教える難しさ
⑴ はじめに
今日は、教えることについて考えてみようと思います。みなさんは「教える」って難しいなと思ったことはありませんか?自分の子どもに教える場合、近所の子どもの場合、研修として入社したての社員にする場合など、年齢差やどう伝えるか、どう教えるか迷ったり、わからなくなったりする人も多いのではないでしょうか?
「教えること」について悩んでいる人は「これだけ伝えているのにわかってもらえない」「何度も同じ話しをしている」「伝え方がわからない」「どう接するのがいいかわからない」などの悩みを抱えている人もいるかもしれません。
では、なぜ「教えること」が難しく感じるのか…。それは「教え方や答え方に決まった答えがない」から。
※もちろん数学など1つのものを求める場合は別ですが…
学校のテストで言えば、国語の記述問題みたいな感じ。大枠では「こうした方がいいのではないか」「こう答えればいいのではないか」という「答え」はあるけれど、伝え方やどういう答えを最終的にどう導き出すかは、伝える相手や伝えたい内容などによっても変わりますし、決定的な答えだと言えるものがないですよね。だから難しい。教師であろうと、教師でなかろうと「人に教える」ことってそんなに簡単なことではないと私は思っています。
⑵ 教える中で大切なこと① −相手の目線に立つ−
私が教師として教えるために大切にしてきたものを1つだけ書くとすれば、絶対に「相手の目線に立つ」こと。人間誰しも、自分が経験してきたものであれば、何も説明しなくても相手が勝手に理解してくれるだろうと思ってしまいがち。
これが結構、無意識にしていることが多いです。みなさんも心あたりありませんか?それって実は結構、ハードルが高いものを相手に要求していることになるんです。
例えば
👩🏫「今からする◯◯の部分、去年習ったけれど答えられるかな?◯◯さん」
👧「わかりません」
👩🏫「去年習ったんだからわかるでしょ!ちゃんと考えなさい!」
👧「………わかりません」
みたいな経験ありませんか?上記は先生と生徒の設定で書きましたが、相手の生徒のことを全く考えてないですよね。先生の言っていることもわかります。「去年教えたから答えられるだろう」それはあくまでも先生側の意見であり、生徒は忘れているかもしれないし、その問題は本当にわからないもので生徒にとっては難しい問題だったのかもしれません。
これでは、生徒との距離感もできてしまうし、生徒も先生のことが嫌いになってしまうかもしれません。それは、教師と生徒という関係性だけでなく、親と子、上司と部下など様々な関係性でも成り立つものだと思います。「教えたから理解しているだろうではなく「教えたけどおさらいから入ろう」や「基本的な部分を抑える」という部分を大切にしてもらえると伝わりやすいのかなと思います。
先ほどの例で言うと
👩🏫「今からする◯◯の部分、去年習ったけれど答えられるかな?◯◯さん」
👧「わかりません」
👩🏫「じゃあ、これならわかる?(難易度を下げた質問、もしくはヒント)」
👧「▲▲?」
👩🏫「正解!よくできたね」
言い方を1つ目線を下げたものに変えるだけで全然違うんですよね。子ども達の距離感だけでなく、教えられる側と教える側の距離感も随分変わると思いませんか?
こんな質問をしたら、相手が怒るかな…など考えてしまいがちですが、基礎的な質問から知識を積み上げていくことも大切です。相手の目線に立つことで、質問の内容や問い方が大きく変わるので少し意識するだけでも随分変化すると思います。
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⑶ 教える中で大切なこと② −関係性をつくってから怒る−
教える上で大事なこと…「関係性をつくってから怒る」これも大事です。働いていたり、教えることや人がが多くなればなるほど、怒らなければならない機会って増えますよね。
だからこそ大事にして欲しいこと「きちんと関係性をつくってから怒る」こと。もちろん関係性ができていなくても、怒らないといけないこともあるかと思います。その場合は伝え方に気をつけて欲しいです。
関係性ができていない中で強く怒ってしまうと、それ以降の関係性を築いていけなくなるのをよく見てきました。
怒ったり、注意した側は全くそんなつもりはなく、相手のことを思って怒ったり注意したりしますよね。これを関係性ができていないままやってしまうと、受け手が距離をとってしまったり、言った側の言葉を聞かなくなってしまい、シャットダウンしてしまったりと全く教えていることがその人に入らなくなってしまう…というのを他の人の接し方を見ていて強く感じた部分でもあります。
関係性ができてから怒る。できていない場合は、伝え方に気をつける。怒った後は自分で相手にフォローを入れるようにするか、同僚からフォローを入れてもらうようにすると、関係性をあまり崩すことなく進めることができたようにも思います。どういう意図で、そういう言葉がけをしたのかを、別の人から伝えてもらうようにすると、関係修復にもあまり時間がかからなかった印象です。
そんなこと言ったって怒らなければならないこともある!と思われるはずなので、距離感の詰め方についても見ていきましょう。
⑷ 教える中で大切なこと③ −自己開示をして距離感を詰める−
関係性をつくってから、怒ったり、注意をしましょうというお話しを前項ではしました。次に大切なのが、距離感を詰めるためにみなさんがどうアクションをしていくかです。みなさんならどう相手と距離感を詰めますか?
新入社員や、転職者、取引先の人…など新しく知り合った人や、知ってはいたけれどあまりよく知らない人…そのような場合みなさんならどうされますか?自然に仲良くなるまで待ちますか?相手が話してくれるまで待たないですよね。待たないというより、待てないですよね。時間的なことや業務の遂行率などを考えると、待っている暇なんてとてもじゃないですが、ありません。
だからこそ、相手のことを知るために、先に自己開示してみてください。これは、教える、教えない関係なく、新しい人と関係を構築するのが苦手な人にも使えるかもしれません。自分のことを知ってもらうだけで、共通点を見つけることもできるかもしれませんし、共通点を見つけたところから仲良くなって関係性をつくっていくことができると思います。相手がどんな人かを理解しているだけでも話す内容であったり、距離感を詰めることができたらある程度、「きついな」と感じる言葉だったり、言い方だったりしても相手との関係性は悪くならずに済むかなと思います。
⑸ 教える中で大切なこと④ −解決策を一緒に考える−
自己開示+関係性をつくることができてから、教育したい相手にアプローチをかけていくのが1番効率がいいのかなと思っています。自己開示して仲良くなるのが目的ではなく、自分を知った上で相手を知り、関係性をつくった上で行ってもらいたいこと。それが「相手にどう動いて欲しいのか」「どうなるのがベストなのか」またその問題を「どう解決するのが良いのか」を考えること。
最初のどう動いて欲しいか(行動指針)の部分は、教える側が考えるべきですが、「どうなるのがベストなのか」その問題を「どう解決するのが良いのか」は、教育する相手と一緒に考えてみるのがいいと思います。
自分1人で考えるのが苦手な人が多くなってきている印象なので、教えられる側がどう考えたのかをこちら側が汲み取った上で一緒に考えてあげてください。上の記事にもありますが、こちらが「時間がない」「自分で学べ」「聞いてきて当たり前」などという「手間」をかけないようになると、その人が育たないだけでなく、自分の仕事が増えていく一方になると思いませんか?少しでも戦力を!と思うけれど、何も伝えなければ何も変わりません。少し手間だなと思っても時間をとってあげること、一緒に悩むことが大切です。
⑹ 筆者の経験談
私の教員時代の経験談を2つほどしたいと思います。10年ほど教員として働いてみて思ったこと…それは若ければ若いほど、生徒は「言うことを聞いてくれない」こと。でも反対に歳が近いから「距離感は詰めることができる」という一面も。もちろん怒る機会も沢山ありましたし、一緒に泣いたり、笑ったり、悲しんだり、楽しんだりもしてきました。
1つ目は教える上での距離感に困った話です。よーく思い出してみると、
前職場(高校)で初めて持った1つ上の学年の生徒との距離感に困った経験があります。当時私は2学年付の教員でした。
担当していた生徒がどんな生徒たちかというと
・高校3年生
・選択クラス(受験国語系のクラス)でクラスも混合
・着任したてで関係値0
のところからでした。
1学期が終わり、なかなか距離感が詰められないまま、問いを投げかけてもほぼ答えが返ってこない!という絶望的な状況でした。そんな時、教員研修会で学年主任の先生とお話しする機会が!その時にその先生から、
「自分のことから話してみてごらん。自己開示してくれたら、あの子たちも話すようになってくれるから。本当は話すのが大好きな子たちだよ」
と言われ、半信半疑で授業中に夏休みに何をしていたかを書いてもらい、書いてもらったプリントにお返事を書くことに。もちろん全員分(37名ほど)。コメントを全て書くってとても大変なのですが、返却してから生徒たちの反応が少しずつですが変わりました。いろんな話をしてくれるようになったり、私と共通の好きなものの話をしてくれるようになったり、バイトや困っていることの話をしてくれるようになったり。少しずつ様々な生徒と話ができるようになり、授業も堅苦しくなくスムーズにできるようになりました。自己開示したからこそ距離が詰まって指導(教えること)がしやすくなった経験でした。
2つ目は自分のクラスの話を。当時、私は3年間持ち上がりのクラスの担任でした。少人数で、男女比は半々。当時、コロナが流行していた時期で、毎日分散登校がされていた時期です。元々おとなしい生徒が集まりやすいコースでしたが、ほぼ全員が人見知り、一言も話さない。何を言っても返事がない!教員をしていて初めて「3年間この子たちの担任するの難しいかも」と思ったクラスは後にも先にもこのクラスだけでした。
もちろん、担任をしていると細かい部分まで注意するのですが、関係性ができていないと話ができないもしくは、話をしても内容が相手に入らないことが多いのは私自身も経験則から理解していました。
そのため、最初にしたことが「目線を合わせること」「何に困っているのか」「何に怒っているのか」「なぜ宿題ができないのか」などを放課後の時間や休み時間などを使って個人面談を通して関係性が構築できるまでは、かなりの時間を費やしました。他にも関係性をつくるために、学級通信で自分のことを発信したり、HRや授業中に様々な話をしたり。
関係性ができてからも、怒る時は「なぜ怒ったのか」怒って放置せず、フォローも入れながらどうしたら目の前の問題が解決できるのかを一緒に考えるようになりました。これらが功を奏したのか、3年生になる頃には、クラスの誰のことをクラスの誰に聞いても、誰でもなんでも答えてくれるまでになりました。それも、目線を下げたり、関係性を作ったり、言い方に気をつけたり、一緒に悩んだりしてきた結果だと思います。「教える」ことが決して難しいのではなく、「教える側がどれだけ寄り添えるか」が大事です。自分の思いを押し付けたくもなる時もありますし、どういう環境で育ってきたかによっても全然違います。
わかりやすい言葉に変えたり、目線を下げたり、一緒に考えたり。もしかするとそういう経験が教わる側にも必要なのかもしれません。できないからダメなのではなく、できる環境を一緒に整えてあげるイメージです。
⑺ まとめ −結局、その場しのぎでは何も伝わらない−
約10年、教える仕事をしてきて感じたこと。
結局、
ということ。いかに関係性を作り、相手の目線に立って一緒に考えてあげられるかが本当に大切です。適当にこれだけしておいてと言ってみたり、「?」が沢山つく内容の質問や仕事内容だと相手のやる気が削がれます。
「やってみたい」気持ちや、「できるようになりたい」気持ちを少しでも汲んであげたり、時間がなくても相手の話しを少し聞いてあげることができれば、どんな小さいことでも話してくれるようになりますし、相手もメキメキ能力を伸ばしていくなと教えてきて学びました。
結局、その場しのぎの対応をしてしまうと相手からの信頼感も失われていき、そのうち何も相手の情報が入ってこなくなってしまいます。だからこそ、自己開示をしたり、手を抜かず一緒に考える時間をつくってあげて欲しいなと思います。教える側はもちろん、自分が学ぶことも大切ですが、関係性や質問内容のレベルをその人に合わせて考えてあげると、比較的スムーズに課題に取り組んでもらえるはずです。
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