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022 小説による、もの〈がたり〉づくり

 ご無沙汰しております.シタシマです.初めてぼくの記事を読まれる方はどうも.
 12月に始めたnoteも2か月目に突入しました.12月には18本書いたnoteでしたが、1月はまさかの3本のみと、更新ペースの低下っぷりに肩を落とすばかりです.もうすこしで提出ラッシュが終わりますんで、そしたらまたガンガン書いていきたいんですが、アウトプット癖がなくなるとインプットの質が落ちるのをひしひしと感じております.左から右へ垂れ流し状態です.ですので今日はリハビリもこめて、久しぶりに書こうと思います.

 忙しいとは言いましたが、寝る前に本を読む時間だけは確保していました.といっても学術書ではなく小説です.先月の終わりに

 父からは蓮見圭一氏による『水曜の朝、午前三時』を、
 母からは重松清氏の『とんび』を

それぞれ偶然同じタイミングでお勧めされ、どちらも読みました.どちらの小説も読了後にさわやかな気持ちになれ、とてもよかったです.それぞれの感想は後日個別にnoteで書くことにして、久しぶりに小説を手に取って感じたことを書いてゆきます.

言葉による物語り方

 小説は、大前提として言葉によって物語が進行していきます.映画をはじめとする映像作品とは異なり、そこに描かれる人物の具体的な姿はそれぞれの読者で異なり、共有されることはありません.「具体的な風景や人物の姿を想像する余地がある」点が、よく言われる小説の良さだと思います.確かにそうです.しかし、ぼくはそれよりも「作り手と物語の距離」の関係に面白さがあると思いました.具体的に言えば、小説には作者の癖が表れやすいように思うのです.
 比較対象として、映画について考えてみます.映画における「らしさ」はそれが脚本家の色が強いこともありますし、映像の構図や色使いに出る場合もあります.ほかにも、出演する役者に色がでることもあります.逆に言えば、監督や脚本家の意図が構図や脚本の随所に隠れているといえます.一方の小説家は、いわば「脚本一本勝負」です.作家の書いたセリフを演じる役者もいませんし、意図を伝えるカメラワークもありません.心情も景色もすべて言葉によって伝えねばなりません.だからこそ作者の意図が出やすいと、そう感じました.

言葉にならない思いをどう伝えるか

 言語化の壁.これはぼくをふくめ、多くの人が日々悩まされるのではないでしょうか.「何と言ったらよいかわからない」と頭を抱え、しまいには「むしろ言葉にするのさえもったいなくない?」と柄にもなく繊細そうなことをつぶやいてなあなあになることもしばしば.しかし物語を書くとは言語化できない繊細な思いを、言葉によって伝えることであり、そこに可能性が広がっているとも言えます.比喩を用いて、全く異なるけれど似たような感情が想像される場面を書いたり、否定を重ねて「〇〇ではない何か」とあいまいなまま留めておくこともできます.さらに「この気持ちはなんだろう」とわからなさを思っている自分を言葉によって描くことも可能です.
 そう考えたら言葉ってめちゃくちゃ豊かなことに気が付きます.どんなものにも姿を変えられます.小説家の苦労は計り知れませんが、作家独自の感性ですぐに消えてしまうような気持ちを捕まえるのは本当にすごいなと、小説を読みながら純粋に感動していました.

建築はどうか

 ぼくは一応建築学生なので、何でもかんでも無理して建築と関連させて考えねばなりません.建築は物語とどのような関連があるかといえば、現段階では、それこそ物語の舞台以上にはならないのではないか、と考えます.主人公の家であったり、敵のアジトであったり、好きな人と良く行った場所であったり、建築によって物語は描けないけれど、常に背景にあるのが建築であるように思います.
 ここで、確認しないといけないのはこれまでに物語と建築がどう語られてきたかを参照することです.過去を振り返ることです.最近では『人間と建築』という3名の建築家による論考や、『背景へのパースペクティブ』という背景の強度から建築を考えている方の論考が記憶に新しいかと思います.さらにさかのぼると、「出来事と建築」という語から小嶋一浩氏や原広司氏を通過して、哲学者のウィトゲンシュタインまでたどり着くようです.なんと奥深いことか...ぼくの頭でついていけるでしょうか.不安ですが、そういうことを考える楽しさを建築が持っていることは確かであり、それはぼくにも分かります.

もの〈がたり〉づくり

 久しぶりに小説を読んで感じたことを、そのままぶつけてみました.ものづくりとは具体的なモノの発生を伴うものとばかり思っていましたが、映画や小説だってものづくりであることを感じました.扱うものも人への届き方もてんでバラバラですが、人間の頭を使って外へ出すことはすべて「モノづくり」としてもいいように思います.それくらい「創作」の楽しさと難しさを感じました.
 また、純粋に読んだ小説が面白かったので、これからも時間を見つけて読んでいきたいと思います.みなさんのおすすめの小説、ぜひ教えてください.

久しぶりのnoteで長くなってしまいましたが、ここいらで失礼します.

ではまた.


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