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オードリー・タンとシビックハッカー

「デジタル技術とシステムによって政府の問題解決を補佐し、民間と政府のコミュニケーションの促進と強化を行う。自分の役割は特定の団体の利益のために動くことでも、政府のために政策の広報を行うことでもなく、より多くのアイデアと力を結合させる『パイプ』となることだ。
(オードリー・タン)

IQ180、15歳で企業。Perl6の開発でのオープンソースへの貢献。米アップルやBenQの顧問。そして、2016年に台湾の大臣に史上最年少で入閣。華々しい経歴のオードリー・タン。入閣時のメッセージが象徴的だった。『パイプ』になるとはどういう事か?オードリー・タンの活動を追ってみました。

g0v オープンガバメントの推進力

2012年に立ち上げられた「ゼロから政府の役割を再考する」g0v (Gov Zero)はシビックテックのコミュニティ。政府に対して徹底した情報公開と透明性を求め、数々の社会変革をもたらしてきた。ここから様々なオープンソースプロジェクトが生まれている。タン氏はこのコミュニティの中心的人物であり政府とのパイプ役を担っている。また、リードプログラマーとして大きなプロジェクトを推進しているわけではないが、大臣となったいまも年間1000〜2000のコミットをするオープンソースコミュニティへの生粋の貢献者だ。

政府予算の可視化

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CoFacts ー LINEチャットボットを使ったフェイクニュース撲滅の仕組み

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vTaiwan 市民→行政のパイプとなるプラットフォーム

vTaiwanは、さまざまな利害関係者の間でコンセンサスを構築しながら、問題提起から立法制定までを担うプラットフォームだ。トップダウンの政策決定ではなく、市民からのボトムアップの議論であることが特徴だ。代表例は2015年にUberの規制方法に対する利害関係者の調整。また、19年7月のプラスチックストローの廃止の政策もここから生まれたものだ。タピオカミルクティが人気で年10億杯も消費されるという台湾。この政策は、たった1人の女子高生の提案から始まったいう。

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オープンソースや既存サービスを使い構築されている、わずか2週間で構築されたという。

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現在も電動キックボードをどうするか?という旬なネタが議論されていた。

PDIS - 行政の各部署とのパイプ

タン氏は正式な省を運営しておらず、各省からの出向者の組織を束ねている。その拠点がPDIS(Public Degital Inovation Space)だ。これは、32の省庁にまたがる70人のイノベーション担当者からなるネットワーク。出向者はPO(Participation Officer)という職務につき、政府がうまく対応していない点を発見、社会起業家に力を貸し、プロジェクトを推進していく。行政内部にあるサービスデザインファームのようなものだ。

ここでタン氏は行政サイドの各部署とのパイプ、出口となる社会企業家とのパイプを構築した。サービスの実現にはシビックテックコミュニティg0vも密に連携している。

台湾のマスク神対応の舞台裏

コロナ騒動で台湾でもマスクはすぐに枯渇した。台湾政府は2月上旬よりマスクの買い上げ、購入制限などをしたが、店舗に行かなければ在庫状況は分からず混乱は収まらなかった。そこでタン氏らは台湾国内の薬局にあるマスクの在庫データをネット上に公開。エンジニア達がデータを地図上にマッピングし、在庫状況がわかるアプリが多数開発された。リリースされたサービスの数は100以上にものぼる。

行政との細やかな連携、エンジニア達の協力。この神対応が実現したのはタン氏が作り上げてきた数々の『パイプ』があったからだろう。日本ではタン氏のIQに注目されがちだ。しかし、これらは1人の天才の物語では決してなく、シビックテックコミュニティや行政関係者の草の根活動、そして市民の物語であることも記しておきたい。


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タン氏のフェイスブックでのリリース投稿。大臣のコメント欄で、データがおかしい…などサービスリリース後のよくあるやりとりが行われていた。まさしく、民間と政府のコミュニケーションの促進と強化を行う『パイプ』となっていた象徴的な一幕。

Code for Japan 日本のシビックテックコミュニティ

タン氏が35歳で入閣。日本では78歳のIT大臣が生まれ話題になった。台湾の人口は2378万人、日本は1.2億人。人口の母数が違えばガバナンスの力の重心も、力を発揮できるプレイヤーも違う。ここを比較をしても仕方がないだろう。一方で東京都の人口は927万人と似た規模感だ。東京都は元Yahooの宮坂学氏が副知事に就任されてから、東京ユアコイン、東京都新型コロナウィルス対策サイトのGitHub公開などドラスティックな変化が起きている。日本で変革がおきるとすれば地方自治体からだろう。この東京都新型コロナウイルス対策サイトの立役者が日本のシビックテックコミュニティCode for Japanだ。

2013年に設立されたCode For Japan。海外のシビックテックコミュニティとの交流もあり、g0vとの親交もかねてらか深い。話題になったタン氏のプルリクエストも異国の大臣が神のごとく突如降臨したわけではなく、彼らの長きにわたる信頼関係が生んだ必然の出来事だったように見える。ここにもタン氏が作った1つのパイプが見えた。

Code for Japanが作った東京サイトは、北海道神奈川版とフォークされ現在も広がり改善されている。台湾だけではない、日本にも頼もしいシビックハッカー達がいるのだ。



Appendix

その他、タン氏のシビれる逸話たち。

フェイクニュースに対する対応、合理性だけでなくユーモアを持って60分以内に対応。

デジタル大臣として最初にしたのは、ソフトウェアを再コンパイルして新しいシステムを実行できるようにした。ホワイトハッカーに攻撃してもらいサイバーセキュリティを上げた。DefCon(ハッキングコンテスト2位)のホワイトハッカーを採用した。つまり世界2位のセキュリティだと思う。

彼らはプロジェクトを坑(穴)と呼び、興味を持ってそれに取り組むことを「穴を掘って穴に跳びこむ」と形容する。

投票のリデザイン「大統領ハッカソンでQuadratic Votingという投票システムを利用。従来の1人1票の設計では、意見の強さを効果的に反映できないことがよくあります。QVでは、投票が集中するほど、より多くのポイントを使用する必要があるため、各投票によって生じる効果は、各追加投票のコストに比例します。これにより、投票の談合、無効化、または真の意図を隠す他の行動が回避されます。」

父の言葉「タン氏の成功は高いIQによるものだという人もいるが、2000年以降のインターネット速度と検索エンジンソフトウェアの改善は彼女の業績に大きな役割を果たした。」

荒らしに対する対応「彼らの投稿には、すべてアドホミネム攻撃である100個の単語と、建設的と解釈できる5個の単語が含まれているとしましょう。それらの5個の単語に慎重に返信します。これは、長期的な関係の会話が可能であることを人々に示しています。」

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wildcard inc. 代表取締役。 小学生の娘を持つ1児の父。テクノロジー全般、サービスデザイン、我が家で試したSTEM教育などについて書いています。

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