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オレゴンのファーマーズマーケット

私は2018年−2019年とオレゴンのファーマーズマーケットで出店していた。今年は残念ながらコロナの心配もあり出店を見合わせたのだが、来年は果たして出店できるだろうか。。。

オレゴンには数え切れないほどのファーマーズマーケットが存在する。出店する場合にはいろんな審査やライセンスなどをクリアしなければいけないのだが、お店を出すよりは手軽に始められるビジネスの形である。私も初年度はコマーシャルキッチンを借りて、2年目は自宅のキッチンでドメスティックキッチンライセンスを取って、ファーマーズマーケットで和のテイストが入ったアメリカンペーストリーを販売していた。

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ファーマーズマーケット、人とのつながり

まず私が思う出店する楽しさは、ベンダー仲間の交流である。オレゴンに引っ越してきてあまり知り合いもいなかった私だが、ファーマーズマーケットに出店した途端に友達が増えた。野菜、果物、畜産などのファームの経営者から、ソース屋さん、スキンケアプロダクトにアーティストまで。いろんなビジネスを持つ人々が集まるのがファーマーズマーケット。ベンダーは競い合いにならないよう運営側が似たようなビジネスを避けて出店者を決めていく。だからライバル視することもなく、皆雨風や猛暑にも耐えながら助け合って出店している。ベンダー間での情報交換も密で、経営者としての悩みなども相談できる人がたくさん。みんないろんな経験を積んで出店者となっているので、話題の幅はとてつもなく広い。30過ぎた私もみんなの話を聞いていると、まだまだ私も経験が足りないなと感じる毎日だった。そして何よりも、残ったものでの物々交換も出店者の醍醐味である。お菓子は次の日や次週に持ち越せないものばかり。売り切れるのが一番だが、残ったお菓子は野菜や果物、時にはソーセージやソースに姿を変えてその日の晩ご飯になることも多かった。

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他にお客さんとの距離感も大切だ。オレゴンの人たちは本当にフレンドリー。ニューヨークに引っ越した時は、ニューヨーカーは日本人と違ってフレンドリーだなぁと思ったものだが、オレゴンにくると、オレゴニアンはニューヨーカーと違ってフレンドリーだなぁに変わった。クッキーひとつ買うにしてもいろんな情報が飛び交う。ファーマーズマーケットでの店番は、ほぼ井戸端会議といってもいいほど、よく喋る。知らない人でもお構いなし。店の前に何人も集まって一緒に話をするなんてこともしょっちゅうだ。人との会話を好まない人にとっては難しいかもしれないが、私はそんなおしゃべりが大好きだった。常連客の中には、お店を閉めている今でも、たまにどうしているかとメールをくれる人も。出店をしていなくとも忘れないでいてくれるのがありがたい。毎日家にいる自粛生活の中、声が枯れるほど話をしていたファーマーズマーケットを恋しく思う毎日である。

ファーマーズマーケットの手軽さ

以前、ブルックリンにいる頃に一度だけ同じようにビジネスを始めてみようかなといろいろと調べたことがあった。意外にもニューヨークではドメスティックキッチンライセンスを取るのはオレゴンより簡単だった。と言うのも、オレゴンでは同じ建物のなかにペットがいてはいけないが、ニューヨークではキッチンのある部屋にペットがいてはいけないだけで、違う部屋にはペットがいても問題なかったからだ。モルモットを飼っている私は、オレゴンでライセンスを取るために別棟のガレージに大きな小屋を用意したほどである。しかしそれよりも何がニューヨークで難しいか。。。それはベンダーが払うブースの費用。そして何よりも競争率である。ニューヨークの人口はオレゴンとは比較にならない。その分、同じように自分のビジネスで一旗あげようと考えている人は山ほどいる。1つ目にクリアしないといけないのは、出店資格を得られるか。何百倍と言う倍率の中、自分のお店をアピールして出店機会を得なくてはいけない。そして苦労して得たチャンスも、出店ブース費用がオレゴンの何倍もかかる。そして車はどうする?スタッフは?などなど一人で、ちょっと始めてみようと言う手軽なものではなかったのだ。その点、オレゴンには、至る所にファーマーズマーケットが存在している。ポートランドがダメならばビーバートン、ビーバートンがダメならばヒルズボロと、いろんなところでアプライできるし、数打ち当たればどこかで拾われるものである。私は運よく家から15分くらいのところと30分くらいのところでスポットを得たので、土日両日出店することができた。またファーマーズマーケットでは自分が宣伝しなくとも、何百人、時には1000人近くの人が来る。開店から閉店まで、客足が耐えないこともあるほどだ。その客足のために、店舗をすでに持つ人も、ファーマーズマーケットでは宣伝のためにブースを出すほどである。誰も私のことを知らない状態からお店を始めた私にはとてもありがたい環境であった。そしてブース費用も1日50ドルほどで売り上げのほとんどを持っていかれることもない。家のキッチンで作り始めてからは、キッチン費用もなくなったので、出費も大分減り、なんとか少し利益を出せるようになったのだが、まさかコロナが猛威を奮うとは。。。

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しかし始めるのも手軽であれば、中断するのも手軽である。店舗を持っていないので、ビジネスとして払わなければいけない家賃もない。確かにライセンスの費用や保険などは出費になるが、店舗や従業員がいる人や、家畜や育ってしまった野菜を抱えているわけでもない。収入は無くなれど、出費も抑えられる。仕事がある夫に感謝しつつ、人生初の専業主婦を満喫中。しかし2020年を迎え、雨季の冬が終わり、さあ、ファーマーズマーケットのシーズン到来と意気込んでいたところにきた、暇な毎日、落ち込むこともあるけれど、今できることをするしかない。これから世の中はどうなっていくのか、私は何か軌道修正をしなければいけないのだろうか。新しい形態で何か始めるべきだろうか。いまだに答えは出ていないが、ここに過去の経験を振り返りながら呟くことで気持ちを整理していこうと思う。

また、オレゴンコーストにも多くのファーマーズマーケットが点在する。コロナの状況にもよるが、来年あたりまたどこかで出店できたらいいな。。。と今は情報収集をがんばろう。

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