★【酔筆素読#13】子どもが大人の世界と対等になる怖さ

ふと、昔好きだったものを調べることってありませんか?
私は小学生の頃、ニンテンドーDSiの「うごくメモ帳」にはまっており、うごメモシアターというサービスに自分の作った作品を投稿していました。

(うごくメモ帳=DSで書けるメモ帳。パラパラ漫画のようにコマ送りの動画を誰でも作ることができ、これを「うごメモシアター」という他ユーザーとメモを共有できるサービスに投稿することができた。)

このうごくメモ帳というのは、私と同世代のオタクにはおそらく、ニコニコ動画的なオタク文化の入口になっていたのではないかと思います。
というのも、このうごメモでは音声の収録と、タッチペンでアニメを描けるという組み合わせによって、ニコニコ動画に投稿されたボーカロイドのオリジナル楽曲や音MAD、東方Projectの楽曲、アニメの二次創作を簡単に転載・共有出来たのです。

しかしこの機能が、著作権侵害や他人が作った作品を勝手に自分のもののように投稿してしまうというモラルのなさを助長していたというのを、最近知ることになりました。

なにせ当時は小学生。著作権やネットのマナーなど、知る由もない年齢でした。

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LINE MUSICには、一時期「音楽が無料で聴けないのはおかしい」というレビューが上がってヤバいという問題がありました。

音楽はアーティストが汗水垂らして生み出したもの。アーティストはそれを生業にしているわけで、それに対してお金を払うことは当然というのは、大人であればわかることでしょう。
そして、それを理解できない若者(学生、子ども?)が、こんなレビューを投稿している・・・それに対して水を得た魚のよう(=非が100%の者に対して、非が0%で上に立てる我々のよう)に猛烈に叩く大人という構図ができていました。
私が中学生くらいの頃、音楽はなけなしのお小遣いをはたいてCDを買ったり、あるいはいけないことですが、YouTubeに違法で上げられている動画で聴くというといったものでした。

小中学生にとってCD1枚を店頭で購入するのはそれなりに高額の買い物となることが多く、またネットで1曲単位で購入するにもクレジットカードがなければプリペイドカードを用いる必要があるなど、ハードルが大人よりも高いものです。そんな中、無料で聴けてしまう違法アップロードや、LINE MUSICの無料期間といったサービス(?)は救世主となるのです。
大枚叩く買い物が0円になるというのは、常人の判断を狂わせます。大人であれば著作権を遵守しようという意識に目が向くとは思いますが、小中学生のような子どもにとって、著作権というのは技術・情報の授業で習う大人の言語、つまらないもの、興醒めするものとしての「著作権」なのです。実際のレビューが見つからなくて恐縮なのですが、「音楽でお金を取るなんて大人は汚い!」的なコメントもあったように思います。
これは物事の判別が付くようになった大人にとってはあり得ないことのように思うでしょうが、仮に小中学生が大人と同じように遵法意識が完璧なのだとしたら、今頃学業の成績は全員高いでしょうし、児童買春や低年齢での性行為・妊娠、飲酒、喫煙、薬物濫用などは起きていないでしょう。

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このまとめサイトは2016年のものです。

さて、それから4~5年経った現在、子どもを取り巻く世界はYouTubeやSNSなどによって一変しました。InstagramやTikTok、YouTubeなどによって、大人と全く同じ土俵で写真や動画を投稿できるようになりました。特にYouTuberは近年急増し、視聴者の目を引く文字&衝撃画像のサムネイル、興味を持たせるタイトル、そして映像内の演出やチャンネルという強制的なブランティング(投稿者が意識しなくても、チャンネルというくくりがその投稿者の総体を形作る)は他のメディアにはない奇抜な特徴です。

さらに、YouTuberはゲーム実況やお菓子のレビュー、その他楽しい企画で大金を得て生活を送る「仕事」と対等、もしくはそれ以上のものとなり、更にその中でもトップを走るHikakinTVやはじめしゃちょーが小中学生にウケると、次第に真似をしたくなるというのも子どものサガというものです。

そして生まれたのが、「ヒカキンチルドレン」と呼ばれる、ヒカキンを真似した動画投稿者です。


詳しくはこのニコニコ大百科の記事を読んでもらえればわかるかと思いますが、かなり辛辣なことが書かれています。

しかし、冷静に考えてみてください。
子どもがかっこいい大人に憧れないことなどあるでしょうか?むしろ憧れなくなることほど病理的なこともないように思います。
また、子どもが視聴者の目線やビジネス感覚、完璧な倫理観・法律理解、それらをひっくるめた動画制作など可能でしょうか?
そして、子どものこうした不完全性に対して、大人が徹底的に揚げ足取り、晒し、個人情報の特定、誹謗中傷をすることを正当化することなど出来るでしょうか?

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もちろん、子どもだからといって、著作権を破ったり、マナーの悪い行いをしていいわけはありません。
ただ、それを止めるのは他でもない大人であり、大人がそうした子どもを正しい道に導かず、徹底的に糾弾だけするというのは、なんというかズルで暴力な気がします。
これは邪推ですが、大人も不完全であり、そんな不完全で劣等感を抱いている大人が、自分よりも劣位にいる子どもと対等に戦って気を慰めているのではないかと思います。
この邪推には根拠があり、それは高齢者や知的障害者、統合失調症患者を叩くのと同じテンション(動画投稿サイトやSNSでモザイクなしの晒しを行うというもの)に感じるからです。こういう言い方は失礼かもしれませんが、運転技能や認知機能が衰えてくる高齢者の失敗に対して「老害」と言ったり、知的障害者を「池沼」、統合失調を「糖質」と呼ぶのは、どう考えても理不尽なことであり、そのような仕打ちをする動機はどこにあるのだろうと考えたときに、どうにもその高齢者、障害者などを貶める、おもちゃにする、八つ当たりすること以外の目的が思いつかないのです。そのように軽んじる性質は、子どもを叩く大人の構図と同じに見えてなりません。


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