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【9冊目】13歳からの地政学

【タイトル】

13歳からの地政学―カイゾクとの地球儀航海

【著者】

田中 考幸

【読む目的】

・今話題の書籍に触れたい
・地政学を理解したい
・国際情勢を理解したい

【感想】

世界中の国々の情勢や政治経済がどういう状況で、それはなぜなのか、地理的な面を中心に解説する本でした。
ストーリー仕立ての内容となっており、学生と老人との問答を通して、わかりやすく理解することができました。
例えば海を制する者は世界を制すという趣旨の話が冒頭にありました。
貿易の9割以上は船であり、情報も海底ケーブルを通ることから、海に面し、世界最強の海軍力を持つアメリカは安泰というわけです。

最も印象に残ったのは、核ミサイルの話です。
核ミサイルを有効利用するのに必要なのが、①原子力潜水艦②海底からの発射能力③深くて安全な海――であり、その条件を満たすのはアメリカとロシアであると。
そして、中国が南シナ海にこだわるのは上記の③を手に入れるためではないかとの話に、納得しました。
…ちなみにロシアが持つ深い海が、北海道のすぐ近くのオホーツク海ということです。
日本のすぐ近くで、敵対する国の核ミサイルがいつでも発射できる状態というのは恐ろしいですね。

ユーゴスラビアの崩壊、そして今起こっているアフリカの貧困の原因は、政治体制にあるという話もありました。
共通するのは、民主主義ではない独裁政権であることと、他民族国家であることです。
民主主義ではない政治体制は、暴力的になりやすく、また身内の民族を優遇しやすいということでした。
この辺は難しい問題ですよね。民主的に選挙をしたところで、多数派民族の政権ができて少数派の民族を迫害するかもしれませんし。
ユーゴスラビアだってチトーが健在の時はうまく回っていたようですし。
本にも書かれていましたが、民族同士の交流、相互理解が重要だという筆者の考えに深く共感します。

終盤に、大国と小国、加害者の国と被害者の国があるという話がありました。
歴史問題を考えるにあたり、日本は大国であり、加害者側であるという認識が必要という趣旨と理解しました。
このあたりの話は1つの視点として参考にしたいと思います。

もし続編があるのであれば、もっと「地政学」について深く知りたいと思いました。
例えばロシアが他国に侵攻する理由を、歴史的経緯や政治体制を絡めて、守るための戦争という意識と説明していました。
ウクライナ侵攻という暴挙をロシアがなぜ実行してしまったのか、そのヒントを知るためにも、地政学的にもう少し深いところまで聞きたかったです。
例えば、地政学的にはロシア(や中国)がランドパワー大国だからこそ他国への膨張を志向するという説明も考えられそうで、そういった部分を解説する本があれば読んでみたいです。

国際情勢を、地理的な視点を中心に広く理解できる興味深い本でした。

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