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ドラマ『琅琊榜』で習いたかった中国語~第十六集①

サブタイトルは「苦悩」。辛そうな展開・・・冒頭のシーンから蕭景睿のために梅長蘇は胸を痛めている。たしかに景睿のことは残念で片付けられない(今後の展開)。


新たな江左盟のメンバー・甄平が登場。天泉山荘側の猛者を倒して回り、蒙大統領の禁軍の力を弱めようとしていた謝玉の計画は頓挫した。

走小路不是挺好的

夏冬が毎年恒例らしい夫の墓参りのため山に出かけた。夏冬の夫は「聶鋒」で、「疾風将軍」の異名を持つ赤焔軍の将軍だった。つまり林殊(梅長蘇)とつながりがあり、第十二集で梅長蘇が霓凰に特に正体を知られてはならない人物として名前を挙げていた。

夏冬が墓前で夫に向かって話をしているところを近くの草むらから彼女を見ているようなアングルのカメラワーク。その気配に夏冬が警戒したが見つからず、代わりに梅長蘇とそれを支える黎綱が山を登って来た。山道を登る梅長蘇を心配する黎綱に梅長蘇が言った言葉から見ていこう。

走小路不是挺好的
ー獣道も楽しいものだ

琅琊榜~麒麟の才子、風雲起こす~第16話
梅長蘇

「走」はここでは「歩く」や「行く」の意味、「小路」は「山あいの小道」、その後ろは「是的(shide)構文」の否定形と思われる。これはすでに行われた動作があり、その時間や場所や手段(「何者かの関与」も入る)を強調する構文だが、話し手の意見や態度を断定的に表すために使われる場合もあるようだ。強調しているのは「挺好」で「とても良い」で、否定の要素が加わるので全体を直訳調にすると「山あいの小道を行くのはとても良くないか」だろう。字幕は限られた文字数で分かりやすく表現されている。

这么巧

登って来た梅長蘇に夏冬が声をかけてあいさつする。夏冬に気付いた梅長蘇が言った。

这么巧
ーこれは奇遇だ

琅琊榜~麒麟の才子、風雲起こす~第16話
梅長蘇

「这么」は「このように」「こんなに」、「巧」はここでは形容詞的に「ちょうどうまい具合に」「折よく」という意味で使われている。直訳すると日本語として不自然だが、このように折よく「会えるなんて」という気持ちなので、非常に自然な字幕である。

苏先生新病方起会不会太劳累了

あいさつを返してきた梅長蘇に夏冬が言った。

苏先生新病方起会不会太劳累了
ー病み上がりなのに大丈夫なの?

琅琊榜~麒麟の才子、風雲起こす~第16話
夏冬

「苏先生」は梅長蘇のことで、「蘇哲」の名で通っているため「蘇先生」ということだ。次の部分は字幕と音からすると「新病方起」だろうか。小説版の琅琊榜にも同じ場面に同じ表現が見られた(まだ小説は全部読めてません)。

「新」は「新しい」という意味だが、ここでは「最近」の方が近い気がする。「病」は名詞的に「病気」であったり、動詞的に「病気になる」であったりする。「方」は書き言葉で「いましがた」「ちょうどいま」、時代劇なのもあってこれで古めかしい表現になるのだろうか。「起」は「起きる」で、「新病方起」は「最近病気をしてちょうど起きた」=「治ったばかり」と思われる。難しい。いつかここは専門家に確認したい。

「会不会」は可能性を表す助動詞「会」の反復疑問文で、自分の推測を確認するニュアンスになり、「太~了」で「あまりにも~すぎる」なので、「あまりに~すぎている可能性はないか?」と言っている。~の部分は「劳累」で「働きすぎて疲労する」の意味なので、ここでは病み上がりの登山を指す。

全体で「蘇先生は最近病気をして治ったばかりなのに、がんばりすぎなのではないですか」というところか。たしかに病弱な人が病み上がりに登山は危険である。

その後、梅長蘇は自然な流れで聶鋒将軍のお墓参りをさせてもらう(まだ夏冬に林殊と知られてはいけないため)。同じ戦場にいた者として聶将軍に哀悼の意を表す梅長蘇の様子に、それを知らないはずの夏冬が思わず涙を流す。戦場での在りし日を思い出す梅長蘇。視聴二周目だとこちらも泣けてくる。そんな梅長蘇、夏冬、黎剛を再度草むらからのアングルのカメラワーク。

三人が下山中に怪しい人影があり、夏冬が追いかけると靖王の配下だる戚猛(取り上げてない場面だが、第九集で靖王府を訪れた梅長蘇に対し不躾なふるまいをして靖王に降格された人物)に出くわす。かつて彼が言っていた「珍獣」を捕獲しようとしていたが、まだ捕まえていないらしい。慶国公の事件を最初に扱った京兆尹府が管轄だが手に負えず靖王に要請が来たと言う。

この靖王配下の人物と梅長蘇、夏冬の一見何気ないやり取りだが、最後はちょっとしたコミュニケーションの不具合に陥る。それぞれの立場や状況を考えるとしょうないが、このような場面を後々無意味に終わらず丁寧に描くところが好きでつらつらと書いてしまった。

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