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安心とは、いっときも不安や不信を与えないこと。

私は乗り物が好きです。出張で何度も使っている新幹線や飛行機しかも同じルートにも関わらず、いつも窓側を取ります。時には離陸~着陸まで居眠りしているときもありますが。富士山や伊豆半島を眺めるのも好きですが、駅・空港・町並み・・・窓から「人がいる様々な風景」を見るのが楽しいのです。

飛行機が駐機場を離れて滑走路に向かうとき、いつも整備士の人たちが手を振ってくれます。(大体いつも3人)等間隔に整列して大きく手を振ってくれる、その様子を見て私も必ず手を振リ返します。周りがちょっと気になるので皇室の方々の「お手振り」のように控えめ、ですが(笑)。小さな窓から手を振るこちらが見えるのかな? と思いますが、気づいてくれたのか大きく何度も手を振ってくれる光景は、嬉しく、思わず「行ってきます」「また来ます」と心の中で挨拶します。先端技術のかたまりのような、新幹線や飛行機。この人たちがちゃんと見てくれている、と思うだけで気持ちが安らぎます。利用者の「当たり前」を支えてくれる人たちが大勢いるんだな。

以前、タクシー事業の接客サービス向上に関わったとき、運転士さんから「笑顔や言葉遣いは大事だけど、まず安全でしょう?」という意見が挙がりました。もちろん、事故やトラブルを起こさないことは大事です。しかし、突き詰めていくと優先順位は付けられないのでは、と思います。「安全」とは、利用する人、お客さまに身の危険がないことはもちろんですが、「不安」をいっときも与えないことではないだろうか、そう思うからです。いくら整備を万全にしても、「この運転士さん、大丈夫かな・・・」と終始、落ち着かない状況は安全とは言い切れるでしょうか。以前バスの車中でアナウンスが聞き取れず、やむなく走行中に運転士さんに確認しようと立ち上がったお年寄りが転びそうになった場面に遭遇しました。「危ないから立たないでくださいねっ!!」と運転士さんは強い調子で注意していましたが、もっとはっきり、にこやかにアナウンスしてくれればこんなことにならないのになぁと思ったものです。運転する側の集中力にも影響するでしょうに。

以前、某エアラインの機内誌に興味深い記事が載っていました。社内の安全活動に関する内容でしたが、「機内の通路にゴミが落ちていたとしても、飛行機の安全運行に影響はない。しかしそのゴミを見つけたお客さまはどう思うか。ゴミが落ちていることを見逃す、そのことに不安や不信を抱くのではないだろうか」というもので強く共感しました。

利用側の快適性は安心・安全と通底し、じゅうぶん選択の動機になり得ます。ある調査では、移動手段の選択肢が少なく公共交通機関が○○会社のバスしかない、といった場合でも「もう○○バスはイヤ。乗りたくない」体験をしたら、(お金はかかりますが)タクシーやマイカー、あるいは自転車に代える人が少なからずいるとのことでした。

結局、安心・安全は、どちらかが一方的に提供したり享受するものでなく、相互の信頼のもと、築かれていくのではないでしょうか。離陸時の「お手振り」、乗降時の「ありがとうございます」「助かりました。また乗ります」の感謝の言葉、ああそれから宅急便・郵便局の方に「暑い中ありがとうございます」「雨の中お疲れ様です」。小さなことですけど、忘れずに続けようと思います。

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