上場企業の人事施策まとめてみた #0004 日本電信電話(NTT)
こんにちは。本日は、日本電信電話(NTT)の人事施策についてまとめました。2023年9月の統合報告書と各種サイトをみてまとめました。
(あまりにも長くなりすぎて6,000字になってしまったので、女性活躍推進企業DBをまとめるのはまた今度の機会にします!)
統合報告書は十分まとまっており、数値の開示があるという点や、具体の取り組みがある点でわかりやすいものでした。さらに、多様な働き方についてはかなり進んでおり、非常に良好な多様な人材を生かすための取り組みが進んでいると感じました。
リスク・リスク対応についても記載されており、資本市場との対話ができている印象を受けました。
中期経営戦略のなかで、推進項目として、以下のような事項をあげています。その旗の下に、取り組みをおこなっているので、戦略からみていきましょう。
1 人材戦略
自律的なキャリア形成への支援強化ということで、価値の源泉は人であることに言及し、従業員体験を重視していくとしています。
自律的なキャリア形成の実現に向けて、以下のような取り組みをしていると述べています。
たしかに、「人材マネジメント」を従業員側から見ればこうなりますね。
大きく目指している方向性はいいなと思いました。
2 各種制度
人事制度の見直し
経営戦略と人事の連動性を高めるために、2021年10月から全管理職にジョブ型の人事制度を導入しました。
年次・年功から脱却し、従来の適材適所から適所適材へと転換を図り、業績と報酬がより連動する仕組みにしました。
これにより、ジョブベースでの人材配置を可能にし、チャレンジ機会の創出を図っています。
一般社員については、本年4月に新たな人事給与制度を導入しています。外部市場との結びつきを意識して、18の専門分野(営業・IT・開発・・・)を設け、分野ごとに求められる専門性・行動レベルを明確にしたグレードを設定しました。
いわゆるミッショングレード制ですね。
グレードに基づくことで、高い成果を上げた社員の適正な評価や、昇格において最短年数を設けず、専門性に応じて昇格していく仕組みにできます。
これらの専門性やスキルを獲得するために、研修メニューも拡充しています。
社外資格・専門スキルの獲得から、ファシリテーションなどの共通スキルなど、広く研修メニューを準備しています。
こういったグレード制の導入で、専門性を高めることが評価されるわけですから、「自分はこうしたい」というようなキャリア自律・デザインが求められます。
キャリアコンサルタントの配置や、上長へのキャリアコンサルティング教育という形で、キャリアデザインのサポートも行なっています。うらやましい。実態はどうかわからないけれど・・・
成長支援:多彩なキャリアパス(多様な採用・雇用形態)・ダブルワーク
多様な採用活動を行っており、新卒採用だけではなく経験者採用も積極的に行っています。2023年度30%という目標を掲げて取り組んできましたが、2022年度実績は40.7%と目標を大きく上回る結果となりました。
また、新卒採用・経験者採用ともに採用時のグレード設定を画一的なグレードとせず、社員の専門性や能力を勘案したグレード設定を行っています。
研究者の採用も力をいれており、このようにトップクラスの研究者をフェロー・上席特別研究員という形で処遇しています。
さらに、社内副業(ダブルワーク)を推進しています。多様で複線的なキャリアパスの実現に、社内副業は有効そうですね。
勤務時間の最大2割を他組織の業務で研修として参加することを可能にしています。どこまでできるのかはわからないですが、営業・人事でもpythonスキルがある程度あって、それを活かしていきたい、業務上優位性があるところまでもっていきたいみたいな人材によさそうですね。
多様な働き方・働く環境整備
ここはかなり重点的に記載されており、さまざまな人材が働きやすい環境を形成できている(もしくはその意志が強く見える)といえそうです。
取り組みの目的について、持続的な成長を目指し、外部環境変化に対応し、イノベーションを創出するために、多様な人材が活躍する組織へと変革する必要があるとしていました。
女性役員比率等については目標値を設定しており、2023/06期女性役員比率は21.0%でした。
2022年度は女性新任管理者登用率(新たに管理職になった女性の割合)は29.7%、女性管理者比率は10.4%でした。
さすがにまだまだ途上ですね・・・ただ、新任管理者登用率に改善のきざしがみられるのはいいことで、今後最低でも30%がキープできるかが鍵になってくるのではないでしょうか。
とはいえ30%ということで、管理職になるまでに辞めてしまう女性のことを考えていく必要がありそうです。
そして、男女賃金の差異ですね。もちろんですが性別による賃金差異はないとしていて、背景要因として、以下のように述べています。
2022年度賃金差異
全体的に平均よりほんの少しましですが、管理職・非管理職をざっくりならした数値より正規雇用全体が低いのはなぜなんだ・・・。
管理者の賃金差異はそんなになく、ここは星4つみたいな数値でしょう。
さらに障害者雇用について見ると、障がい者雇用率は2.51%で、約4,000人が働いています。
そのうち約1,000人は特例子会社で働き、Webアクセシビリティ診断、リサイクル紙製品製造、オフィスマッサージ、地域連携の農業や清掃事業などを行っています。
さらに、NTTアートコンテストや遠隔操作型ロボット「OriHime」を活用した取組みも推進しています。
LGBTQに関する記述もされており、理解促進のため、管理者向け研修やALLY会を実施し、「TOKYO RAINBOW PRIDE」や「Diversity Career Forum」にも参加しています。2018年から同性パートナーにも配偶者と同等の制度を適用しています。さらに、任意団体work with Prideの「PRIDE指標2022」で、NTTグループ24社が全指標を達成し、ゴールドを受賞しました。
そして、育児・介護・治療との両立です。家庭・育児だけではないおよび、ワークインライフの充実に力をいれているとしているのが好印象です。
冷静に考えてワークライフバランスというよか「まずライフ。その上でバランスの取れたワーク」ですしね。。。
社員のワークインライフ充実を目指し、育児参画を積極的に推進しています。
2022年4月1日、育児介護休業法の改正に先んじて育児休職制度を見直し、子の出生後8週間以内の休職制度を充実させました。
また、2021年度から育児参画セミナーを実施し、職場風土の醸成にも取り組んでいます。
2022年度の男性の育児事由休職・休暇取得率は目標100%に対し実績114.1%となりましたが、短期休暇取得者が71.6%を占め、育児休職の取得者は28.4%にとどまっています(ここの数字を開示しているのはいいと思います。男性育休の問題点は5日間など短期間でしか取得できない人が多いというところにあるので・・・)。長期育児休職を取りやすい環境構築に向け、組織や上長への声掛け・支援を強化していきます。
介護との両立においては、"大介護時代"を見据えた職場環境づくりの一環として、グループ各社で介護勉強会を開催。社員の関心も高く、参加者も多いことから、今後も継続して開催予定です。また、治療と仕事の両立を支援するために、人的ネットワークの構築や上長の知識習得・マインド改革・風土醸成のための研修を実施しています。病気治療との両立に向けた休暇制度も整え、理解醸成セミナーを開催するなど、取得しやすい環境づくりに努めています。
リモートワーク制度、リモートワーク手当、スーパーフレックスタイム、分断勤務、サテライトオフィスの拡充も行なっています。幅広すぎ!!
2022年7月からは、転居を伴う転勤や単身赴任を解消し、居住地が自由となるリモートスタンダードを導入しました。
この制度により、単身赴任者が約800人減少し、遠隔地で勤務する社員が増加しました。2022年度のリモートワーク実施率は74%に達し、サテライトオフィスも目標の260拠点を大幅に上回る約580拠点まで拡大しました。
リモートスタンダードの導入により、働く時間・場所・住む場所の自由度が高まり、社員のライフスタイルに応じた働き方の選択肢が広がりました。
しかし、チームの状況や仕事の内容に応じて、リモートワークとオンサイトワークを組み合わせる工夫も必要です。
今後は、対面と非対面の利点を活かしたハイブリッドワークを実践し、社員の柔軟な働き方と組織の生産性向上の両立を目指していきます。
従業員エンゲージメント向上施策
2021年度より従業員エンゲージメント調査を開始し、エンゲージメントを測る4つの指標をKPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標)として設定しました。
この調査の目的は、従業員が会社の方針や戦略に共感し、誇りを持ち、自発的に仕事に取り組む環境を整えることです。
エンゲージメント向上を目的に、役員報酬・管理者賞与の指標にも設定しているらしい。。。すごすぎ。これはいいことなのだろうか。。。
KPIは以下の4項目です。
自発的な貢献意欲
「当社では、仕事を成し遂げるために求められる以上の貢献をしようという気持ちになる」
自社に対する愛着・誇り
「私は、当社で働くことを誇りに思う」
「私は、当社を素晴らしい職場として知人に勧めると思う」
仕事のやりがい
「私は、仕事を通して個人として達成感を得ている」
そして、分析・取り組みにまでつなげています。エンゲージメントと強い相関性を持つ項目に対して、維持エリアと要改善エリアに分けて取り組んでいます。
維持エリアの取り組み
エンゲージメント項目との相関性が強く、肯定的な評価が高い項目は、「社員が働きやすい環境・風土」や「多様性の受容(きちんと認めてもらっている/個人として尊重されている)」です。これらの項目は、NTTが推進するリモートワークやスーパーフレックスタイム制、リモートスタンダードなど、多様な働き方を支える制度の成果と理解されています。これにより、時間や場所、居住地にとらわれない働き方が可能となり、ワークインライフの充実が図られています。
要改善エリアの取り組み
エンゲージメント項目との相関性が強く、肯定的な評価が低い項目は、「成長の機会(キャリア上の目標を達成できる)」や「戦略の浸透(当社の将来に自信を持っている)/チェンジマネジメント(組織の変革に対応するためのサポートを得ている)」です。
成長支援に向けては、2023年4月より専門性の獲得・発揮に応じて昇給・昇格する制度への見直しを行い、グループ横断でキャリアデザインを相談できるキャリアコンサルティング機能を充実させました。また、社員がキャリアのオーナーシップを持ち、必要なアクションをとるための支援として、「NTT Group Job Board」を開設し、公募による人事異動のチャレンジを支援しています。さらに、650講座の研修を提供し、NTTグループ内の多様なロールモデルの紹介も行っています。
戦略の浸透/チェンジマネジメントに向けては、経営層のキャラバンの拡大を行い、各社・各組織において調査結果に関する意見交換会を開催するなど、組織ごとの課題について議論を深めています。さらに、各階層のリーダーにアクションへのコミットメントを求めるなど、具体的な取り組みを進めています。
健康経営の推進
従業員の健康維持・増進を経営戦略の一環とし、健康経営に積極的に取り組んでいます。この取り組みは、従業員とその家族の健康保持・増進を通じて、働く意欲や活力を高め、企業の成長と発展に寄与することを目指しています。
NTTグループは、各種データ(PHR、勤務情報等)を収集・分析しながら、健康増進施策を展開しています。
その一環として、ヘルスケアポータル「dヘルスケア」を中心に、セルフケア・ラインケアの促進、定期健康診断やストレスチェックの結果閲覧など、従業員の健康活動や行動変容をサポートする取り組みを実施しています。
具体的には、「パルスサーベイ」により従業員の健康状態を定期的にチェックし、利便性を向上させるとともに、定期健康診断の結果を閲覧できるようにすることで健康活動を促進しています。
また、ストレスチェックの実施と結果閲覧を通じて、従業員のメンタルヘルスにも配慮しています。
これらの取り組みにより、NTTグループは経済産業省と日本健康会議が選定する「健康経営優良法人2023(大規模法人部門(ホワイト500))」に認定されました。
今後も、さらなる健康経営の推進に向け、施策の充実を図っていく予定です。
女性活躍推進企業DBもみなければというところですが、あまりにも長くなってしまったので後日改めて分析します。
さすが情報通信業売上高No.1企業ですね。さまざまな取り組みでより働きやすい環境を作ろうという試みを知ることができました。
ほかの企業よりも多様な働き方について、かなり気合い入れてやっていることがわかりました。
リーダーカンパニーのこういった率先的な取り組みが広がっていくといいですね。
ここまでお読みいただきありがとうございました!
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