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違う街の景色

地方都市を南北に走るこの通りは、このあたりでゆるくカーブを描く。
舗道に植えられたイチョウの緑は時季早い長雨に濡れて輝いている。

ちょっと時間ができたので遅いランチをこの通りに新しくできたカフェのカウンターでとってみる。
注文した瓶ビールがテーブルに置かれる。ビール好きにもかかわらず、注ぎ下手な私はグラスいっぱいになった泡をあわてて吸いこむ。

ゆるいカーブの先は有名な渋滞する交差点。減速する車列のテールランプが次々と点灯する。どんよりとした空に反応したのだろう、対向車のフロントランプが点灯している。
土曜日の昼過ぎということもありお出かけをする車は多いんだなあなんて、ふと思う。

ようやく運ばれてきたサンドイッチ。赤、黄、緑の色とりどりがこんがりの茶色のトーストに挟み込んである。でもちょっと冷めてない?
いつもなら昼はパスタが多いのに、今日に限ってパンを選んでみた。なんでかなと考えながらトマトかと思って口に入れたら、大好きなサーモンだ。スモークされているから、香ばしいパンとのマッチングが最高。口いっぱいにほおばって、ビールで流しこむ。美味、美味。

いつも走り慣れた通りだけれど、いつもと違った視点だからなのかな、都会のビル街にいるように錯覚する。
都会に生活していた頃は、移動手段は歩きか公共交通機関となるので、おのずと街歩きをすることになるため、あちこちの街並みを楽しんだものだった。
地方都市に移り住んでからは車で移動することが多くなってしまい、こんな風に街を見下ろすことは久しぶり。
そういえばちょっと前にこの通りにかかる大きな歩道橋を歩いたことがあったなあ。橋の上からみた三角形にとがった山がきれいだったなあ。

いつもと違う空間で、いつもと違うメニュー。昼からお酒というのも手伝って何でもない土曜の午後がちょっと異世界体験。こういう時間も時にはいいな。