符亀の「喰べたもの」 20211128~20211204
今週インプットしたものをまとめるnote、第六十三回です。
各書影は、「版元ドットコム」様より引用しております。
漫画
「ミムムとシララ~ドラゴンのちんちんを見に行こう~」(1巻) 端(原作)、佐藤夕子(作画)
ファンタジー生物のちんちんを見まくる物語。ただそれだけなのに面白いのが、なんかムカつく作品です。
語られることがほぼないために実物を見なくてはならず、体内に格納されている場合も多いため貴重な露出シーンを見られたときの感動は格別である、そんな存在にちんちんを仕立て上げているのが上手いです。伏字を使わずにエロっ気を薄め、かつちんちんという表記でギャグ的な雰囲気も残した記述法も作風に合っています。まあちんちん見ながら頬赤らめてるけどなこいつら。
サブタイトルの「ドラゴンのちんちん」が意外と話に食い込んできて、長期的な話の流れを作っているのも面白いです。出オチに思えたドラゴンちんちんが予想外の活躍を見せ、「伏線」的にキーワード化されていくのに興奮してしまいます。ちんちんだけに。???
「うめともものふつうの暮らし」(3巻) 藤沢カミヤ
ねこっぽい姉妹のうめとももがおいしいものや楽しいことを見つけていく、なんでもない日常を描いた作品です。第三十七回以来の登場です。
2人ともとてもかわいく、それでいてあざとくないといいますか、悪い萌え日常系的作品にあるキャラの可愛さだけで中身のない感じとは違う、地に足のついた面白さを感じます。その理由として、2人の行動に思考が感じられる点が大きいのかなと思いました。2人のやることに彼女たちなりの考えが見えるので、読者の気持ちよさのために愛玩生物をやらされているような印象は受けにくい。でもその思考が論理的でないというか、子供っぽさを感じるものなので四角四面な硬さも感じにくい。結果、冷めることなくかわいさを享受できているのではないでしょうか。
個人的にかわいいキャラクターを操り人形っぽくなく動かすのが苦手で、この作品などから打開策をもっと学べればと思っています。
「マッシュル-MASHLE-」(9巻) 甲本一
ハリー〇ッターの世界でムキムキのマグルが下剋上する話。第五十五回以来の登場です。
「使役魔物の008番」1体に多様な役割を持たせており、キャラ数と読者の情報処理能力への負担を増やすことなく展開を速めているのが上手いと感じました。まず対処すべき課題、次に主人公のキャラ性を見せるための相手、そして守るべき存在にして恩を忘れず意地を見せる良キャラにして、主人公の行動の解説役。特に本作では「魔法でも難しい場面を筋肉で解決する」ことの異常さへの驚き役が必要であり、冷静な強キャラが増えてくる場面でも驚き役を自然に作る手腕が見事です。
「ひらばのひと」(2巻) 久世番子
六代目神田伯山氏を監修に迎え、講談社が出版する講談師の物語。
正直、本作にはクオリティの高さは感じるものの、これまでなんとなく作品に入り込めていない感じがありました。ですがこの巻最後の「は組小町」の話は、読んでいて思わず前のめりになるほどに楽しめました。
この差は、読者と作中キャラとの目線が一致しているかどうかにあると思います。本作では主人公の1人(本書影のキャラ)の夫が講談素人であり、彼に説明する形などでその話で扱う講談の筋こそ説明されるものの、オチの部分は本家である講談を知っていてこその本歌取りのような形式が多いです。それに対し、「は組小町」の話では講談をつまらなそうと思っていた女子高生に聴かせる話であり、故に講談に対する読者と作中キャラとの知識量がそろった状態で読むことになります。(読者も講談を知っている前提の漫画かとも思えますが、公式が「近ごろ話題の『講談』ってどんな芸能? 落語と何が違う? どういう演目があるの?……などを知りたい方も一読瞭然!!」と書いている以上知らない人向けでもあるはずです。)
こうして読者と作中キャラとの目線がそろうだけで面白さが跳ね上がる、逆に言えばそろっていないと実力があってもイマイチに感じてしまうというのが身をもって知れたのは収穫でした。できれば今後も、読者は講談知らない前提で描いてほしいです。
「不死身のパイセン」(1~3話) 田口翔太郎
毎日部活帰りに謎の怪異に襲われ、そしてなぜか生還するパイセンと、その後輩とによるホラーギャグ漫画です。
「次の話の冒頭でけろっと生還している」のをオチにする発想が凄まじくてシビれました。次の話でオチを見たくなるため、1話配信型のWeb連載と非常に相性がいいです。電子書籍でしか単行本化されていないようですが、紙になっていれば絶対買ってました。残念。
先週に引き続き、今週も読みにくさを強く感じてしまいここに挙げるほどに楽しみ切れなかった作品が多く、残念でした。楽しむ力を早急に取り戻すべきではありますが、むしろ今の読みにくさへの感受性が高いうちに、どこに読みにくさを感じてしまう可能性があるのかについて学んでおくのもいいのかもしれませんね。
一般書籍
読みかけの数冊を放置して新書に手を出したら読み終わりませんでした。これが浮気性の男の末路か。
Web記事
アークライトの編集者さんが、「マグノリア」のの最大の特徴たる「テンポ感」を活かすためにどのような編集をされたかを書いた、Board Game Design Advent Calendar 2021 1日目の記事です。これの後に書くことになった人の気持ちがお前らにわかるか?
「テンポ感」は私も意識したい点であり、大変参考になる記事でした。目の滑りを防ぐために文字幅を確保するなど、そもそも発想自体が私になかった内容もあり、勉強になりました。
自作の宣伝枠。(Board Game Design Advent Calendar 2021 2日目担当)
感想が一切投稿されてないのは率直に悲しいですが、多くの方に見ていただき目標以上のスキをいただけたのでOKです。皆様ありがとうございました。
反社会人サークルさんが、作者の意図をルールにより表現し、その意図を古典文学作品のようにプレイヤーに読み解いてもらおうとする、自身のゲームデザインプロセスについて書かれた記事です。Board Game Design Advent Calendar 2021 3日目の記事でもあります。
表現したいテーマがある作品において、ゲーム上組み込まなくてはいけないシステムにもテーマ的な意味を持たせ「表現の密度が高める」という手法が面白く、学びになりました。同サークルさんの「カードゲーム制作を支える技術」という本に依拠した記述が多く、その分読みにくいところも見られるnoteではありましたが、いい記事なのは間違いないと思います。
「[CEDEC+KYUSHU]マダミス,イマーシブシアター,謎解きゲーム。“体験型エンターテインメント”の現状を分析する講演をレポート」
ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC+KYUSHU 2021 ONLINE」にて行われた講演「体験型エンターテインメントとは何か? ~広がるゲーム的手法~」のレポート記事です。
体験型エンターテインメントとしては記事タイトルにあるようなもののみを想定していたのですが、「体験型書籍」「音楽系」のような行って楽しむ形でないものや、「テーマパーク」「アトラクション/イベント」といった従来のメディアを体験という文脈でとらえなおすものなど、幅広い事例が見れたのが面白かったです。そのうえで、体験型エンターテインメントにおいても能動的な選択がストレス要因として見られているとする分析に、そこを楽しむし楽しんでほしい者として残念な傾向だとは思いつつも重要な指摘だと感じました。
小学1年生の頃に「人生で初めて自分のお金で購入したゲーム」として「ポケットモンスター ダイヤモンド」を遊んだ筆者が、リメイク版の「ポケットモンスター ブリリアントダイヤモンド・シャイニングパール」を遊んだ結果書かれた記事です。
「ダイパからダイパリメイクにあたって変わった部分」の1つ目に「わざマシン・ひでんわざの謎仕様」を持ってくるセンスが輝いています。バグが有名になりすぎてやっていないとネガティブな印象も強いダイパリメイクの記事を書くにあたり、まずわかりやすいツッコミどころを原作再現という文脈に乗せながら書くことで、無理矢理ヨイショした記事でなさそうという信頼感を持たせつつこの記事の軸である「ダイパとの相違」を明確にする点、上手いですね。
「『失敗してもサラリーマンだから安泰でしょ、と思われたら改革なんてできない』 前編集長が明かす『少年サンデー』が“大赤字予測”から“復活”できたワケ」
「「少年サンデー生え抜きで1作目からメガヒットは『今日から俺は!!』以来30年ぶり」 老舗漫画誌を改革した編集長が“就任時から17倍”のお金をかけたところ」
少年サンデーの「復活」に携わられた元編集長のインタビューです。
時間がかかる新人育成と素早く資金回収が見込める人気作のスピンオフとの2本柱体制など、裏話が面白く、(既に強みがある前提ですが)大企業の資本に頼り切りでない戦い方を見れたのが勉強になりました。
「文章が綺麗に整う『語尾』『粒度』『補足詞』のこつ|ことば遣い編②|逢坂 千紘」
「文章術、あるいはボードゲーム制作法」で生意気にも「文章術」のハッシュタグをつけた結果、おすすめとして表示された記事です。
「語彙の詳細度(タイトルの「粒度」部分)」をそろえるべきというのは一度どこかで学んだ気がしていたのですが、忘れていたので思い出せてよかったです。てかその用語タイトルとそろえないのかよ。
この記事は「物書きのための校正教室」という完結済シリーズの1つとのことですので、他のも読ませていただこうと思います。
親や教育者が完璧な見本であろうとするよりも、「子どもが活躍できる場、子どもが補ってくれる役割、を残しておく」方が子育てにおいて大切なのではと説かれたnoteです。
「うまくできないで困っていると、それを解決したくなる気持ちが湧く」という心理は非常に納得でき、ゲーム体験においても活用できそうに感じました。
「編集後記」
GUCCIとBALENCIAGAのコラボ企画「ザ・ハッカー・プロジェクト」についての批判記事です。
いわゆる文化盗用の問題点についてわかりやすくまとまっている記事だと思いますし、はっとさせられた部分も多かったです。一方、SNSではデザイナーのバックグラウンドやアート的文脈への理解が不十分であるという指摘も見られ(「醜悪なスノビズム」で検索すると見やすい)、それも含めて考えるべき記事なのだと思いました。
エッチなゲームのPRを、「エッチなゲームをやっているところを母親にバレないようにする選手権」という形で行ったオモコロの記事です。
母親役がやってくるまでのネタフリ部分にPR先のゲームの売りを挟むやり口が上手いです。イカれた内容のクセに、真面目なだけのPR記事よりその良さを覚えさせられてしまいます。内容についてはいつものオモコロクオリティなのでノーコメントで。
非常に多くのWeb記事を読んでしまった(これでも読み切れず積んだのが複数ある)ため、かなり執筆に時間がかかりましたが、なんとか広義土曜日のうちに書き上げられました。次回か次々回ぐらいには、狭義土曜日に終えられるようにスケジュールを立て直したいところです。せめて2時には寝られるようにしたい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?