IEとEdgeとGoogleChromeと。

マイクロソフト社がChromium版のEdgeのプレビュー版を公開しましたね。
https://www.microsoftedgeinsider.com/en-us/

試してみましたが、すでにまあまあ使えるようです。現時点ではWindows10でしか使えませんが、Chromiumベースですので他のWindowsでも使えるようになるはずですし、macOSでもリリースする可能性もあるでしょう。

「Chromium」ベースの「Edge」、初のプレビュー版がリリース
https://japan.cnet.com/article/35135453/

マイクロソフトとしては前世紀の遺物とも言えるInternetExplorer(以下、IE)を廃止したいと思ってEdgeをWindows10限定でリリースしたものの、あまり利用者が増えず、Edgeでちゃんと利用出来ないウェブサービスなどもある(開発者がEdgeに合わせてくれない)ので、EdgeをChromiumベースに移行して利用者を増やすと同時に、IE利用者とIEオンリーのウェブページを消し去りたいことでしょう。

1990年代の中頃のInternetExplorerとNetscapeNavigatorのシェア争いを覚えている年寄りとしては、ちょっと感慨深いものもあります。Netscapeなんて有料でパッケージ販売していましたからねえ。

しかし、日本でも官公庁の申請関連のページや、銀行の法人向けネットバンキングのページでは未だにIEのみ利用可としているところがまだまだ残っています。古い仕組みで動いているソフトウェアはセキュリティ的に問題がありますから、作った側のマイクロソフトが「もうIEは使わないでくれ」と結構強めに声を出していますが、まだまだ状況は変わらないようです。

マイクロソフト、企業にInternet Explorerの使用をやめるよう要請。「IEは技術的負債もたらす」
https://japanese.engadget.com/2019/02/08/internet-explorer-ie/

IEにこんなにこだわっているのは日本だけじゃないのか、と思っていましたが、こちらの記事によるとアメリカでも似たような困ったページはあるみたいですね。

Chromium Edgeは一般ユーザーが利用する価値があるのか (2/2)
https://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1904/12/news029_2.html

 特定のサービスが特定のブラウザ環境を要求する問題で、筆者が2018年に利用した米国のビザ申請ページの場合、申請書をオンライン登録する作業ではIE11またはChrome 58以上のブラウザ環境が必須で、このためにChromeを利用している。加えて、本人写真をアップロードするツールに至っては「IEのみ」という条件付きであり、久々にIEを起動することになった。Edgeのみで作業できる日がくるのかは不明だが、世間の多くのユーザーがChromeとIEに依存している限り、こうした制限付きサイトでの苦難は続くと思われる。

IEが使えないmacを使っている人も今はけっこういますし、そもそもパソコンを持たずスマホやタブレットで何でもこなしている人もいる時代なのに、なんでなんでしょうね。

マイナンバー制度について管理国家がどうのこうのとか情報漏洩がどうのこうのとか言っている人達にも、そもそもIEオンリーのサイトのヤバさを問題視して欲しいところです。同じく、議員や官僚や銀行幹部とかにも現実を直視してすぐに改善して欲しいところです。

ただ、もしかするとそもそも「ブラウザって何?」というレベルのITリテラシーの人達も結構上層部にいるのかもしれないですね。

ちなみに、レンダリングエンジンやChromiumベースとはどういうことか、ということをあまりパソコンなどに詳しくない人向けの説明を先日書く機会があったので、ここに一部修正の上、載せてみます。

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ウェブブラウザの仕組みから説明いたします。

いわゆるホームページというのは、文字(ソースコード)と画像で作られています。
ソースコードというのは、

(Yahoo!ジャパンのトップページのソース冒頭です)
<!DOCTYPE HTML PUBLIC "-//W3C//DTD HTML 4.01 Transitional//EN" "http://www.w3.org/TR/html4/loose.dtd">
<html lang="ja">
<head>
<link rel="icon" sizes="any" mask href="//s.yimg.jp/l/cmn/svi/y.svg">
<meta name="theme-color" content="#FF0033">
<link rel="alternate icon" type="image/x-icon" href="/favicon.ico">
<meta http-equiv="content-type" content="text/html; charset=utf-8">
<meta http-equiv="content-style-type" content="text/css">
<meta http-equiv="content-script-type" content="text/javascript">

こういった、記号・アルファベットで構成されています。

決まった規則で記号・アルファベットの羅列を読み込んで解釈して、作成者の意図したとおりに適切に表示するのがウェブブラウザです。
(ホームページのファイルをメモ帳で開くと上記のような文字の羅列が出てきます)

この「決まった規則」をどのように「解釈」して「表示」するか、ということがブラウザによって微妙に異なります。ですので、一部のサービスはGoogleChromeのみ正常に表示され、InternetExplorerやFirefoxなどでは正常に利用出来ない、ということが起こりえます。

もちろん、規則・解釈・表示について基本的なルールは標準化団体によって
策定されていて、どのブラウザでどのホームページでも同じように表示されるということになっていますが、最新の技術など、ルールとして標準化されていない内容が含まれるページを表示するときに、ブラウザによって差が出ます。

この表示に関わる機能を「レンダリングエンジン」と呼びます。
レンダリングエンジンは現在数種類あり、
GoogleChromeとFirefoxとEdgeとIEとSafariではそれぞれエンジンが異なります。

そして「Chromiumベース」とはどういうことかというと、
ChromiumというのがGoogleが中心になり、GoogleChromeの基礎部分を
構築するプロジェクトのことです。
Chromiumはレンダリングエンジンにホームページを見るのに必要な機能を追加してGoogleChromeの基礎部分を作っています。

今度のEdgeプレビュー版は、この「基礎部分」を流用して、ちゃんとしたウェブブラウザを作成した、というものになります。

GoogleChromeと基礎部分が共通ですので、GoogleChromeでないとちゃんと表示されないページも同じように表示されるということになります。

ChromiumベースのウェブブラウザはGoogleChrome以外にも
OperaやVivaldiなどがあります。

話がややこしくなってしまいましたが、自動車に例えると

レンダリングエンジン・・・自動車のエンジン
Chromiumベース・・・自動車のシャーシ部分
GoogleChrome(あるいはEdge)・・・自動車のボディやシートなど

といった感じでしょうか。

今回のEdgeプレビュー版は、トヨタのカローラのシャーシを使って、日産がボディなど外側だけ作った自動車と考えてもらえれば分かりやすいかも知れません。

EdgeがChromiumベースになる大きな理由としては、HTMLを利用したサービスの開発者が、ブラウザ毎の差異による問題を防ぐのが大変なので、どうしてもシェアが大きいGoogleChromeに寄せてホームページやウェブサービスを作りがちなため、かえってEdgeでちゃんと動作しない、ということがあるためだと思います。

あと、GoogleChromeの動作が重いのは、起動するとパソコンのメモリを
目一杯確保してしまうという作りになっているからです。
メモリを確保しているGoogleChrome上では快適に動作するためですが、
メモリが少ないPCの場合、HDDへのスワップ(メモリの内容の一部をHDDに移す)が
発生して、HDDの遅さに引っ張られてパソコンの動作自体が重くなる、
という状態になります。

メモリが多く、HDDではなくSSDを積んでいるPCであれば
GoogleChromeでもそれほど遅くはなりません。
Chromiumベースでも他のブラウザ(Operaなど)ならメモリの使い方が異なるので
それほど重くないはずです。

また自動車に例えると、
同じシャーシ(Chromiumベース)を使っているけど、
ボディが直方体に近くて物を一杯積めるけど風の抵抗を受けやすい・・・GoogleChrome
ボディが流線型に近く風の抵抗を受けにくいけどあまり物を積めない・・・Operaなど
と考えてもらえますといいかと思います。
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不正確というかもっと細かく伝えたい部分はありますが、あくまでIT用語もよく知らない人向けなのでこんなもんかなとも思います。もし人から説明を求められたら参考にしてみてはいかがでしょうか?


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