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バブル景気と好景気

 アベノミクスと称される一連の経済・財政政策が始まってからおよそ6年が経過しました。各種経済指標では好景気として現れていますが、世間的には「景気が良い」という感触を持っている人は少ないようです。

 一口に「景気が良い」「景気が悪い」と言っても、それをどうやって証明するのか、というと結局は数字で表すしかありません。そして景気動向を示す数字では、戦後最長とか言われていますが、アンケート調査などでは景気が良いと答える人は少ないです。正確に言うと、好景気の恩恵を被っていると考えている人が少ないということです。

 今の時代が好景気なのかそうではないのか、というのはお偉いさん方がが散々に議論しているのでそこに立ち入るつもりはありませんが、そもそも「好景気とは何か」という認識のところで、世間一般の共通理解がそれほど進んでいないのではないか、という疑問があります。

 今の若者世代は、産まれたときからバブル景気の後遺症による失われた「10年」「20年」のまっただ中にあり、成長する間も湯水のごとくにお金を使える状況にある人なんてほぼいないでしょう。
 今の中年世代は、子どもや若い頃にバブル景気を経験しています。そして自分がお金を稼いで使う段になったら長期間の不景気に見舞われました。
 今の高齢世代は、中年の頃にバブル景気を経験しました。そしてその前の70年代に2度のオイルショックを経験し、子どもの頃に高度経済成長期を体験しています。
 つまり、現在の日本人にとって、好景気の記憶がバブル景気しかほとんど残っていないわけです。

 日本経済にとって、直近の好景気というのがバブル景気だったわけですが、しかしバブル経済を本来の好景気と呼ぶのは無理があります。投資や投機が過熱して正常な経済状態では無くなったわけですから、二度とバブルは経験しないように注意しないといけないはずです。そして実際に、バブル崩壊から30年近く経ちますがそのような状況には陥っていません。好景気は良いけどバブルは駄目、というのは世界中の政府と中央銀行が揃って持っている認識だと思います。

 バブル景気の頃は一万円札を振りかざしてタクシーを止めていた、という逸話があります。そして、日本史の教科書などでよく出てくる、靴を探す女性のためにお札を燃やして明るくする成金の絵がありますが、似たような感じだと思います。あれは第一次世界大戦の時に儲かってしょうがなかった事業家を描いていますが、大戦終了後には当然ながら大きな不況に見舞われました。ちないに、大戦バブル終了後の十数年後には世界恐慌が起こりさらに大変なことになりましたが、同じくバブル崩壊後の十数年後にリーマンショックが起きています。
 それはともかく、バブル景気と比べて現時点での指標上の好景気を実感しづらいのは、デフレが続いているのと可処分所得が減っていることなどがおそらく大きな理由でしょうが、そもそも今の日本人の大半が正常な好景気の記憶が無いことも一つの理由ではないでしょうか。指標上は好景気でも、バブル景気ほどではなく好景気の実感がない、という状態です。

 これからの日本は人口が減り続けます。人口が減る中で経済状況を保ち続けるのは楽なことではありません。逆に言うと、人口が増え続ける状態では経済は好転しやすいのです。いわゆる人口ボーナスです。
 人口ボーナスをこれからの日本が享受する可能性は万に一つありません。可能だとしたら大規模に移民を受け入れることですが、数千万人規模で受け入れられますかね? 事の良し悪しはともかく個人的には色んな理由で絶対無理だと思います。
 人口を減らしながら経済を維持し続けるというのは事実上の好景気みたいなものだと思いますが、果たしてそれが可能なのかどうかという観点での考察をもうちょっと増やしてもいいのではないでしょうか。

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