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質問に答えるというセンス

私の仕事はほぼ「同僚の質問に答えること」に集約される。私に投げかけられる質問とは、同僚たちがしているお客さま対応やそれに付随する作業、新人研修をする講師と現場での受け入れに向けての調整などあるが、いずれも答えを導き出して伝えることにある。

この立場になった当初は、誰に対しても簡潔かつ分かりやすく回答することを心がけていたが、次第に回答する相手によって「分かりやすい」の基準にかなり隔たりがあることに気づいた。同じ内容でも言い方を変えないと伝わらない、しかも丁寧にそれを回答しすぎてもいけないことも悟った。

基本的な回答スタンス

そもそもの基本的な回答の仕方だが、結論を先に言うことが大切だ。結論を先に言わないと質問した人が「聞きたい答えじゃない……」となってしまう。

これはどんな手段で投げかけられた質問であっても同じである。対面、電話、メール、チャット、どの手段を用いて質問されても結論から言う。

ただ、付け加えるべき情報があるのに早合点されて先に動き出されてもいけない。口頭ならば、結論の後すぐに付随する内容を言えるが、チャットで回答する時は注意が必要だ。

チャットでの質問はリアルタイムでのテキスト回答なので、付随情報まで入れると質問者が回答を得るために想定していた以上の時間がかかる場合がある。回答に時間がかかりそうならば、結論の後に続きがあるニュアンスを残す。

たとえば「これを確認して○○ならばA、△△ならばBをしましょう。ただし、」までで一度返信し「〜ということなら、追加で□□と◎◎を確認し、▼▼を伝える必要があります。」という感じだ。

もらっている情報のみで結論を出せない場合は、「回答にあたり先に確認ですが〜」などと伝えて必要な情報を引き出す。信頼関係がある程度できていればこの前置きはいらないが、そうでなかったり、あるいはこちらの状況(今ある情報では結論が出ない)に対する想像が及ばない質問者には有効である。

また、回答する自分が正解を即答できない場合も当然ある。そのような事態に備えて、日頃から情報収集と自分が持ってない正解を持ち得る人とのコミュニケーションもあらかじめ必要である。即答できなくても最短距離で回答者が正解にたどりつくためだ。

回答する相手のプロフィールは踏まえた方がいい

結論を先に言う、が基本的な回答スタンスと説明してきたが、同じ内容でも相手によって言い方を変えないといけない。

回答を渡す相手の年齢、性別、性格、経歴を知っていればそこも多少考慮する。若く社会人経験が少ない相手であれば、かみ砕いた内容で回答したり、年配の方でも最近異動してきて勝手がわかっていない場合は、回答だけ聞いても腑に落ちないことがあるので、その人の目の前にある問題の背景説明からする、などである。

老若男女問わず、謙虚に確認する人もいれば、自分が質問しないといけない状況が嫌で横柄な質問の仕方をする人もいる。しかしどんな相手であれ、その人の仕事をしてもらわねばならず、私の回答をもって自身の仕事に速やかに着手してもらう必要があるからだ。

さらに質問されて回答するにあたり、考慮すべき大切なことは、回答する相手の能力的傾向である。大きく以下の4タイプに分けられると私は考えている。この4タイプにそれぞれの質問者のプロフィールを踏まえる。そうすることで組織全体の力も底上げできると私は考えている。

自分で考えられる人には

質問の答えをもらって「そうすればいいのか!じゃあ後はあれとこれすればいいんですか?」となるタイプだ。一を聞いてそれ以上を知るので、一番回答するのは易しい。

それでもポイントは、以下2つがある。
①必要最低限の情報量で回答
②回答する範囲とそのタイミング

既にいろんなことを理解していて、自力で出来る仕事が多いため、回答内容が多いとおせっかいな印象になる。不必要に親切な回答をするとせっかく回答したのに、相手のパフォーマンスを下げることにもなりかねない。

そうかと言って、必要としている回答内容がニーズを満たしていないと、追加で質問をさせてしまい、やはりこのタイプのパフォーマンスを下げてしまう。回答内容の情報量の過不足に最も気を遣うべきと思う。

どの程度の説明をするか判断がつかない時は「この件では●●も▽▽するので、不明点があったらまた聞いてください。」などとフォローを入れておくと、今後のためにお互い失敗が減らせるし、信頼関係の構築にもつながる。

考える癖をつけた方がいい人には

多少新しい情報があり、それを理解はするが、「え?それならどうしたらいいんだ?」と思考停止しがちなタイプだ。考え方に重点を置いて教えるとパターンを覚えて、正解にたどりつくために考える範囲を少しずつ広げていくこともできる。

理解力がないわけでは無いが、その次に自分で答えにたどり着く力が足りてない。このような人には、考えるためのヒントを出す。

例えば「これを確認したら▲▲だったんですよね、ということはああなるから・・」など最後まではっきり言わずにいると自分で考え出してくれる。ここまでやって答えにすぐたどり着けない場合は、しっかり回答を言って「ああ!そうか!!」と思ってもらうと印象に残り、同じ質問をしなくなる傾向がある。つまり、質問者自身が成長するのである。

ただし、これは質問者が落ち着いていて、緊急の状況にない時だけである。そうでなければ質問者のストレスになってしまう。また、上司など目上の方には絶対してはいけない。もちろん失礼になるからだ。

考える習慣がない人には

考える癖をつけた方がいい人と比較すると、ヒントを出しても「それで?」となり、考える習慣そのものがないタイプである。この人たちに考えさせようと色々試みたが、習慣がない人はどうしようもないと数年かけて私は結論付けた。こちらの労力に対して成果が上がらないのだ。

そのためこのタイプには最短距離の回答がおすすめである。質問者のパフォーマンスだとか、今後のために考え方を覚えてもらおうなどと思わず、結論含む必要情報のみ伝える。

考える習慣がなくても少しでも覚えようとをしてくれるなら、追加情報も先回りして出した方が良い。ただし、回答する情報量は本人のキャパ以上にならないよう気を付ける。すべてを一度に伝えず、「とりあえずここまで終わったら、もう一度聞いてください。さらに必要な仕事がありますけど、今説明すると長くなりすぎます。」と分割して回答すると良い。

複雑な手続きや対応ができない人には

考えること、覚えることが総じて得意ではないタイプだ。こちらが結論から回答する以前に質問自体が上手でなく、事態の把握から必要なことが多い。回答前に質問をこちらからしなければならないので、「状況が判然としないのですが~」と前置きしたり、「ちょっと私の理解が及ばないのですが~」と表現して状況の確認をする。質問自体が的外れなこともあり、そこを考慮しないと後でとんでもないことになるからだ。

状況を把握したら、シンプルな回答で終わるなら良いが、そうでなければ回答には細心の注意と工夫が必要である。このタイプに状況を理解してもらうことに時間を割くと仕事が進まないので、今何をすべきか理解してもらうことに重点を置く。

「なぜそうすべきか」を知りたいという向学心があるなら、細かい状況や仕事を理解するプロセスは「お客さまをお待たせしてはいけませんよ。」などの合理的理由をもって後回しにするよう勧める。

そして後でそれに付き合うならば、じっくり腰を据えて説明する覚悟と忍耐が必要である。「この前も同じ話をしたけどな」なんて思うと辛くなるので、そういう人なのだと認識しておいた方が良い。

回答に失敗しても

どんなに質問に対する回答に気を遣っても、うまく伝わらず、思ったように事が運ばない時もある。回答を自分が間違ってしまうこともある。

そんな時は、きちんと質問者にフォローをして、謝罪すべきことはしっかり謝罪する。当たり前だが、このコミュニケーションを怠ると質問者との人間関係が作れない。意外と謝れない人は少なくないので、しっかりやるべきだ。失敗すること以上に、謝るべき時に謝れない大人はみっともない。

まとめ

質問に対して回答すること自体が、対人コミュニケーションである。コミュニケーションである以上意思疎通できなければ意味がない。回答する側が質問者に対する相応の気遣いがあれば、スムーズに物事が解決し、めぐり巡って自分の仕事に関わる人すべてや組織ごと円滑になる。職場がそうなれば、回答者にとっても仕事がしやすい。当たり前のことを見直すことは大切だと私は思っている。

#仕事の心がけ

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