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営業は売上が命?~数字至上主義の弊害~

当noteでは、筆者(これまでのキャリア:証券営業⇒求人広告営業⇒人事コンサルタント)の実体験を踏まえて、営業職の評価を契約数や売上高といった“数字”だけに基づいて行った場合、組織にどのような影響が発生するのかを説明しています。
 
・営業部門の目標達成率を向上させるために定量面の評価比重を高めたい
・モチベーション向上のため、営業職にインセンティブ制度を導入したい
・数字至上主義の社風によって事業規模を拡大してきたが、今後は部下育成や法令順守の意識を従業員に芽生えさせたい
という思いを抱いている経営者様、人事担当者様向けの内容となっています。

営業職における「数字至上主義」とは?

営業職における「数字至上主義」とは、成果の指標として売上や利益などの数字を最も重視する考え方です。この考え方では、数字が目標達成の主要な基準となり、営業活動の成功は売上高や契約数によって測定されます。
 
「数字至上主義」は、目標達成が明確で競争が激しい業界や職種で採用されます。業界でいえば、金融業界、保険業界、人材紹介業界、不動産業界、小売業界などで多いのではないでしょうか。また、営業やマーケティングなどの職種では、売上高や市場シェアといった具体的な数値目標を設定することが可能なため、「数字至上主義」を採用することが多くなっています。
 
「数字至上主義」はわかりやすく、活用されやすい考え方です。
「数字至上主義」の会社では「数字は人格」となることもあり、社内序列の基準にもなりがちです。
もしあなたが数字をあげられているのであれば誇らしく活躍できるでしょう。
 
「数字至上主義」を導入することで得られる主なメリットは、短期的な成果の創出です。
数字によるわかりやすい評価は、毎月や四半期ごとに設定された売上や利益の目標を、従業員に達成させる原動力になります。そのため、従業員は限られたリソース(時間、人員、予算など)を最大限に活用して、短期間のうちに目標を達成しようと努力します。さらに、目標達成に向けての競争や、達成に応じたシンプルな報酬制度が従業員のモチベーションを高め、目標達成への意識を強化する効果があります。

「数字至上主義」の弊害

「数字至上主義」は短期的なパフォーマンスの測定が容易であり、従業員のモチベーション向上や目標必達の意識を根付かせることができます。
しかしその一方、数字をあげられない者にとってはつらい状況をつくってしまいます。私が見ていた中でも、数字を挙げられない営業職は肩身が狭く、時には上司の“詰め”の対象となり、悲惨なことになっていました。
より本質的には、企業の長期的な発展に悪影響を及ぼす可能性があります。特に、短期目標への偏重による機会損失、組織内コミュニケーションの低下、コンプライアンス違反などは重大な問題点です。これらの弊害は、企業の持続可能な成長と社会的責任に対するリスクをもたらし、結果的に企業の信頼性やブランド価値にも悪影響を及ぼす可能性があります。

長期的な機会損失

数字至上主義では、各月や四半期ごとの売上や利益の達成が重視される傾向にあるため、従業員は短期的な成果を優先します。これにより、長期的な成長や革新的な取り組みへの投資が後回しにされ、最終的には企業の将来的な成長機会を逃す原因となる可能性があります。筆者が証券会社に勤めていた頃、短期間で数字を挙げるために顧客の意向を無視して、手数料が高い商品ばかりを提案する上司がいました。相場環境を考慮することなく提案をしているため、その後大損が生じ、複数の顧客が資金を撤退していました。 

チームワークやコミュニケーションレベルの低下

数値目標の追求が従業員間の競争を促進し、協力よりも個人の成果を優先する文化を生み出すことがあります。これにより、チームワークや組織内のオープンなコミュニケーションが妨げられ、結果として全体の効率性や創造性が低下する可能性があります。

コンプライアンス違反の可能性

売上や利益の目標達成に対する強いプレッシャーは、従業員に不適切な行動を促す可能性があります。これにより、不正行為やコンプライアンス違反が発生するリスクが高まります。筆者が求人広告会社に勤めていた頃、昇進のためになんとしてでも数字を上げようとする従業員がいました。その従業員は、いわゆる“自爆営業”として、自分の家族が経営する事業の求人広告費を自腹で支払い、自身の数字として計上していました。

数字とプロセスとのバランス評価が営業力を高める

「数字至上主義」による弊害を発生させないためにも、営業職の評価は数値目標の達成だけではなく、顧客満足度やチームワーク、法令順守などを組み合わせて、より包括的に実施する必要があります。

顧客満足度

顧客からのフィードバックや満足度は、営業職のパフォーマンスを測るための重要な指標です。顧客のニーズに応え、問題を効果的に解決する能力は、営業の成功に不可欠です。

チームワーク

個人の成果だけでなく、チーム内での協力や他の部門との連携を通じた貢献も評価の対象とすべきです。営業は個人だけでなくチームの努力によるものであり、その貢献を認めることが大切です。

倫理的かつ法的な基準の遵守

営業活動において法的規制や倫理基準の遵守も評価の重要な要素です。これは企業の信頼性と評判を保つ上で不可欠です。

個人の成長と能力開発

営業スキルや関連知識の向上、資格取得に対する取り組みも評価すべきです。これにより、顧客へ提供するサービスの質が向上します。

この記事のまとめ

営業職である以上、数字を求められることは当然です。
しかし、数字だけでなく、上記のような要素を少しでも組み合わせた評価システムを構築することで、短期的な成果だけでなく、長期的な企業の成長が見込めるでしょう。