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アジアを代表する米の酒「紹興酒」と「日本酒」の共通点と違いを整理してみた。

紹興酒と日本酒。その外観から共通点は感じられないかもしれませんが、実は大まかな作り方は一緒でそれぞれアジアを代表する米の酒と言えます。

そう聞くと、きっとこんな疑問が湧くのではないでしょうか。


なんであんなに味や香りが違うの?


僕も何も知らないときは、素直に思いました。この疑問に答えるべく、紹興酒と日本酒の違いについて改めて情報を整理して僕のblog「八-Hachi-」にアップしました。

やや専門的で長い内容なので、ここnoteではちょっと違った観点からの解説と、八-Hachi-に載せていない日本酒と紹興酒の共通点について書こうと思います。

ちょっと詳しめに書いた八-Hachi-は中華料理店の酒担当の方などご覧いただけたら仕事に役立てていただけるんじゃないかなと思います。ぜひ!

日本酒と紹興酒の共通点

この2種の共通点をシンプルに明記してみます。

米を蒸して麹・酵母で糖化発酵させる醸造酒

それぞれの酒の原料は米です。米を酒にするには糖分が足りないため、でんぷんを糖化しなければなりません。糖化するためには麹、そこからアルコールを生成するためには酵母が必要です。

ちょっと話はそれますが・・・

ビールは麦、ワインはぶどうを使った醸造酒で、誰もが知る世界共通のジャンルですよね。思えば米の酒には世界共通のジャンル名称がありません。日本は清酒、中国は黄酒・糯米酒、韓国はマッコリなど、さまざまです。このあたりも深堀してみたいですね。また別の機会に。

日本酒と紹興酒はなぜ色も味も違うのか?

同じように作っているのに色や味が違う理由は、ひと言では語ることができません。いくつもの要因が重なり合って発生しています。いくつかに分けて説明してみます。


その①米について

例えば、それぞれ原料はお米の酒と言いましたが、日本酒はうるち米、紹興酒は糯米を使用します。粘着度が全然違いますね。そして、原料を糖化発酵させるために使用している麹も、種類が異なります。

/////各種の原料と糖化発酵材/////
日本酒:米・米麹
紹興酒:糯米・麦曲(麹)


その②麹について

紹興酒をはじめとした中国の醸造酒「黄酒」で使われている「曲(きょく)」は日本でいう麹にあたります。しかし日本の麹とは似て非なるものです。例えば日本の麦麹と中国の麦曲は全く別物です。

具体的には、菌が違います。日本酒に用いる麹は「麹菌(黄麹)」が主流で、紹興酒は「クモノスカビ・毛カビ」です。同じ人間だとしても日本人とドイツ人って違いますよね。そんな感じです(この例えは合ってるかな)


その③色について

日本酒と紹興酒の違いでもっとわかりやすい面で見てみると、色は明らかに違う。日本酒は透明ですが、紹興酒が褐色です。これはなぜでしょうか。

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その要因の一つにアミノ酸の量の多さが挙げられます。どちらの酒もアミノ酸が豊富な酒ではありますが、紹興酒は日本酒の2〜3倍と言われています。紹興酒はあまり精米をしないため、米のタンパク質が豊富なまま酒造りが行われます。タンパク質はアミノ酸の素でもありますね。

アミノ酸が豊富だと何が起こるかというと、熟成していく中でアミノ酸と糖分が化学反応を起こしてメラノイジン(褐色物質)が生まれます。また甕で長期熟成させるため、その鉄分も酒に溶け込んでいきます。

さらに紹興酒はウイスキーのようにカラメルで着色させるため、その影響も大きいです。こうしてあの褐色が生まれます。


その④香りについて

紹興酒は独特な酸っぱい香りがありますがこれにも理由があります。

紹興酒は蒸す前の糯米を水に浸す(浸漬)時間がとても長いんです。結果的に乳酸発酵するのですがこの水を「漿水(しょうすい)」といって、仕込みの水に用います。こうして乳酸爆発の酒ができあがり!

ちなみに日本酒の酸はコハク酸を中心としてリンゴ酸、乳酸、クエン酸などで構成されているようで(見た文献が古いので最近は変わっていると思いますが)両者の酸は全く別物であることがわかります。

こうして見ると、酒の面白さが深まっていくのではないでしょうか。ブログでは日本酒と紹興酒の違いを上記とは少し違う観点で6つに分けてお伝えしています。さらにご興味のある方はご覧になってみてください。

◉原料
◉精米歩合
◉掛米と麹米の精米
◉菌の種類
◉発酵用のタンク
◉酸の構成成分


その他にもある!日本酒と紹興酒の共通点

紹興酒を紐解いていくと、「これ日本酒と一緒だな!」ということが結構出てきます。

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例えば、日本酒の貴醸酒。仕込みの水に日本酒を使用するという贅沢な酒ですが、全く同じ酒が紹興酒にも存在します。それを「善醸酒(ぜんじょうしゅ)」と言います。名前も1文字違いで似ていますね。

そもそも紹興酒には4つのタイプが存在しますが、日本に流通しているのはほぼ1種で「加飯酒(かはんしゅ)」が主流です。それとは別タイプで仕込みの水に若い年数の紹興酒を使用する酒、それが善醸酒です。みなさんがご存知の紹興酒よりも濃密ながら爽快な甘味があって非常に飲みやすいです。

また、漿水のお話をしましたが、日本酒にもこれと同じ製法で作る酒があります。「菩提酛(ぼだいもと)」と呼ばれている製法がそれです。日本酒好きな方ならよくご存知ではないでしょうか。伝統的な紹興酒は、基本的に菩提酛と言えます。

また、かつて日本酒はサーマルタンクや木桶ではなく、甕で醸造していたという話を聞いたことがあります。伝統製法を守る紹興酒は今も甕で醸造します。味を調整するためにタンクや甕ごとでブレンドをするという点も一緒ですね。

こうしてみると、日本酒と紹興酒には大まかな部分で共通点があって、でも細かな部分で違いがあったりして、それぞれしっかりと個性が確立されている。確かに同じジャンルで括るのは難しいのかなぁと思うけど、なんだか"従兄弟"のような関係性だなと思うのは僕だけでしょうか。

まだ他にもありそうですが、情報が集まったら追記するか改めてまとめてみようと思います。


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