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ドラマ『琅琊榜』で習いたかった中国語~第三集②

第三集の続き。梅長蘇、霓凰、靖王のシーンでかなり字数をつかってしまった。その後梅長蘇が皇宮から帰る際に、第二集で謝玉の屋敷で顔を合わせた蒙大統領と会う。

你终于回来了

蒙大統領が蘇哲こと梅長蘇に感慨深げに言う。

你终于回来了
ーやっと戻って来たか

琅琊榜~麒麟の才子、風雲起こす~第3話
蒙摯

「终于」は「は「ついに」「とうとう」という副詞で、「回来」が「帰って来る、戻って来る」である。文末の「了」は、動作の完成・実現の「了」にも読み取れるし、状態の変化を確認する「了」にも読み取れる。どっちか微妙だ。

後の会話に出てくるが、蒙大統領は梅長蘇が「戻って来る」ことを1年前から知っていた。梅長蘇も「我终于回来了」と噛み締めるように2回繰り返した。字幕では全く同じ言葉を繰り返さず、「私は戻った、ついに戻って来たのだ」と後に分かる梅長蘇の強い思いを思わせるセリフになっている。

蒙大統領は、梅長蘇の顔を見て、病気で容貌が変わったと聞いていたが、まるで別人だと言う。そして梅長蘇は「12年前の謀反人」らしい。視聴者の知らない梅長蘇の秘密が、蒙大統領の言葉から垣間見える。その日の夜会う約束をして二人は別れた。

让蒙大哥进来 他是我请的客人

夜どこで会うのかな?と思っていたら、謝玉の屋敷の梅長蘇の部屋に普通に蒙大統領はやって来た。蒙大統領は手練れなので、屋敷の侍衛は気づかなかったが、梅長蘇の護衛の少年・飛流は気づいた。

让蒙大哥进来 他是我请的客人
ー入ってもらえ 客人だ

琅琊榜~麒麟の才子、風雲起こす~第3話
梅長蘇

「让」+「蒙大哥(人名)」+「動詞」で、「人に~をさせる」の意味、「大哥」は年上の親しい相手への呼びかけ、「进」は「入る、「来」は方向補語で、直前の動詞の方向を示す。そのため、「进来」は「入って来る」になる。「让蒙大哥进来」で、「蒙兄さんに入って来てもらえ」になる。

後半の文章で、「 他是」は「彼は~である」、「我请的客人」で「私が招いた客人」。「我请」が「私が招く」の意味で、「的」をつけて後ろの「客人」を修飾する。

梅長蘇のもとを訪れた蒙大統領は、梅長蘇をある別の名前で呼ぶ。太皇太后が口にした「小殊」と。蒙大統領は一年だけ「赤焔軍」に所属したいたらしく、その関係者「林主帥」と梅長蘇の忠義を信じていると言う。梅嶺で何が起きたか梅長蘇に尋ねると、梅長蘇が厳しい表情で回想を始め、このドラマの第一話冒頭のシーンに戻る。最初に紹介したフレーズ「活下去」の前には「为了赤焰军(赤焔軍のために)」が入っていた。

ここで急にこれまでの話の中で、視聴者が「?」となっていたことに対し、すさまじい情報量が出てくる。この話の方向性が見えてくるところだ。正直中国語どころじゃない。でも一フレーズ拾っておくか。

除了我 你认识的只有卫铮一个了

「梅嶺」という戦場での生き残り人数を聞かれた梅長蘇の回答。

除了我 你认识的只有卫铮一个了
ー私の他は衛崢だけだ

琅琊榜~麒麟の才子、風雲起こす~第3話
梅長蘇

「除了我」が「私を除いて」、「你认识」で「あなたが知っている」、「认识」は人について見知っている時の表現である。「的」は「人」の代わりで「あなたが知っているの(人)は」の感じである。「只有」は「ただ~だけ」、「卫铮一个」で「衛崢(人名)一人」、「了」は状況の変化を表す。直訳すると「私を除いてあなたが見知っているのは衛崢ただ一人だけだ」となり、7万の軍勢だった赤焔軍がほぼ全滅したことを語っている。

第二集で太皇太后が梅長蘇を「小殊」と呼んだことを思い出しつつ今後の展開を見てほしい。

我自然没问题 只是豫津却不敢说

場面が変わり、その後霓凰の婿取り武術選抜大会が、梅長蘇が見学した日以降も続いている。霓凰が誰と結婚するかは政治的軍事的に重要なので、後宮でもその工作がなされている。

梁の高貴な家柄の蕭景睿、言豫津も出場していて強いようだ。翌日が武術選抜の最終日という日、上位10名が受ける文試について梅長蘇は蕭景睿に問題なく突破できそうか確認した。

我自然没问题 只是豫津却不敢说
ー私は大丈夫 豫津は何とも言えませんね

琅琊榜~麒麟の才子、風雲起こす~第3話
蕭景睿

「自然」は「当然」、「没问题」は「問題ない」、「 只是」は軽い逆説の「ただ」「しかし」を表す接続詞である。「却」は話し手の予想や道理に反して「ところが」「~のに」という副詞で、「不敢」は「あえて~する」の「敢」を「不」で否定して、「~しにくい」「~する勇気がない」のニュアンス、「说」が「言う」。

「我自然没问题」で、「私は当然問題ない」と言い、「只是豫津却不敢说」で「ただでも豫津は(問題ないとは)言いにくい」。つまり景睿は試験について大丈夫だが、豫津の方は大丈夫じゃないことを婉曲的に言っているのだ。この回答後、梅長蘇と蕭景睿は表情だけで「言うねえ」と言っているようだ。

你说什么 你再说一遍

武術選抜終盤で、百里奇という北燕という別の国の挑戦者が、隠していた本来の実力を発揮した。蕭景睿と言豫津が二人がかりでも敵わなさそうというほど強い。見た目が粗野な男なので、姉思いの霓凰の弟の穆青も慌てる。この百里奇について報告を受けた皇帝の言葉。

你说什么 你再说一遍
ーもう一度言ってみろ

琅琊榜~麒麟の才子、風雲起こす~第3話
皇帝蕭選

「什么」は「何」という疑問詞で、「你说什么」で、「お前は何と言った」になる。相手の言葉に対し「何だと?」の感じだ。「再」は「もう一度」、「一遍」の「遍」は量詞で、動作の初めから終わりまでの「回」や「へん」を表す。「再说一遍」で「もう一ぺん言え」になる。字幕では、シンプルに後半の文章だけ表示されている。ここでは聞き捨てならない情報に対する怒りがこもっている。

「再说一遍」の頭にお願いする時の「请」を付けて、「请再说一遍」で「もう1回言ってください」になる。相手の中国語を聞き取れなかった時の定番フレーズである。

場面代わって梅長蘇、蕭景睿、言豫津が北燕の百里奇の対策についての話の流れから、蕭景睿の出自の話になった。サブタイトルの「両家の息子」のところだ。蕭景睿の家に梅長蘇は療養に来たが、屋敷は「謝家」。この理由がここで分かる。蕭景睿は、やむを得ない事情で謝家の息子なのか卓家の息子なのか、生まれて間もない時にわからなくなったのだ。

謝家には、皇帝の妹が嫁いでおり、皇室にもつながる血筋の可能性もあるため、皇帝は皇室の姓「蕭」を与え、謝家と卓家の息子になったのだった。卓家は、梅長蘇率いる侠客組織「江左盟」のように「天泉山荘」という侠客の一家だ。蕭景睿のこの生まれは、非常に重要な情報である。

🖌今回の気になる単語帳

奴才该死 Núcái gāisǐ
字幕は「お許しを」。庭生を虐待していた宦官が、靖王にへりくだって詫びる時に言った言葉。「奴才」は宦官の第一人称、「该」は「~すべき」「该死」は「死ぬべきである」。宦官が位の高い人物に詫びる時の常套句である。

满口胡言 mǎnkǒu húyán
字幕は「ふざけてる」。ばかげているという意味。庭生を折檻していた上、止めに入った靖王に対し牽制するような事を言った不届きな宦官に霓凰が怒って言った言葉。「满口」が「純粋で混じりけがない」、「胡言」が「でたらめ(を言う)」「たわごと(を言う)」。最近世の中「满口胡言」なことが多くないですかね。

江湖白衣 jiāng hú bái yī
越貴妃と皇帝の会話に登場。武術選抜の文試の採点を官職のない梅長蘇にさせる提案が霓凰からあったと皇帝が言った。朝廷や公家を離れた官職などのない侠客のことも表すが、中国における独特の概念なので、日本語で完全に当てはまる一般的な表現が見当たらない。


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