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大学の未来

クライアントファーストの大学への人気

米国の私立大学としては安い学費(年間150万円弱、住居費除く)で、様々なエクスペリエンスを学生に提供するミネルバ大学が大きな人気を集め、話題になっています。

ビジネスモデルの要点としては、

予習を前提としたクラス討論やインターンなど、学生が主体的に動く授業カリキュラムで学生の満足度を高めながら、インターネットを活用してキャンパスを持たず、教員に大学経営に参画させず研究することも求めず教育に専念させ、経費を抑える

ということのようです。

https://medium.com/minerva-schools/q-a-with-minerva-founder-ben-nelson-5abaf7acfdf8 

大学のアンバンドリング

従来型の大学は、科学を中心とする学術研究と教育をバンドリングして、学生・卒業生からの学費・寄付金をうけながら、政府その他からの補助金(と保有資産からの利子・配当収入)を足して学術研究費用を捻出してきましたが、ミネルバ大学の動きは研究と教育をアンバンドリングして低コストで質の高いサービスを学生に提供する動きといえます。(銀行と決済に参入するインターネット企業の関係に似ていますね。)

ミネルバ大学のような大学が増えると、従来型の大学も、学生からのニーズに応える授業・教育を提供することを今まで以上に求められることになると思います。(子供を持つ親としてはよい動きです。)

ただ、ミネルバ大学のビジネスモデルは、従来型の大学が費用負担して積み重ねてきた学術研究の成果にただ乗りして授業を構成することで経費を抑えているともいえるので、誰が学術研究の費用を負担するべきかは今後の社会的な議論の対象になっていくと思います。

日本の大学のこれから

ミネルバ大学のような大学が登場した現在、これからの大学はどうなる(どうなっていくべき)でしょうか。日本の大学の場合は、案外、よき伝統を守るということになると思います。

日本の大学の学費は米国に比べるとそもそも安いです。(学費が高いといわれる早稲田大学でも入学金込みで理系で年間180万円、文系で120万円程度です。国立大学はもっと安いです。)

その裏で、国立大学をはじめとして日本の大学は、教職員の給与も抑えてきました。それでもそれなりに人材を確保できたのは、理系を中心に、自由に利用できる研究費を潤沢に与えてきたからだと思います。これは、大学が提供する研究リソース(時間・設備・アシスタントとしての学生へのアクセス)の利用を非金銭的な報酬とすることで、金銭的な経費を抑える先進的なやり方だったといえます。

私は文系学部出身なのですが、自分が大学にいたころの理系の同級生の話を聞くと、実験演習なども含め、一様に相当勉強させられたといっていたのを思い出します。なので、日本の大学は、少なくとも理系学部は、高いレベルの研究をしながら経費を抑えて、学生が主体となる授業(トレーニング)を行うカリキュラムを実現していたのではないでしょうか。

今もこの伝統は、理系学部を中心に生きているのではないかと思いますが、2000年代以降の財政支出の削減の動きの中で、政府から大学への補助金も低下の一途なので、このモデルは崩れつつあります。

それでも、低コストで学生への質の高いトレーニングを提供する日本の大学のよい伝統を無くさないようにするのが大切だと思います。

そのために政府からの補助金が増えればよいですがなかなか難しい状況です。大学側の経費削減努力としては、間接費の削減に加えて、お金のない中で、これから社会に出る20歳前後の人に教えることを念頭に、授業内容には優先度をつけて絞るということをせざるを得ないかもしれません。また、文科省認定の大学院修士の資格を、短期間でとれる大学認定資格の集まりで構成して、大学院教育へのニーズを増やしたり、それでも大学院教育へのニーズが低い分野は大学院を縮小して、その分教職員数も減らすということも必要になると思います。