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1枚のコウモリの写真から始まった。


HTMFの自動撮影カメラに写っていたコウモリ

2012年。ホロカトマム山林内の自動撮影カメラをチェックしていたら、小さなコウモリが写っていました。自動撮影カメラの精度はそれほど高くないので、大きな哺乳類(エゾシカやヒグマなど)はカメラで捉えることは普通でしたがスピードの速いものが綺麗に写真に写っているというのは稀でした。

このコウモリの名前はなんだろう→知り合いに聞く→コテングコウモリ→もっとちゃんと専門家に聞いてみる?→専門家サーチ→といくつかのステップを踏み、当時、京都大学霊長類研究所 国際共同先端研究センターのデイビッド・ヒル教授に辿り着きました。辿り着けたのは、この教授、コテングコウモリの研究者だったからです。

連絡をとったところ、ちょうどコテングコウモリの研究中。屋久島でコテングコウモリのDNA調査をしていて、南端と北端で比べてみるのは面白いかもしれないと、ホロカトマムまで調査に来てくれました(おおお!)。

調査は本格的。ホロカトマム山林は敷地50ヘクタールあるのですが調査地点を5か所5日間を選びキャッチアンドリリース。

ホロカトマム山林の大まかな地図と5ヶ所の調査区域を設定
夕方遅くからかすみ網トラップを準備しているところ。
注:コウモリは狂犬病などのウイルスを持っていることがあり、専門家である教授以外はコウモリには手を触れませんでした。夕方から夜遅くまでの調査のため、ヒグマに遭遇しないように、道を見失わないように . . . 心配事多数でしたが無事に無事故で終了しました。

かすみ網以外にも「ハープトラップ」=楽器のハープのようなもの、も同時に使いました。また教授自作!の「オートバット」というコウモリがお互いを呼び合う超音波音声を発する器具を使用してコウモリをおびき寄せるという手法を用いておられました。

教授はコウモリの種、性別、妊娠の有無、成体か幼体かなどの事項を確認をし、愛護的に野生に放つ手法をとっております。
コウモリを観察中の教授、コウモリは本当に小さい
これがトラップで捉えたコウモリです。小ささに注目、親指くらいの大きさしかない!
手袋をした親指と人差し指の間に挟まっている状態です。
キーっという超音波は近くではちゃんと聞こえて感動。


同定できたのは5日間トータルで50匹、しかも教授の大好きなコテングコウモリが29匹。

キャッチアンドリリースで同定したコウモリ一覧

以下自分達で撮った写真と説明です。山林内だけでこんなにたくさんの種類のコウモリがいるとは思いもよりませんでした。一枚の小さなコウモリの写真から始まった、普段いつもの生活しているだけでは決して知ることにない奇跡的な体験!でした。

新聞にも載りました

コウモリは多数の虫を捕食するため、その数をコントロールするほか、受粉なども助け、森のエコシステムには欠かせない動物です

Prof David Hill 

調査の様子はVimeoにも載せてありますのでご興味のある方はどうぞ。友人が編集してくれました。


ちなみにこの記事のように(今noteで発見!)

北海道には保全優先度の高い地域がたくさんあること、そしてサステイナビリティ=今ある自然をなんとか未来へ残していくためには、絶滅危惧種などを選んで数種を動物園などで保護するのではなく、多様性を含め環境ごと丸っと保護(ホロカトマム山林プロジェクトのようにね!)するのが一番いいのだということです(保護区を設置するのがよい)。


いつもありがとうございます。このnoteまだまだ続けていきますので、どうぞよろしくお願いします。