大嫌いな人間が「自分と似てる」ことに気づいた話
少し前に、人は似ている対象を好むという記事を投稿しました。
今回は、その逆で自分に似ているからこそ嫌悪する心理について書きます。
感情に蓋をせず感じ切るというトレーニングを始めてから、色々な気づきを得られるようになりました。
僕は抑圧型の人間なので、感情から目を背ける癖があります。
目を逸らしたあと、「なぜ目を逸らしたのか?」を考え、どういう感情かを深堀していくと、腑に落ちる理由が見つかるようになりました。
ある男性がいます。Fさんとしましょうか。
かれこれ15年以上定期的に会っているのですが、単刀直入に言うと僕は彼にものすごい拒絶感があるんですね。
Fさんとの初対面の印象は最悪。急に近づいてきて、いきなり知識マウントを取り始め「君がよかったら、僕が色んなことを教えてあげるよ」とニタニタ笑っており、「なんや、この偉そうなおっさんは!?」と最初から警戒しておりました。
サイズが合わない不格好な服装をしており、一見して妙な人でした。
僕より5歳くらい年長なので、彼に対しては敬語を使って接しています。
僕はFさんのことが嫌いなのですが、なぜか彼は僕に興味を持ち続けているようで、深夜に「この本、君におすすめだから、読むといいよ」とLINEが送られてきたり、やたらとアドバイスを送りたがる人でした。
鬱陶しいので彼との関わりを極力避けるようになると、僕の周囲にいる人にまとわりつくようになり、またアドバイスおじさんと化しました。
いい加減、腹が立って、一度呼び出して「他人にアドバイスを送ることで、満たされない承認欲求をを補完しようとするのはやめてください」と告げました。
呼ばれていないところに勝手にやって来て「なんで、この人がここにいるの!?」と微妙な空気になることも、しばしば。
異業種交流会など、色々なところに出没しては顰蹙を買い、浮いている人でしたが、きっと繋がりに飢えていたのだと思います。
関わりたくないと思ったので、距離を置いたのですが、不思議と僕は彼のことをよく「なんなんだ、あいつは!?」と何度も繰り返し考えていました。
である日、合点がいったのです。
「僕と彼はよく似ている」と。「だから腹が立つんだ」と。
抑圧された影(シャドー)
心理学では自分の欠点を抑圧し無意識下に押し込められたものを「影(シャドー)」と呼びます。
精神科医のユングが提唱した概念ですね。
「このように生きたい」という理想像があると、自分の中にある負の要素をどんどん押し込めながら、無視しながら理想へと突き進むことになります。
「影(シャドー)」を語る上で欠かせないキーワードが「否定」や「否認」。
「こんなことをしてはいけない」「こんなふうに振る舞ってはいけない」と禁止令を作り、自分の性格や性質の一部を認ることを避けると、「影(シャドー)」は心の奥底で色濃くなっていきます。
抑圧していますが、心の中に存在しているので、なくなってはいないわけです。
自分の「影(シャドー)」を持っている人を見ると、投影してしまい、むしょうに腹が立ちます。
Fさんに対する僕の腹立ちをピックアップしてみると
・服装がださい
・垢ぬけない
・空気が読めない
・コミュ力が低い
・初対面が苦手
・マウントをとりたがる
・ナルシスト
・承認欲求が強い
となります。
これを書いている今もざわついたり「こんなこと書きたくないなあ」「人に言いたくないなあ」と拒否反応が起こるのですが、実は今、挙げた上記の要素は全部、僕の中にあります。
自分が「うわっ、自分のこの性格、嫌だからどうにかしたいなあ」と自己嫌悪している部分なのです。
意識して表目に出ないように努めているけども、ひょっこりと顔を覗かせることが少なくありません。
自活できるようになるまで、僕は大きな不安を抱えており「自分を変えなきゃ」と自身に鞭を打って数年間、必死に走り続けました。
その結果、今があるのですが、過去の自分は強い不安と隣り合わせで「将来、定職につかず、パートナーにも恵まれず辛い生活を送るのでは?」みたいなことを度々、考えておりました。
なんとかそういった未来は回避できて、今があります。
15年ほどの前の僕と、今の僕を知っている人は外見や振る舞いなども含めて「別人」「人が変わったみたい」と言ってくれますが、ネガティブ面を封じ込めて、外側に見えるものの割合を変えたから、そう映るのだと思います。
Fさんを見ていて、ざわついてしまうのは、彼は僕が恐怖していた、なりたくなかった未来の自分の姿だからに違いありません。
失礼極まりない発言ですが、本音を隠さず記すと、かつての自分が「こうなりたくない」と思っていた像を具現化したのが、まさしく今のFさんなので、目を背けたくなるのです。
そして彼を見ていると、自信のかけらもなかった過去の自分に戻りそうで怖いのです。
彼と自分が似ているとわかって、なぜ僕が彼のことを度々考え、執着しているのかがわかり、少し楽になりました。
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