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移動することが難しかった時代から、移動から戻ることが難しい時代へ

本日予定されていた、アビスパ福岡対ガンバ大阪の試合は、福岡のトップチームでコロナ感染者が続出して試合に必要なメンバーが足りず、開催中止となりました。

水曜日のルヴァンカップでGKが試合後半にフィールドプレーヤーとして出てくる事態になっていたので、まあ容易に想像できたことではありますが、実際に福岡まで遠征してアウェイゲームを楽しもうと思っていたガンバサポにとっては、試合観戦抜きの福岡観光と言うことになってしまいました。

木曜の試合中止発表でしたので、福岡への旅行計画をキャンセルした人もいるでしょうけれど、キャンセル料やその他予定のことを考えて福岡に行った人には楽しんでもらいたいものです。

4月の清水戦、5月の鳥栖戦、6月の札幌戦と、3ヶ月連続でアウェイ戦に観光を兼ねて観に行っていた私としては、結果としては幸運だったのだなと思えます。この感染状況が収まるまではアウェイ戦はおろかホームゲームもちょっと観に行くには厳しいと個人的には感じています。

いずれは感染も収まってくるのでしょうけれど、それまではこんな感じで直前の試合中止は起こり続けるでしょう。特にアウェイ戦では何時間も掛けて、新幹線や飛行機で移動した上で観戦するケースも多いので、試合中止の精神的・経済的・肉体的なダメージが大きくなってしまいます。

選手・スタッフでの感染が試合中止につながるということは、それに伴いアウェイ戦観戦旅行を決めていたサポーターにとってはその計画自体がリスクを持っていることになります。時間やお金が無限にある人なら良いでしょうけれど、そうでなければアウェイ戦を観に行くのを決めるのも難しい状況です。

しかも、観に行く自分だってコロナと無縁ではありません。出発時は問題なくても、旅行先で発熱・発症して調べたら陽性だった、ということになれば、帰宅もままなりません。新幹線だと黙って乗って帰る人もいるかも知れませんが、飛行機では不可能です。第一、移動出来ないほどの体調不良になればその場で入院か隔離ということになります。

そこにさらにゲリラ豪雨、線状降水帯、台風などの自然災害が昨今では旅先での足止めの要因になります。もちろん台風被害は昔からありますし、昔の方が被害者数は多かったですが、移動・帰宅の予定は今の方がタイトでしょう。高速に移動出来る手段が増えたので、何事も無ければ遠方でもすぐに戻ってこれるとして予定を組むのも当然です。旅から帰ってくるだけでも場合によっては困難です。

旅行すること自体がリスクであり困難なものであることを意識付けられる現代ですが、そもそも、旅という、自分が今いる場所から遠く離れて移動するという行為に危険が存在するのはごく自然なことです。

旅行や長距離移動というのは今の時代では娯楽の一つとなりましたが、そうなったのは主に近代以降の話です。それまでは旅というのは過酷なものでした。観光や娯楽のための移動ではなく、移住・流浪・逃亡あるいは商売のために長距離を移動するのです。

近代国家が生まれ、国境が画定し、国民という概念が出来たことで旅券(パスポート)が必要となりました。その代わり、移動先での自分の身分を出身国(旅券発給国)が保証してくれることになり、身の安全はそれ以前よりもはるかに守られるようになりました。

かつては手段として、自分の足か、馬などの動物に乗るか、船での移動が当然でしたが、近代からは鉄道、車、飛行機という交通手段が増え、安全かつ高速に遠くまで移動することが楽になり、お金と時間さえあれば誰でも地球の裏側まで旅行できます。

自宅あるいは自国から目的地まで行くことがまず大変だった時代から、無事に自国・自宅まで戻ってくることが困難になり得る時代に変わってきたとも言えます。中国のように旅先でスパイ扱いされて拘束される可能性もありますし、テロに遭う危険性(これは日本でもあり得ますが)だってあります。

移動手段も過酷だったのは昔の話で、今では滞在先から戻ることに幸運も必要となってしまいました。

「家に帰るまでが遠足だ」という言葉は、子どもに限った話ではないのですよね。

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