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中国初のオーガニック紹興産黄酒お披露目と、ペアリングの会。

干杯!

突然ですが、2018年、僕は浙江省紹興市の安昌で造られているオーガニックの黄酒「夢羲-MOHI-」の酒蔵さんを訪問しました。

その夢羲CEOであるインガさんから今年5月中旬頃に連絡が入りました。

「今度、日本に行くから手伝ってほしい。」

なんと、日本での展開を考えていて、商品発表会を開催したいということでした。

本の執筆がひと段落して、ちょっと落ち着けるかな?と思っていた矢先で、中国語もままならないしできるかなーと不安でしたが、まぁ時間もできるだろうし、軽くお手伝い程度なら大丈夫かーと思い、動き始めました。

そしたら、アンバサダーになってました(笑)



黄酒「夢羲-MOHI-」とは?

そもそも黄酒ってどんなお酒なの?と疑問に思う方はこちらをご参照ください。

黄酒は穀物、特に米を使用する醸造酒です。歴史は数千年と長く、日本酒のルーツとも言われています。

ここでは何度も説明していますが、最も有名な黄酒は紹興酒です。夢羲-MOHI-は、紹興で造られてはいますが、正式な紹興酒とは異なります。

紹興酒というのは、鉴湖(鑑湖)の水を使わなければならないなどさまざまな国家規定を満たす必要があります。

しかし、インガさんの黄酒は紹興酒の伝統的な製法を踏襲しながら、オーガニックの原料を使用したり樽熟成させたりと、独自の工夫を取り入れています。

加水をせずにアルコール度数を調整する技術も持っていて、醸造酒にも関わらず6度〜55度までと常識では考えられないような酒を造っています。(中国の特許取得)

僕はこれまで中国酒と関わってきましたが、歴史が長く伝統を重んじるからこそ、止まってしまう部分もあるように感じます。常々、そこが黄酒の問題だなと思っていたので、夢羲-MOHI-と出会い、黄酒の未来が見えたような気がして嬉しかったです。

ちなみに夢羲-MOHI-は、9月に発売予定の「黄酒入門」の中でも紹介させていただきました。

どうやってアンバサダーになったのか

お手伝いといっても僕は何をすればいいのか?役割が何なのか?がよくわからなかったので聞いてみたら、こんな回答が返ってきました。

「"品牌代言人"になってくれないか?」

中国語を直訳すると、こんな感じです。

品牌=ブランド
代言人=広報担当者

ああ、いわゆるアンバサダー的なことか。と解釈しましたが・・・「明日ご飯食べに行く?」みたいなテンションで言われたので驚きました。

そんな簡単に決めていいの?と。酔っ払って終電でどこかへ行って帰れなくなってしまうようなだらしのない人間だけどいいのかなぁ・・・と(笑)不安も感じつつ、断る理由もないので決まりました。

正式には、品牌大使。日本だと、何かのアンバサダー的な人を「○○大使」っていうじゃないですか?日本語と中国語のブレンドもいいなと思い、こっちにしてもらいました。

その後は、部分的に依頼があって出演者の手配や会場探しなどのお手伝いをしていました。

一緒に仕事をして学んだ日中の違い

準備期間は1ヶ月もなく、時間はありません。会場探しから司会者探し、古筝の演奏も予定していたので演奏できる方を探したりなどのお手伝いをしましたが、そんなにすぐ見つかるものでもなく、結構大変でした。

ポスターも作りたい!ということで依頼がありましたが「3日で作ってほしい」という無茶振りも。

そして、なんと僕以外にも動いている日本在住の中国人の方がいることを途中で知りました。その方と電話で話したら

「え?ポスターですか?こちらでも作ってますよ?」

いろいろと重複している・・・ポスターは日本版と中国版の両方が欲しかったようなので良かったのですが、他にも初めて聞くようなことも多々あって、お互いに「電話してよかったですね!」なんて話してました(笑)

日本だとありえないようなことがたくさん発生して、ハラハラした1ヶ月でした。

そこで感じたのは、ミスはあって当たり前、変更もあって当たり前、という考え方が根底にあるんだなぁということ。

とにかく、実現することが一番。お客さんを楽しませることが一番。自分たちの表現をすることが一番。ここに爆進していくような姿勢なので、綿密に計画してから遂行していくというよりは、そのときのベストなアンサーを選択しながら進むという感じ。そのときのベストなアンサーって、当然、そのときで変わるんですよね(汗)

だから変更は日常茶飯事。もう振り回されまくります(笑)ちなみに僕が探した会場や古筝演奏者などは、方針の転換によって全てなしに!(衝撃)

大変でしたが、これはこれで、学ぶべき点もあるなと思いました。

日本は、どちらかというとミスしないために、できるだけ発生するであろう事柄を想定するだけして、計画を立てる。もちろんこっちの方が結果的にはスムーズに進んでいいのですが、ミスに厳しくなるような気がする。人によっては萎縮してしまうような。

どちらがいいと比べたいわけではないのですが、インガさんたちは、とってもパワフルだなーと感じました。

ハラハラし続けたペアリングディナー当日

今回の商品発表会は、前半でMOHIブランドの紹介をし、後半が和食とのペアリングディナーという流れ。

黄酒×和食というペアリングは、日本でも行われたことはないと思います。中華レストランが日本酒を扱うことはあっても、和食のお店が紹興酒を扱うことはほとんどありません。

なので、敢えて和食とのペアリングを楽しんでいただくという試みも、斬新な組み合わせでよかったなと思います。中華の枠に捉われる必要はなく、どんどん枠を広げていくのはいいことだし、実際、黄酒はさまざまな料理とも楽しめる酒です。

当日準備もハプニング多発!

当日は、受付時間が押してしまうぐらい、直前までバタバタしていました(お待たせしてしまった皆さん、申し訳ございません。。)

リビエラ東京、準備中。
受付ではこちらに名前を記入していきます。

本当はもっといろんな設備やアイテムの準備があったようですが、中国から荷物が届かないというハプニング!

そして

「donさん!いちごジャム買ってきてくれませんか!」

「品牌代言人の授与式で渡すメダルもないから、表彰状書いて!」

こうして、僕のアンバサダーとしての初仕事は、いちごジャムを買いに行くことと、なんと自分の賞状を自分で書くという内容でした笑

まさか自分で書くことになるとは・・・!しかも品牌大使って言葉を使い忘れている。

日本最北端の酒蔵「国稀酒造」さんも参加!

今回、ウェルカムドリンクとして、夢羲-MOHI-と同じ名前の日本酒酒蔵である「国稀酒造」さんにお酒を提供していただきました!

国稀スパークリング!すっきりして飲みやすく、数杯おかわりしました。
梅酒も濃醇で美味しかったです!
日本最北端にある国稀酒造。よくはるばる来ていただきました。
国稀CEOインガさんと、国稀社長である林さん。僕も久しぶりに会えて嬉しかったです!

チャイナドレスのモデルさん登場

会は少し押しましたがスタートすると予定よりもスムーズに進んでいきましたが。打ち合わせの段階で、スケジュールがカツカツだったので裏方の人間としてはここでもハラハラしていました。

でも、アイテムが揃わないことでできない企画もあったおかげで、ゆとりをもっての進行となったのです。雨降って、地固まる。

リビエラ東京の綺麗で上品なインテリア装飾、モデルさんによるウォーキングショーがあったりと華やかな雰囲気の中で開催されました。

モデルさんによるウォーキングショー。
色とりどりのチャイナドレス。
あ、これ置いて帰ってきてしまった・・・。
インガさん、直筆の書。アートにも造詣が深いお方です。

品牌代言人として、スピーチ

僕はスピーチと各黄酒、料理の解説をしなければならなかったので、ちょっと緊張していました。

スピーチはちょっと喋りすぎたかなと反省してます。

ざっくりいうと

日本で黄酒といえば紹興酒で、お店では安く売られていますが、それは酒が悪いわけではない。ただの価格であって価値ではない。
本当の価値をしっかり伝えていきたい、創り上げていきたい。

といったことをお話ししました(かなりざっくり)

インガさんからスピーチを頼まれたとき「何を話せばいいんだろう?」と悩んでいたら「あなたは世界初の夢羲の品牌大使よ」とだけ、言われました。心が引き締まりました。

日本でも貴重な和食×黄酒のペアリング

お酒や料理の紹介以外の時間は、お客さんの周りをプラプラ歩いて「どうですか〜?」と感想を聞いたりしていました。

前菜の盛り合わせ。お酒はオーガニックのMOHI19度。
本鮪のお刺身と鱧。黄酒は赤身の刺身と相性がいいかもしれない。

なので、写真はこれしか撮れていません。。

正直、ゆっくり食べられなかったのでペアリングの感想は細かに書くことができません。

ただ、「刺身と黄酒は絶対に合わない」と思っていたけど、もしかしたら味によってはいけるかもしれない、という発見だったり、ご参加された方から「思ってたより和食と合っててびっくりした!」という感想もあって、改めて黄酒のポテンシャルを感じた次第!

では最後に、登場した6種の黄酒を紹介します。

今回登場した黄酒6種を紹介!

色合いの違いから分かる通り、味わいがそれぞれ全く異なります。

①梦羲19° 有机原酿干型手工黄酒

黄酒の中で最も辛口タイプとなる干型。8年熟成。有機の糯米、小麦を使用、工業化はせず伝統的な手作りによる醸造法で造られている。

アルコール度数は黄酒の中ではやや高めとなる19度前後。山の竹林という涼しい環境の中で低温かつ長期貯蔵することで、芳醇で香り高いエステル香を生み出している。

中国の中では唯一有機認証を取得した干型黄酒。

外観は黄金がかった淡い黄色で、清涼感、透明感がある。

アロマは米、蓮の葉、アーモンド、バラなどの香りが複合的に感じられ、数口飲むと、アプリコット、ココナッツ、バニラアイスクリームの香り。空になったグラスに蜜とクリーミーな香りも心地よい。

味は、さわやかで柑橘系を彷彿とさせる鋭い酸味。ドライタイプらしく甘さはしつこくなく、青々しさがありながら長い余韻が感じられる。

②梦羲18° 手工花雕原酒

夏秋冬の気候に合わせて醸造する伝統的な半干タイプ。

酒薬を3日かけて精製、8月には麹でもある麦曲(踏曲)を作り、小雪が降り出す季節に酒母を仕込み、大雪舞う頃手作業での酒造りに勤しみ、90日間の間、雨雪のもとで発酵をし、山菜や草花が芽吹く春の頃、貯蔵用の甕に詰めて封をし、15年もの歳月をかけて熟成させたもの。

インガさんがお父さんから直接教わったという伝統的な醸造法で初めて作ったという黄酒。

しっかりとした熟成の色味である琥珀色、艶やかな仕上がり。花や果実、ヘーゼルナッツなど明るいアロマに、シナモンやもち米の香り、わずかに熟成した陳皮の香りも感じられる。

味わいはフルボディで濃醇さがありながら爽やかな酸味が心地よい。料理と共に口の中に含んでしっかりと味わって楽しむべし。

③梦羲28° 专利浓缩提纯酒

国稀が持つ独自のアルコール濃縮精製特許技術を駆使して造られた黄酒。中国の黄酒のコンペティションでは第一位を獲得。

5年物の黄酒をベースに特許を取得した濃縮技術によってアルコールを高め、その後甕で5年以上熟成。

香りは力強く、芳醇で持続性あり。アーモンドや甘草、ビスケットやローズマリーのアロマも。

柔らかさが多彩な風味。アルコール感もしっかり感じられる。どんな料理にも合わせられる。

④梦羲40° 专利提纯橡木桶原酿酒

28度の倍量の黄酒を使用し、アルコール濃縮製法によって高い度数を実現。中国で初めてオーク樽を貯蔵に使用した黄酒醸造所として知られる。

香りはスパイシーでナッツや高麗人参、樽香などが感じられる。味わいはフルボディでたくましく、ダークチョコレート、シナモンの香り、ドライフルーツのような長い余韻

15分ほどお酒を置いて開かせてからロックで14℃前後の温度にし、大きめなグラスで楽しむのがベスト。

⑤梦羲55°  专利金化玉特酿酒

数回にわたってアルコールの低温濃縮を行い、色はやや青っぽい緑も感じられる透明色。

香りは糯米のような穀物香や燻したようなスモーキー感が感じられる。白酒と間違われそうだが、どちらかというと焼酎に近い丸みのある味わいに紹興酒の風味がほのかに感じられるという独特な仕上がり。

⑥梦羲6°  专利低醇养生酒

熟成した紹興酒を原料に、特許技術で科学的に丁寧に精製。アルコール度数を下げ、各種アミノ酸、人体に有益なミネラルなどを残している。

色は濃い茶色で、涼しげで透明感があり、光沢のある仕上がり。ドライフルーツや黒糖、チョコレートのような濃厚で芳しい香りが漂う。口に含むと柔らかく、滑らかで丸みがあり、甘みがあるがクドくない後味。「紹興市科学技術賞」を受賞。

コース料理の内容

初夏の前菜盛り合わせ
・アワビの夢義有機黄酒蒸し 生ウニ、じゅんさい 煎り酒ジュレ
・ホタルイカ 白ダツ 谷中生姜 酢味噌
・鮎の唐揚げ
・牛たたき寿司 キャビア

旬の御造り盛り合わせ
・鱧
・本鮪

伊勢海老の葛煮 山菜を添えて
・伊勢海老の葛煮(くずに) 蕗(ふき) 山椒の香り
・賀茂茄子田楽(京都の丸なす) 木の芽

黒毛和牛ヒレ肉の炙り 3種の味わいで
黒毛和牛ヒレ肉の炙り 牛蒡(ごぼう) 玉ねぎ
山葵(やまわさび) 岩塩 黒胡椒 ローズマリー 香り醤油

炊き立て御飯と鰻焼き しじみのお吸い物
白米窯炊き 鰻焼き(紹興酒の香り)金針菜と筍の炒め物 卵黄の醤油漬け べったら漬け(大根の麹漬け)

小豆とミルクの氷菓子 フルーツ わらび餅 黒蜜

まとめと今後について

というわけで、無事(?)発表会を終えることができました。

といっても、実はメインで動いていたのは、途中でお話した日本在住に中国人「ワン」さんです。彼は本当にすごい。僕以上に振り回されていて、心配になるほどでしたが、聞いたら学生だった・・・!

とても賢くて、人間的にもできた人だなぁと感心しました。彼とそのパートナー、杉山さん無くして今回の会は成立しませんでした。もちろん直接お伝えしましたが、この場を借りて改めて御礼申し上げます。

品牌代言人に任命されたとはいえ、夢羲-MOHI-をどうやって広めていくのか、どう流通させていくのか、などはまだ何も決まっていません。これからいろいろ考えて進めていきたいと思います。

その前に、自分の中で大切な思いがあります。これはインガさんにもお話しましたが、僕はひとつのブランドだけを宣伝するような立場にしたくないと思っています。

黄酒はまだまだこれからのお酒で、ひとつのブランドが先行して有名になったからといって盛り上がるものでもないと思うし、文化が成長していくものでもないと思います。

僕はこの立場を通して、黄酒に興味を持つ人たちと繋がっていきたいし、価値を深堀して、その魅力を伝えていきたいなと思っています。

ブームよりも、文化を紡いでいく。

まだまだ、始まりです。今後も引き続き、自分なりに動いていきたいと思います。

主に中国酒にまつわる活動に充てさせていただきます。具体的には中国酒関連のイベント開催費や中国酒の研究費、現地への旅費、YouTubeの制作費用などです。お力添えを頂けたら嬉しいです!干杯!