符亀の「喰べたもの」 20220522~20220528

今週インプットしたものをまとめるnote、第八十八回です。

各書影は、「版元ドットコム」様より引用しております。


漫画

隣のお姉さんが好き」(1巻) 藤近小梅

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隣に住む3歳上のお姉さんに片思いする中二男子が主人公のラブコメ。

好きな子がめがねを忘れた」と同じ作者さんの新作ラブコメということで、あちらと同様の砂糖多め破壊力高めラブコメかと思っていました。そうしたら刺されました。まさかこれほど「年上だけど高校生止まりなお姉さんへの」「片思い」の話だとは思わないじゃないっすか。

これまで読んできた漫画の中で5本の指に入るぐらいに刺さり、なんなら1巻だけで勝負させれば人生1位ではというほどに情緒を乱されました。あまりに深く刺さったがために、3日に分けて読みました。

ここまで刺さった理由、それは、1巻のうちに何度も「こう来るか!」と思わされたからでしょう。では、なぜ本作は、読者をいい意味で何度も裏切ることができるのか。それは、本作が「隣のお姉さんが好き」な話でありながら、どう好きなのかを変え続ける話だからだと思います。

1話の時点では、本作は「天然なところのあるお姉さんに思いが届かない(から話が進展しない)ラブコメ」に見えます。男女が逆なパターンが多い気がしますが、twitterやweb漫画でよく見るタイプです。しかし2話ではそのお姉さんに影が感じられ、3話ではそれより年上の存在(主人公の兄)との比較によりお姉さんの大人でない部分が描かれます。そして4話で2人の関係が大きく変化し、さらに8話でまた重要な転換が訪れます。余談ですが、無料公開中の話が1~4話と8話(執筆時点)なのが、編集側がこの作品をわかってる感が強くて好きです。

このように2人の関係が変化し続け、前回までで「これは〇〇の話なのでは」と思ったのが崩され続けるんですね。しかし、あくまで主人公が「隣のお姉さんを好き」なのは変わらない。要するに、毎回主人公が隣のお姉さんを「どう好きなのか」が変わっていくんですね。うまく言葉で伝えづらいのですが、主人公からお姉さんへの矢印が出ているのは変わらないのに、主人公の立ち位置が変わりまくるからベクトルとしては変化し続ける、というので伝わるでしょうか。無理ですよねすみません。

ここのベクトルというか2人の立ち位置は、普通の作品では山場でしか変化しないと思います。しかし、本作は「隣のお姉さんが好き」さえ守っていればいいと言わんばかりにどんどん変えてくる。でも「隣のお姉さんが好き」なのは守っているので作品の一貫性は保たれている。関係性を毎回変えてもいいんだ、そこを変えると毎回山場になって面白いのかという気づきを与えてくれた作品です。


犬の名は」 ただたか

前のめりになって犬をかわいがる女子、そのおっぱいが見えそうなのではと思う男子、その様子を見つめる飼い主のギャグ漫画。

伏線」の使い方が上手くて驚かされました。twitterの2投稿からなる漫画であり、1投稿目から2投稿目に移る際に意識的な断絶(1枚目の話は終わったものと思い込む)があるのが、より「伏線」を際立たせている気がします。


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画像投稿ができない女の子を描いたtwitter漫画です。

仕様ハック系漫画として感心いたしましたので、ここにメモしておきます。


今週は「隣のお姉さんが好き」が刺さりすぎて実質1作品のみになってしまいましたが、読書体験としては非常に満足できました。インプットとして十分だったのかは知りません。


一般書籍

シン・ウルトラマン デザインワークス

前回の記事で触れた、「シン・ウルトラマン」のデザイン資料集です。

大量の資料から制作陣の方々の圧を感じ、とても満足しました。一方、本作に登場するウルトラマンおよび敵役に「成田亨氏の本家デザイン」があり、それをリファインしつつ再現するというのもテーマにある以上、各キャラのデザインの意図やテーマが読み取りきれず「結局元ネタに忠実にしました」みたいに感じてしまったのは残念でした。とはいえ、純粋にカッコいいデザインを好きなだけ眺められるようになっただけで十分なのですが。


Web記事

【MTG】君は本気で「一万円でレガシー」を楽しめると思っているのか?

Twitterで定期的にプチ炎上する(らしい)「一万円でマジックザギャザリングのレガシーフォーマット用のデッキを組む」企画に、本気で取り組んでみた方のnoteです。

「楽しみながらノリでやってます」感が文全体から伝わってくるのが面白いです。そのうえで知識が無茶苦茶あるのも伝わってきて、「〇〇円で買える(買え)」ネタが相乗効果で面白くなっています。ボーナストラックの方も、楽しく読ませていただきました。


素晴らしきシャニマスのサブタイトル(コミュタイトル)の世界

アイドルマスターシャイニーカラーズのシナリオタイトルから、筆者さんが名作だと思われたものをランキング形式で紹介されたnoteです。

改めて良さを分析しようとすると、タイトルの良しあしはログラインのそれに通じているなと思いました。特にシャニマスの場合、アイドル育成ゲーでそれをやるのかという「構造」破りなシナリオも多く、それをログラインの用語における「対立」、雑に言い換えるならば不穏さや(アイドルの夢の世界とは異なる)現実を感じさせる語で暗示しているのが「いいタイトル」らしさを生んでいるのかなと感じました。


松下哲也さんに『炎上した理由』と『批評というものの本当の価値』を教えてあげたい

松下哲也氏のシン・ウルトラマンに対する批評とその炎上を受けて書かれたnoteです。

前半の、批評とは作品の構造を読み解いて楽しみ方を教えるものだという指摘には、目から鱗が落ちました。「作品の中にある構造」の例も含めとても勉強になりましたし、面白かったです。今回いくつかの考察で、この「構造」を踏まえて書いています。

一方、後半のシン・ウルトラマンの構造については賛同できませんでした。本作では怪獣(見ていない人向けにこの表記)の出現時の住民の避難が何度か描かれており、これが「本作でウルトラマンは人を殺していません」というメッセージにとれると考えるからです。まあ、某一戦で(下に被害が及ばない空中戦メインでしたが)そこの住民避難してないやろ的なところにまで戦いの舞台を移すシーンはあるのですが。


そんなに地球人を好きになってくれたのか、ウルトラマン。 『シン・ウルトラマン』

というわけで、今週も「シン・ウルトラマン」についての感想記事です。

冒頭のあれがシン・ゴジラを表しているというのは、まったく気づきませんでしたし見事な考察だと思いました。そういう表現方法もあるのかと、感心いたしました。


2020年度 第69回 朝日広告賞 入賞作品

こちらのツイート(紹介されているのは2019年の入賞作品)をきっかけに。

入賞されている作品は「その商品が引き起こす感情を(比喩表現や斬新な切り取りにより)新鮮に伝えている」ところがいいなと思いました。逆説的に、その体験や感情がまだ知られていないような新製品を訴求するにはどうすればいいのかという課題も想起されたので、頭の隅で考えておこうと思います。


「デザイン基礎」(講師:カイシ トモヤ先生)|オンライン動画授業・講座のSchoo(スクー) 色の海~センスは必要?

東京造形大学教授のカイシトモヤ氏が講師の、デザインの基礎知識を学ぶオンライン授業、その第3回です。

これまでも受講してきたのですがここに挙げるのを忘れており、今回はたまたま思い出したので載せました。授業内容自体も勉強になりましたし、学ぶことは自分の明日を良くすることであり世界を良くしていくクリエイティブの一部なのだという結びの言葉が、最近インプットのモチベーションが下がってきていたところに刺さりました。


今週は、竹尾見本帖本店で行われた「日本タイポグラフィ年鑑2022作品展」も拝見してきました。各作品の見た目がいいのは当然として、作品の説明文によりその表現意図を踏まえて鑑賞できたのが、インプット的にありがたかったです。展示されていた冊子の「かろうじて、文字」については一般書籍枠として紹介したかったのですが、内容の転載が禁止されていたのと一般販売がされていないのとで断念してしまいました。残念。


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