歴史を学んだ後に待っている、歴史を考える面白さ

比較文化学・比較文化論というのは新しい学問です。比較文化学が生まれたのは20世紀ですので他の学問に比べると新しい、ということですが、何かと何かの違いは何だろう、というのは高尚な学問のレベルに限ったことではなく、日常の疑問として誰もが持つものでしょう。それは文系の学問だけではなく理屈としては理系の学問でも使える考え方でしょうし、生きる上でも必要な考え方でもあります。

さて、日本では19世紀中頃から東洋と西洋という概念が生まれ、それぞれを比較して様々な分野において検討してきました。現代の歴史学や社会学などからみれば、「東洋」も「西洋」ももっと中身は複雑かつ多様であり、また、そもそも世界は「東洋」と「西洋」だけで分けられるものでもないので、あまり顧みられることもない考え方です。

それでも、単なる二元論的な視野狭窄に陥らないのであれば、AとBを比較して似ている点と違う点を考えてみる、というのはたいてい興味深いものです。

以前にこのnoteで、覚える前に体系的に学ぶ事が必要だと書きましたが、学んだ後のやることとしては考えることがあります。

歴史の科目でいうと、日本史なり世界史なりを学び、一通り覚えた後、本当であればそこで歴史や社会や国家間の関係性などを考える時間があればいいと思います。

最初の内は興味を引くために例えば人気のある中国の三国志の時代と、日本の戦国時代を比較してみるとか。
・後世の人から見て好き嫌いの激しい曹操と織田信長
・その二人の権力を受け継いで統一した司馬炎(正確には違いますが)と豊臣秀吉
・またその二人の傀儡にされた後漢献帝と足利義昭、後漢王朝と室町幕府
といった比較はとっかかりやすいのではないでしょうか。

あるいは、古代中国の春秋戦国時代とヨーロッパのウェストファリア体制も比較してみましょう。

・晋と楚の二大国と、カトリックとプロテスタント
・間の国がそれぞれとくっついたり離れたりしていたこと
・中国は最終的に秦そして漢が統一したが、ヨーロッパは分裂し続けてようやくEUが出来た

知識的には深くなってしまいますが、新たに学びながら考えるのもいいでしょう。古代ローマ帝国と秦漢の帝国、そしてその後に出来たフランク王国と隋唐帝国の比較なんかも面白そうです。

日本とイギリスはどちらも島国であり、近くにある大陸には強大な国家・強力な文化が存在して強い影響を受けてきた歴史があります。日本語は漢字に大きな影響を受けましたし、英語はラテン語・フランス語・ドイツ語起源の言葉だらけです。また、国家として成り立った後は大陸の強大国に支配されることがなく歴史が続いています(イギリスは王朝の交代がありましたが)。イギリスはフランス・スペイン・ドイツとは何度も戦ってきましたし、日本は白村江の戦い、刀伊の入寇、元寇、文禄慶長の役、そして明治以降の大陸進出がありました。そして今ではどちらも間にあるアメリカ合衆国の強力な同盟国になっています。こういった長期間を一気に考えてみるのも頭の体操になります。

もっと人類学的な方に寄せて考えてみてもいいでしょう。

・ヨーロッパから南北アメリカ大陸への移住者が現地に伝染病をもたらしたことで先住民が多く死んだが、なぜ逆方向への致命的な伝染病はもたらされなかったか(梅毒なんかはありましたが)。

・アフリカの暑い地域から生まれた、今の人類につながるヒトはなぜ世界中に散らばったか。それこそ全く気候の異なる、動植物が少なく生活するのが困難な寒い地域にも移り住んだのはなぜか。暑い地域に住むことと寒い地域に住むことのメリット・デメリットは?

歴史という概念から離れているかも知れませんが、こういったすぐに答えが出ない問題を考えるのは、答えを出そうとする過程で得る経験が重要になってきます。

知らないことを調べ、仮説を組み立てて検証し、他人の批評を受けて考え直し、また他人の意見を批評することでさらに自分の考えも深まります。

個人的には今の歴史の勉強は細かいことが多すぎて、大局的な歴史観を考えるところまで行かないと思っています。覚える内容を少し減らしてでも、考える時間を作って欲しいです。別にディベートのような形にする必要も無いでしょう。レポートを発表し合うだけでもいいはずです。自分とは違う考え方に接する、というのは歴史に限らずその後の人生において大きな影響を与えるはずですから。

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