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釣りとクソコメ

いまどきのウェブ編集者の、基本的な役割は何か。編集者には紙の時代から、常に「正確さ」(の担保)と「売ること」の両立が求められ、モノによって2つのバランスが異なる場合があるとしても、それはウェブ編集者であっても変わりはない。

ただ、ウェブにおいても「正確さ」はシンプルに表記や内容の正しさを指すが、紙の「売ること」はとりあえずその紙の商品自体を売ることになるのに対し、無料で読まれるウェブ記事の事情はもう少し複雑になる。

最も分かりやすい「売ること」の形は、ウェブでリアルな物(ブツ)を売ることだ。そこまでいかなくても、読者に会員登録あたりの手間をかけさせることに成功すれば、それは売ったことになると言っていいだろう。コンバージョンというやつである。

2つめは、単純なアクセス数だ。現状のウェブ媒体のほとんどは、広告枠の入ったページへのアクセス数に応じて広告費が入ってくるので、編集者の工夫によってページビュー(アクセス)数やユーザー(読者)数を増やすことを、一種の「売ること」と言ってもいい。

3つめは、周知とか認知だ。筆者や媒体の名が売れて、世間で有名になることを「売れる」と言っても、当然いい。

そして、売る手段には「楽しい」「可愛い」「有益」といったポジティブな要素のほかに、「悪名は無名に勝る」という言葉があるように、批判的なコメントが殺到するなどのネガティブな反応による、いわゆる“炎上”によっても可能である。

したがって、炎上では一般的にモノを売りにくいという要素はありつつも、ウェブ編集者(あるいは編集者の視点を有したライター)がアクセス数を増やしたり、認知度を高めたりする方法を考えるときには、ポジティブな要素を押さえつつ、“炎上”の火加減をどうコントロールしてミックスするか、というところがポイントになってくる。

で、DANROの連載6回目のひとり反省会だが

今回の「裏日本」という言葉は炎上要素であり、アクセスを取りにいったということは否定できない。

Yahoo!のトップページにも、ヤフトピの下に掲載されていた。

Yahoo!のコメント欄には、予想どおりのクソコメが相次いでいた。

見出しで釣られた人も、文章をすべて読んでみれば、筆者が「裏日本」という言葉を否定的に考えているわけではまったくないどころか、レバレッジを利かせて肯定的なブランドに転換しようぜ、と言っていることが明確に分かるはずだが・・・どういうことなのか。

今どき裏日本なんて使わない
差別的用語案件。
裏表ないでしょ 差別ですか?
これは差別的用語じゃないの?
裏? 裏って表現はどうなの???
ちょっと、裏日本て失礼なんですけど。
いまどき「裏日本」なんて云い方するやついるのぉ?
裏日本、って失礼な言葉だ
不愉快な記事(そう思う18、そう思わない30)

他人に失礼と平気で言えるヤツは失礼、という法則はとりあえず脇においたとしても、この人たちは、まず、日本海側が「裏日本」と呼ばれていた史実があることを認めたほうがいいだろう。

そしてそれが、都のある方を表と呼んだという説があるとしても、比較的ニュートラルな意味から、明確に侮蔑的、というか屈辱的な響きを帯びるようになったのは、文中にも書いた通り、太平洋側との大きな「経済的格差」が生じた戦後の話だ(もしかすると明治後期以降の、日本における産業革命時にもその萌芽はあるかもしれない)。

そんな格差がなく、北前船時代のように日本海側が栄えていれば、そんなひがみっぽい恨みは起こらなかっただろうに(そのひがみや恨みを集めて政治的な原動力にしたのが、新潟三区の田中角栄である)。

そういった「裏日本」という言葉を「差別」と呼んだ背景も考慮せず、そして筆者がその言葉をあえて使って、価値の転倒を起こそうと呼びかけていることも読み解けずに、「それは差別」と言って黙らせようとして、何の意味があるのだろうか? 言葉狩りをすれば、「差別」は、ひがみ、恨みは消えるのか?

裏日本なんて言葉、とっくの昔に「死語」ですよ。よくもいまさら、そんな言葉で記事になんてしましたね。

いま使われていない死語であり、差別的色合いを帯びているからこそ、それをひっくり返して使おうという趣旨じゃないか。

まあ、「裏」という言葉に絶対的な悪意を感じる人なら仕方ないが、本当にどんな場合においても「裏」という言葉はネガティブにしか使わないのだろうか。こんなコメントもあった。

若い人達には裏日本という言葉は差別的に聞こえるの?へえ~。
じゃ裏原宿とかは?
派手なとこから少し離れた、ちょっと裏に入った所こそ粋なんですけどねぇ。
かつての栄華の跡をうかがわせる北陸の港町なんざ、最高に風情のある裏日本だと思うけどな。
趣きのある良い記事でしたよ。
新潟に住んでいる。裏がcoolなイメージになれば嬉しい

さらにいえば、冒頭の「法事」部分や、文末のプロフィール部分で、筆者がルーツのひとつを裏日本に持つ人間という素姓も明かしているのにもかかわらず、筆者を差別主義者のように批判するのは、

あたくしには読解力がありません、と言っているようなものであり、まったくの恥さらし行為である。以下のコメントは、筆者に成り代わってどなたかが書いてくださったものでありがたい。

"裏日本"出身者が、お前らが言う"裏日本"はスゲーんだぞ、ナメんなよ!という内容を書いて、差別用語うんぬん言われる筋合いはない。

まあ自業自得ですけど

とはいえ、筆者はすでに書いたように、「裏日本」というワードにマイルドな“炎上”効果を求めているのだから、正しく興味を持ってもらえる人のほかに、曲解してクソコメを飛ばしてくる人が一定数いるということは、すでに織り込み済である。

言い換えると「こいつはバカか」と謂れなき批判を受けることを許容できるライターや編集者だけが、読解力が弱くネットにクソリプやクソコメを投稿して賑やかしてくれる方々の釣り堀に針を下ろすべきなのである。

※ただし、自分は炎上慣れしているとか、あらゆる炎上をコントロールできるというようなことを、ドヤ顔で語っているやつを見ると、おっかなくてしようがない。そんなことが可能なわけがない。

クソコメは、筆者の自業自得の産物であり(もちろん想定外のクソコメというものもありうるが)、上記のようなクソコメを飛ばしてくる人たちを真正面から強く批判することはできない。

ただ、ネットのインフルエンサーといった人たちを見ていると、自分が有名になる(あるいは有名な状態を維持する)ために、わざわざ可燃性の高い“炎上”ネタをぶっこんでいるのに、それに対するクソコメやクソリプが来ることをまったく許容しない人もいる。あれ、どういう神経なんでしょうね(笑)

それでは、今回のクソコメ・オブ・ザ・ウィークはこちら。

かつては北前船の交易が盛んで、新潟や金沢は大都市だった訳だが、今時「裏日本」なんて言葉を使うかね?
筆者は高度成長期の傾斜生産方式に飼いならされた団塊かね?

北前船とか高度経済成長とかって、俺が書いてることそのままじゃん? なんで自分が考えたかのように書いてるわけ? プロフィールに書いた俺の生まれ年は見てない? 次点はこちら。

正確には北前船は蝦夷~敦賀~琵琶湖水運~畿内ルートを指します。瀬戸内海経由は単に【西廻り航路】です。不正確なことを書かないように。

中途半端な歴史通が必ず出てくるから、こういうテーマは面倒なんですよね。西廻り航路の寄港地も、北前船という名称も、確固としたものはないと考えるのが現実的でしょう。現実の航路は無数にあり、船の呼び名も(弁才船など)ひとつふたつではなかったに違いない。

そんな中で、例えばウィキペディアの「北前船」の項に書かれている「西廻り航路(西廻海運)の通称でも知られ」という解釈で使うことに何の問題があるのか。

さらに言えば、北前船の航路は「後に蝦夷地(北海道・樺太)にまで延長された」のが通説であって、コメントのように北前船の起点/終点が蝦夷にしかないと考える方が不正確ではないのか。

記事かショボい。窓際族の暇つぶし 笑(そう思う2、そう思わない5)

俺がオフィスの窓際に座っているのをなぜ知っている!?

地元では使われていなかったので
初めてその表現を知りました。
記事内で言う、裏日本出身です。
県内で、内陸部と海岸沿いの平野部とで
なんとなしに、人の性質や文化の違いを感じてました。
各都道府県の県民性を記した書籍内で
『内陸部は素朴な人柄=一般的に知られる県民性~』だが
『 沿岸部は新しい物好きで個性が強く、県内でも特殊』と書かれていたのを見たことあります。
沿岸部は大きな港町があり当時の新しい文化も入りつつ、城下町もありそのプライドや個性が強く残ってるから。。だそうです。
(そう思う22、そう思わない0)

これに関しては私も一家言ありますが、本音を言うと、今度こそ差別になるので自粛します。ただ、私は個人的に「港町の論理」を愛しています。それに比べて、流動性の低い場所に生まれ育った人たちは・・・。

裏日本という言葉はいいかもしれない。
これから外国人観光客が増えていくが、
日本の魅力は、東京、大阪、京都だけでなく、
食や文化は、裏日本にあると思えば、
リピート客が望める。何回来ても魅力ある国だと思われる。

まさにそういうことを訴えたかったわけです。読めています。

裏日本とかそれは問題外だしタイトルダメダメ(笑)
当時だって差別用語。

読めてない。

うむ、たしかに美味しい物は日本海側にたくさんあるな

ですよね。

「裏日本ブランド 確立」賛成です。

ありがとうございます。

なんか差別だのうるさい人こそ、差別しているような気がする。
単に区別しやすいから使ってただけで、昔ながらの地名にも意味があって、元々災害を受けやすい土地なのにわかりづらくなって、開発が進んで被害が拡大してるのと遠くない気もする。

ああ、昔から「蛇落地悪谷」と呼ばれていた地名を、後世の人が縁起が悪いからと「上楽地芦屋」に変えてイメージアップを図って人が移り住んだら、そこで悲惨な土砂災害が起こったという話ですね。不快だからといって史実を覆い隠すと、ろくなことがありません。

おもしろい記事だな

ありがとうございます。

結局お酒の話しかないじゃないか。

それは褒めているのか、けなしているのか。

良い話し。

ありがとうございます。褒めてるコメントは他にもありますが、むずがゆいのでこれで最後にします(笑)

こんなこと書いて飯が食えるのか。将来暗い。

吉田健一なんてもっと酷いじゃないか。まだまだ甘いわ。

ちなみに後藤明生は、会社員を辞めて専業作家になるときに、周囲から「食べていけるのか」と聞かれ、「大丈夫」と答えたそうですが、後年、そのときのことを「食欲の話だと思った」と振り返っています。


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