ロヒンギャ・ミャンマー・ウイグル・中国

ミャンマーによるロヒンギャ迫害がジェノサイドであるとガンビアが訴え、それを受けた国際司法裁判所がロヒンギャの人々を守る措置をミャンマーに命じました。

国際司法裁、ミャンマーにロヒンギャ迫害停止を命令
http://www.asahi.com/international/reuters/CRWKBN1ZN0BF.html

これはあくまで仮処分決定であって、裁判の判決として虐殺だと認めたわけではないですが、数年かかる裁判の結果を待つと迫害が進んでしまうとの判断ですので、ある程度は結果が見えているような気がします。

このロヒンギャ問題については、おそらくミャンマーで最も有名な政治家であるアウンサンスーチー女史にも非難が浴びせられています。しかし、彼女自身にとっても難しいのは、ロヒンギャ(ミャンマー側はベンガル人と呼称)に非常に厳しい対応を取ることを、ミャンマー国民の大半が支持していることだと思います。

ミャンマー国民がロヒンギャを敵視している以上、国際社会の要求に応じる形でアウンサンスーチーがロヒンギャ迫害停止を国民や軍に訴えた場合、彼女自身の立場にとって悪影響があるかも知れませんし、その地位を追われることもあり得えます。

ノーベル平和賞受賞者としてどうなのか、という非難もありますが、そもそも別にその受賞理由がロヒンギャ保護だったわけではありません。もちろん、軍政に対する抵抗が受賞理由でしたから、その軍がロヒンギャ迫害をしているのであれば軍と戦うべきだ、というのが西側社会の主張なのかも知れませんが、ノーベル平和賞(あるいは西欧の大学の学位)を特定の政治抗争の原因や引き金にしてしまうと、またミャンマーに軍政が戻りかねないのではないかと懸念します。

今回の国際司法裁判所への訴えは、イスラム教徒であるロヒンギャを救うために、イスラム諸国を代表してガンビアが訴訟を起こしたわけですが、あるいみイスラム教と仏教の争いとなりかねません。仏教側は特に国際的な繋がりがあるわけではないので過激化した代理戦争となることは無いでしょうけれど、別の宗教あるいはミャンマーよりも大きな国であれば外交上の摩擦にもなるでしょう。

同じくイスラム教徒であるウイグル族への中国政府による迫害については、イスラム諸国は特に具体的な対抗措置は取っていません。この辺はミャンマーと中国の国際的な影響力の違いによるものでしょう。はっきり言うと中国マネーに依存しているイスラム諸国は中国にいるウイグル族を見捨てているとも言えます。

その中国は、ロヒンギャへの支援も行っているそうです。

焦点:終わらぬロヒンギャ難民危機、積極支援する中国の野心
https://jp.reuters.com/article/myanmar-rohingya-china-idJPKBN1ZL10M

記事中にもあるとおり、野心というか見返りを求めての支援なのでしょうけれど、もしかすると、「経済発展さえすれば問題は解決する」という、今の中国の思想も表しているのかも知れません。

経済発展は、中国国内においては貧困層の収入の底上げや農村戸籍所有者の出稼ぎ需要をもたらし、一時的には政府への不満も減ります。ウイグル・モンゴル・チベットなどの各自治区でも経済発展の恩恵を受けている層は反政府的な活動を減らしているでしょう。もちろん実際には解決するわけではなく、問題の顕在化・深刻化が先送りされるだけです。

ロヒンギャにしてもウイグルにしても、虐殺・迫害とそれへの非難ということではなく、あくまで国際社会における力関係を反映させた対策しか取れないのは、内政不干渉という大原則があるとはいえ残念なことです。

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