一歩踏み出すために、想像できることから手をつける〜メーカーHRBP/Allyable 代表 松下さんのキャリア〜
人事のキャリアについて深掘りするメディア「HR CAREER LAB」では、日々同じように頑張る「社外のライバル」や「一歩キャリアの先を行く人」の歩んできたキャリアの体験談を紹介しています!
今回は、一般社団法人Allyable 代表理事兼外資系消費財メーカーでHRBPを務める松下さんに、これまでのキャリアについてお伺いしました。
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インタビュイーのご紹介(松下結妃さん)
「人が活躍できる環境づくり」に対する思いから、現職の人事へ
元々、自分自身が長い間摂食障害に苦しんでいた期間、自分だとは思えないほどパフォーマンスが下がり、どんなに必死に頑張っても思うような成果が出せず、自分に対して自信を失ってしまったという原体験があります。
また、大学院時代に日本語教育の研究をしていた際に、日本語が話せないというだけで「能力が低い」というレッテルを貼られてしまう子がいると、その子はそのレッテルに合わせてどんどんパフォーマンスを下げてしまうことが分かり、それらの経験から個人のパフォーマンスは「能力」の有無だけでなく「環境」が大きく左右するということを強烈に意識しました。
その際に、人に言えない生きづらさや、一部の"レッテル"を背負わないといけない人が、気兼ねなく活躍できる社会にしていきたいという思いを抱き、まずは「その人自身が、自分のことや、周りの環境や好きだと思える環境を作りたい」という想いから、会社としてそこに向き合うことができると感じた現職の人事を選択しました。
最初は大学院の専攻の流れから教師の道も考えていたのですが、人事の方がより広く影響を与えることができるのではないかと考えました。社内はもちろん、意義のある制度設計ができてそれがプレス等で紹介されて他の会社も真似をすることで、自社に限らず社会に対して広く影響を与えることもできます。
そのため、せっかく人事になるのであれば、他社が追従したくなるような企業の人事になる必要があると思い、外資系消費財メーカー大手である現職を選びました。
人に対する価値観が合う組織でHRBPとしてのチャレンジ
人事の仕事はその性質上、企業側の人に対する「価値観」が合わないと、辛い部分が出てくると思っています。そういう点で、現職では入社前に1週間ほど一緒に仕事をしてお互いに見極める選考があり、入社前に人事の方とも多く話して価値観や組織課題を理解できていたので、安心して入社できましたし、入社後も大きなギャップはありませんでした。
弊社はHRBPの仕組みを採用しており、業態別にHRBPがいます。そのため、入社後は1年目1週間目から、ずっと組織付きのHRBPをしており、他にも労務管理、研修設計、評価/給与/表彰などの幅広い制度設計、採用マーケティングなどコーポレート系業務も担当してきました。
人事の仕事の面白いところは、社会課題に業務として対峙するところだと思います。会社は、社会のある一定の層を切り取ってきた、小さな社会なので、会社で起きる問題や人が抱える問題は、今の社会課題と繋がっていて、それを社内にいながら解決するために奔走することで、社会課題を解決するための知見を得られる。これは、他の職種ではなかなか経験できないものではないでしょうか。
現在は①スキンケア業態のHRBP、②ヘアケア業態のHRBP、③業態横断の障がい者雇用を担当しています。割合としては①が一番多く、1000人以上いる美容部員と企画やマーケティング等の本社メンバーの採用から人事戦略の策定までを幅広く担当しています。
会社の事業規模に対して人事の人数がかなり少ないので、社外の方からは驚かれることが多いのですが、全員が兼務状態で働いているため同僚同士で学び合えますし、複数の組織を同時並行で見ることには慣れました。むしろ一度に様々な組織課題に向き合うことができて成長しやすく、良い経験をさせてもらっていると思います。仕事をしている時、若手の後輩からは少し怖いと思われているようで、それが悩みではあります…笑
会社員人事の傍ら、一般社団法人の設立を決意
入社後3年目に、現在の一般社団法人Allyableにつながる活動を始めました。
実は入社前から、摂食障害がいつか治ったら、絶対に今苦しんでいる当事者に対して「直接的に何かしらの支援をしたい」という気持ちを持っていました。しかし、私自身2年目頃まで摂食障害の症状がまだ出ており、寛解を目指す「当事者」だったので、"自分が治っていないのに動き出すのは間違っている"という風に考えていました。
そのため、まずは「間接的」に社員のメンタルヘルスや働く環境を支援できる人事というポジションに向き合い始めました。そこから「直接的」な関わりを本業で作っていきたいと思っており、摂食障害と発達障害に相関性が高いという背景から、発達障害の方向けの取り組みをしたいという気持ちで、本業でも「障がい者雇用」に自ら手を挙げて関わるようになりました。
しかし、やはり本業の中でできる範囲だと限界があるということもあり、3年目に寛解してからは業務外で自らの事業として、「直接的」に摂食障害に向き合う人たちへの支援の活動を始めました。
正直、最初は「自分には(摂食障害の方への支援を)やる資格がない」とも思っていました。寛解したとはいえ体力面にも不安があり、ビジネスの経験やスキルも足りない自分が起業できるとは思えませんでしたし、「8年もコンディションを崩して何もできなかった時期があった自分に、何かに挑戦する資格がある訳ない」というマインドになっていました。
そのため、やりたい事業案を他の人に見せると「これをやっている会社はないから、自分で起業して作れば良い!」とアドバイスをもらうのですが、「いや、起業は違うんだって…」と思っていましたね。今でも、企業経営がしたい訳ではなくて、やりたいことがあって、その手段として起業が必要だったという感じですね。
▼松下さんの取り組みについてはぜひこちらも動画ご覧ください
怖がりながらも一歩踏み出すためには、想像できることから手をつけること
私自身、今の事業にたどり着くまでは、紆余曲折ありました。当時は自信がなかったこともあり、いきなり大きなことをやるのではなく、まずは手を広げられる範囲で、失敗しても迷惑をかけない範囲で始めようと決めていました。怖がりながらも一歩踏み出すためには、想像できることから手をつけることは大事だったと思います。
例えば、私の場合は最初シェアキッチンを借りて、週末同僚とカフェを始めてみるところから始めました。本業に関係のない土日で、利益を出さなくて良い趣味の範囲なら、失敗しても何も影響がないので、気軽にやることができました。
そうやって動き始めると、「カフェだとなんか違う」と分かり、次は社外の新規事業のアクセラレーションプログラムに参加させてもらい、事業の作り方を学びました。そこで周りの人の熱意に影響され、最終的には覚悟を決めて事業計画書を作り上げました。摂食障害ではなく、本業で知見を溜めた発達障害に関する事業でしたが、実際にビジネスモデルの構築方法や実証実験の手法について学ぶ良い機会となりました。
その後ありがたいことに、副業申請の際に「まずは自社で採用施策としてやってみたら良い」と言ってもらえました。ここでも、いきなり事業をやるよりも本業の中でできる方が進め方等の想像もつくので、まずは自社でやってみる方を選びました。結果的には、あまり結果が芳しくなく、中止になってしまったのですが、その中で「私はやはり摂食障害に向き合いたいのであって広く福祉であれば何でも良いわけではない」という学びを得ることができました。
他にも、まず一歩を踏み出すことで世界が広がると、自分が思い込んでいたものに気づくこともあると思います。私自信、自信がなくて起業をためらっていましたが、そのような人が集まる場に飛び込んでみたら「すでにやっている人」のリアルな姿が見えることで、勇気を出せた部分もあります。
本当に怖がりながら一歩ずつ踏み出していったせいで、他の人よりも時間がかかってしまったと後悔している部分もあります。ただ、小さなトライをした上で、学んだことや諦めきれずに残るものを大事にしていくやり方で進むのも、再起不能になる失敗を避けつつ夢を叶える方法としては、悪くないんじゃないかと最近は思えています。
キャリアインタビューを最後までお読みいただき、ありがとうございました。インタビューの後編は人事のための無料コミュニティ「ひつじんじ」にて限定公開しております。コミュニティへのご参加申請はこちら よりお願いいたします。
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