ聞きたい事が山ほどあったが、Yくんはこれ以上の事は何も教えてくれなかった。

ただ、あれからずっとYくんは鏡を見ると、言いようもない違和感に襲われるらしい。







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