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025 意味と環境の結びつき その1

 早いもので3月になりました、みなさんいかがお過ごしでしょうか.ぼくは春休みの計画を思うように実行できないまま一か月が経とうとしており、相変わらずじぶんが嫌になっています.まだ巻き返しはききますから、手洗いうがいと勉強をしっかりしたいと思います.

 今回は本の感想を書きます.瀬尾文彰氏の『意味の環境論』という本をたまたま知り、読み進めています.全9章からなる本書ですが、今回は1章に関して学んだこと、印象に残ったことを書いていきます.

タイトルの通り環境と意味について論じる本だと思われるのですが、これからは環境の時代になるとした上で、著者は環境論について3つの論点を示します.

1.物的世界と生きる主体をつなぐ「意味」を考える
2.その「意味」を対象ではなく主体の問題として捉える
3.人間も自然の生み出したものの1つであるという認識

上記の3点(最後の1点は別の著書で述べているらしいです)について考えるために、1章では私たちが環境と意味のどんな関係を生きてきたかについて、近代を参照しながら振り返っていきます.

 主体と客体

 世界が先にあってぼくたちが生きているのか、それともぼくたちがいて初めて世界があるのか.主語が大きくて書くのが恥ずかしいのですが、ぼくは今まで前者だと考えて疑いませんでした.生まれた順序がそうですし.しかしそれは違うようで、ぼくたちのいる「環境」はぼくたちがいて初めて成立しているというのです.逆に言えば、ぼくたちがいなければぼくたちの生きる世界は消滅すると著者は言います.そして環境と生きる主体の橋渡しをするのが「意味」の存在です.つまり、あなたが生きているのはあなたにとって意味のあるものから成立した世界だし、ウサギはウサギだけに見える主観的な世界が広がっていると.それぞれの主体によって意味付けされた世界で対象を認識しているということが理解できます.

意味からみた空間と形

対象が一様にある世界にぼくたちがいるのではなく、ぼくたちがいて初めて世界が成り立つことがなんとなくわかりました.では次に、ぼくたちを包んでいる空間ははどのように考えられるのでしょうか.著者は環境の問題を空間ではなく場所という言葉で捉えなおすのが良いと言います.物理学の論理上のフレームとしての「空間」ではなく、「なにかの場所」というように具体的に個別の性質を備えるものとして受け取られる、主体側からとらえる「場所」として考えようというのです.ここにも「意味」が登場します.著者はこう続けます.

個人が必要とするのは、単なる土地ではなくて場所、つまり、その場所にいれば心を開いて自分自身に戻ることがでいるという特殊な状況なのだということ、あるいはまた、あらゆる位置の判断がそこから開始さする拠点なのだということを忘れないでおこう.

 かたちについても同様です.円や四角形は、単に数学的な操作でうみだされたものではなく、昔は幾何学が意味的に捉えられていたというのです.円は永遠や無限といった印象と結びつき、魔法陣やゴシックの円窓に現れます.スポーツとかの円陣とかもその名残でしょうか.著者はこれらのかたちを生きている形態とし、幾何学の役割は生きている形態から不透明な意味の領域を切り捨てることだと述べています.
 難しいですが、かたちも空間も、ぼくたち主体がそれぞれの意味を通して見ることで、生き生きとしたものになるということでしょう.

近代はどう考えたか

 著者が繰り返し述べてきた主体による環境の意味付けですが、今までの歴史ではどのように考えられていたのかが気になるところです.そこで著者が引き合いに出すのが「機能主義」なのですが、この機能主義というのは、これまでの古代的な意味のマンネリ化を脱したいという社会の気分が「意味」と関係なく存在していた「機械」と結びついたといいます.古い意味から脱却するために、中立的な存在の機械を足掛かりにしたというのです.
 しかし、その後の歴史を見たらわかるように、機能主義は終わりを迎えます.なぜか.それは、これまでの古い意味を捨てるのと同時に、人間が意味なしに生きられないという事実を捨ててしまったことが原因だと著者は語ります.ハイデッガーによる「世界内存在」がそれまでの近代的な常識であった「主体と客体の分離」を批判したのも、住む機能を満たすためにそこに住む人間もある程度機械的に考えてしまった機能主義も、「意味」の不在が原因にあるようです.哲学も建築もまだまだ勉強中ですが、なんとなくリンクしているのが納得できました.

 ぼくたち側からの「意味づけ」によって世界はで成り立っているということが、すこしだけ理解できたように思います.そう考えると、建築家は意味づけられるような場所を設計する立場で、すごく崇高な立場であるように思います.めっちゃハードル高いです.
 2章以降も読み進め、noteを使って理解を定着させていきたいと思います.さすがに勘違いしているよとか、ご指摘ご感想お待ちしています.お優しい方ぜひお願いします.

ではまた.

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