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ドラマ『琅琊榜』で習いたかった中国語~第二集①

学生時代に中国語を専攻していた頃に、中国ドラマ『琅琊榜』を見て学びたかったなあと思う中国語のフレーズについてのまとめ。今回は第二集(2話)より。サブタイトルは「太皇太后」。

「太皇太后」という位は、現皇帝の祖母にあたる。このドラマに出てくる皇帝は、すでにそれなりの年齢なので、この回のある意味キーパーソンである太皇太后は、かなりの年齢である。

中国語のフレーズの解説前に、その場面に至るまでのあらすじを説明したい。

第一集最後の方に登場した郡主・霓凰は、南の国境を守る精鋭10万を率いる爵位のある軍人。成人した弟に最近その役目を継がせたが、彼女自身に能力や人望もあるので、軍内での影響力がある。そのため、政治的・軍事的理由から、まだ独身の霓凰を娶りたいという申し出が周辺国からあった。

皇帝にとっても、どこの誰に彼女を嫁がせるかは重要なことになる。また、皇帝は彼女が精鋭10万に忠誠を誓われていることにも「その状況が続けば国になる」と懸念していた。彼女が力を持ち続けないようにするためにも嫁がせたいのだ。皇帝からこの話を聞かされていた宦官の「高湛」の表情が実はこの物語の伏線。

第二集はそんな状況の霓凰の「婿候補」たちが、国内外から梁の都に集まって武芸を競って集まり、婿を決めるために競い合いの大会が開催されるところである。


一定是他

国外からも霓凰の「婿候補」たちや関係者が来るため、都や皇宮の警護について責任者たちが協議する必要があった。都の警備をする「巡防営」は、梅長蘇が逗留中の謝家の主・「謝玉」が管理しており、皇宮を警護する禁軍を率いるのは大統領「蒙摯」であった。

この二人がその相談のために謝家の屋敷に来た時に、屋敷内の屋根の上を飛び回っていた飛流と蒙摯が手合わせする事態になり、これが結果的に「蘇哲が梅長蘇である」と後継者争い中の皇太子と誉王に知られることになった。

謝玉が皇太子に報告した時の言葉から。

一定是他
ー必ずや奴です

琅琊榜~麒麟の才子、風雲起こす~第2話
謝玉

「一定」は、「疑いなく」「たしかに」「必ず」という強い断定の副詞。「是」は「~だ」「~である」。英語のbe動詞の文「This is a pen.」くらい最初に習う動詞である。「他」は男性の三人称「彼」。

中国語は日本語のように主語に当たる言葉がわかり切っている時は略される。ここでは謝玉が、「探していた麒麟の才子・梅長蘇」を主語としており、直訳すると「(梅長蘇は)たしかに(謝玉の屋敷に逗留している)彼だ」。字幕は「必ずや」という強い断定と「奴」という標的に対する敬意のない表現になっている。

謝玉は梅長蘇が自分たち皇太子側につかないのであれば、殺そうと考えているので、「奴」という表現が謝玉らしい。「一定」はかなり強い確信がある時の表現だと学生時代にも習った。たしかにこのシーンでの謝玉は、梅長蘇に関する情報と屋敷にいる蘇哲のことが重なり、確信をもって報告している。

蘇哲=梅長蘇の情報を皇太子と誉王の両陣営が知った場面の後、ドラマのもう一人の主役「靖王」が登場。皇太子や誉王たちの弟にあたる皇子だが、父親の皇帝からも疎んじられている。後宮にいる母親と会うにも制限があるようだ。

謝玉の屋敷には、誉王の養母である皇后が自ら来訪し、梅長蘇に会いに来た。しかし蕭景睿のおかげで梅長蘇は会わずに終わる。

第二集のここまでのシーンについては、これでも細かく全てをあえて書かなかったが、各キャラクターの立場や人間関係、性格など実は今後の展開に重要な情報がたくさんある。中国語を学ぶのも大切だが、物語を楽しむことも大切なので、そのためにしっかり把握したいところだ。

我看,你也坐不住了吧

霓凰の婿取り武術選抜大会の当日。並んで観戦していた皇太子と誉王だが、遅れて会場にやってきた梅長蘇たちが気になる。先に立ち上がった皇太子に誉王が、「退屈ゆえ、散歩にでも?」と牽制。それに対する皇太子の返答。

我看,你也坐不住了吧
ーお前も座っておれぬのだろう

琅琊榜~麒麟の才子、風雲起こす~第2話
皇太子蕭景宣

「我看」は「私の見るところでは」「私は~と思う」、この部分は明確に字幕にはない。「也」は「~も」で「你也」で「あなたも」になる。皇太子からみて誉王は弟なので、「おまえ」の方がそれらしい。

「坐」は「座る」、「~不住」は「~できない」。最初の動詞の後に「~不住」がつくと、その同氏の動作の結果や状態が、固定や安定しなかったニュアンスを帯びる。この「住」は、文法的に結果補語と呼び、「不」を挿入して否定している。動詞「坐」の後ろに「~不住」がつくことで、じっと座っていることができない「=坐不住」になる。

「了」は、状態の変化を表し、梅長蘇が会場に来ているため誉王が自分の陣営に取り込むために会いに行きたいから、「座っていられなくなった」という状態の変化を意味する。そして最後に推量の「吧」。つまり、「坐不住了吧」は直訳すると「座っていられなくなったのだろう」。まとめると以下のようになる。

坐・・・座る

坐不住・・・座っていられない

坐不住了・・・座っていられなくなった

坐不住了吧・・・座っていられなくなったのだろう

中国語の難しくも非常に面白いところである。たった「了」や「吧」の一文字で、このようにニュアンスが変わり表現が豊かになる。そして字幕では日本語として自然かつ端的な表現に置き換わっている。結局皇太子と誉王は一緒に梅長蘇に会って話、彼の目の前であさましい口論をする。ここで太皇太后が蕭景睿たちを呼び出した。

第二集で重要な役割を果たす太皇太后のセリフの中国を次回見ていきたい。

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