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ワクチン特許停止がトランプ復権につながるかも

新型コロナウイルスに対する欧米各社のワクチン特許を停止して、生産量を上げて途上国に配布しやすくする、という動きがアメリカとフランスを中心に活発になってきました。製薬大手を抱えるドイツは反対していますが、どこまで抵抗出来るか微妙です。

しかし、特許停止による製薬企業への大打撃はどれほどのものになるでしょうか。確かにこのコロナ禍による治療薬やワクチンの販売によって、大手製薬会社は巨大な売上と利益を計上していますが、それは当然であってそういう危機的な状況のために製薬会社は存在します。

今回のワクチン開発にかけた費用だけではなく、普段から多種多様の新薬を開発するための設備や人員やノウハウを抱え込むのに必要な費用全てを回収してさらに利益を上げるところまでいかなければ、製薬会社は投資家から無視されてしまいます。

だからこその特許なのですが、途上国支援というヒューマニズムただ一つの理由だけで特許を停止されて、他の製薬会社が好き勝手に製造できるようになれば、もはや新薬を開発するメリットはどこの会社にも存在しません。いざとなったら停止される特許など何の価値もありません。

次に今回のコロナ禍並の世界的な感染症が流行した時に、また特許を停止されるかも知れないと思った製薬会社が、新薬・ワクチンを多額の費用をかけて開発するでしょうか?

どこかの誰かが勝手に作ってくれる特許を、政府が停止してくれてから後乗りで製造すれば確実に利益を出せます。

しかし、絵本に出てくる小人さんたちが、みんなが寝ている夜中に新薬を開発してくれる未来など存在しません。

欧米各国のトップクラスの製薬会社に比べると有効性が低いワクチンしか製造できない、中国やロシアの実質的な国有企業による新薬に先進国も頼らざるを得ない未来だけが存在することになります。

ヒューマニズムを旗印に資本主義を否定したら、後は無気力で新規開発できない企業が残ります。それは図らずもかつてのソ連や中国が証明しました。

アメリカとフランスが自由を否定してロシアと中国が得をするという未来予測は、ジョークにしてはエスプリが効きすぎでしょう。

もちろん、途上国支援は大切です。何もしなければ、ロシアと中国が国策で途上国に大量のワクチンを提供して影響力を増大させるだけです。

今あるCOVAXか、あるいはWHOか別の枠組みでもいいので何らかの形で資金を特許を持つ製薬会社にインセンティブとして渡せばいいのではないかと思います。

そんな金は無いと言う人もいるかも知れませんが、特許停止はその同額を製薬会社に無心しているも同然です。製薬会社だけが損をする取引は悪手でしょう。

もしかしたら、特許停止はあくまでブラフであって、水面下では途上国へのワクチンは格安にして、その代わりに何か別のところで利益供与するという密約を、欧米各国政府と製薬会社で交渉中なのかも知れません。それだったら特許停止をチラつかせるのは分かります。

しかし実際に特許停止が実行されると、ブラフや密約交渉があってもなくても、製薬業界による政府へのロビイングの失敗であることは間違いありません。これに懲りた医薬品業界は、多額の資金を献金するようになるでしょう。ただし、そのマネーの行き先はアメリカではバイデン政権・民主党政権ではなく、アメリカファーストを掲げるトランプやそのシンパに向かうはずです。

硬軟交えた交渉を行う、清濁併せ呑む器量があるのならいいのですが、ただ大企業を締め付けるだけだとどう考えても大企業は相手側に走ると思うのですが、あまり先のことは考えないんでしょうかね。

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