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『クイズ脳』との戦い(前編)

「今のTVはつまらない、昔はもっと自由で楽しい番組がたくさんあった」なんて言葉を聞くことがあります。主にいじめを助長する内容や、性などに関する差別表現があって番組が批判されたり終了したときに、番組内容を擁護して発せられる、加害者のみなさんの言葉です。

それとあわせて、TV制作側の「あれもダメ、これもダメで、クイズ番組くらいしか作れない!」という悲鳴が伝えられることもあります。

うーん。本当でしょうか? これは人類のリテラシーに対する挑戦の気配を感じます(?)。

というわけで今回のテーマは「クイズ番組の是非」です。

本当は良いコンテンツ

クイズ番組を真っ向から否定しようというわけではありません。クイズ番組にはいいところがたくさんありますからね。

まず、視聴者も一緒に参加できること。「ぼくは犬だと思う!」「お母さんは時計じゃないかと思うわ」「お父さんは?」「お父さん寝ちゃってる」「アハハ」「ウフフ」なんて感じで、家族が楽しく過ごすひとときに貢献します。答えが犬か時計かで迷うクイズの出題がなんなのか気になるところですが、それはさておき。視聴者が考える機会を作り、答えを知って知識が増えるのは間違いなく「いいところ」です。

でも残念、このクイズの正解は「わかるわけないでしょ」です。

わかるわけないでしょ

「クイズ番組くらいしか作れない!」と言っていたわりには、TVでクイズ番組が量産されているわけではなく、特別ヒットしているクイズ番組があるわけでもないようです。

いまどきは別にNHK集金対策というわけでもなく、本当にTVがない・TVを観ない人も増え、この記事もネットのTV番組表やTVerの配信中番組を確認しながら書いています。

みんなが知っている共通のクイズ番組というのが今はなさそうなので、必然的に話は古くなるのですが、TVマンが古き良き時代としてなつかしむ昔のクイズ番組には以下のようなものがよくありました。

(ロケ先の観光地で)お土産屋さんを営むアンディさんには、近頃悩みがあるそうです。その悩みとは……?

もちろん出題は正確ではなく、仮のものです。たしか観光地はオーストラリアだったと思いますが、お土産屋さんのご主人の名前はアンディさんではなかったと思います。が、昭和の大ヒット超有名クイズ番組「なるほど!ザ・ワールド」は概ねこんなクイズがよく出題されていました。

ちなみに司会は愛川欽也さん。出演者の回答が間違っていたときに言う「はい消えた!」は地味に浸透した流行語のようなものなので、近年でもこの言葉を発するおじさんを見かけることはあると思います。どこかにスイッチがあるはずなので、迷わず消してください。

なお上記のクイズの正解はたしか「娘に恋人ができた」なのですが、そんなの知るかっ!

『なるほど!ザ・ワールド』は番組のリポーターが世界各地へ赴き、現地の人たちと話す長めのロケ映像のあとにクイズが出るのですが、正解に結びつく要素は映像中に出てきません。

ロケ映像に直接的なヒントが出てこなくても、その国の通貨が高騰したとか、その土地で昨年水害があった、といった公になっている事実を背景にした正解ならいいのですが、そういうまともな出題はされません。

「なるほど!」と納得できるところは皆無で、よくこれだけ真逆の名前をつけたもんだなと感心させられます。これよりひどい嘘ネームは「自由民主党」くらいしか知りません。

構造的問題

『なるほど!ザ・ワールド』は特にひどいクイズ番組の筆頭格ですが、もちろんそれ以外のクイズ番組がすべて同様だったわけではありません。番組のなかには知識があったり、考えればわかるものもありました。

ただ、そういう番組は基本的に簡単になりすぎるか難しくなりすぎるかのどちらかです。中学生くらいの視聴者を視野に入れた時点で難しすぎないクイズは大人にとっては簡単すぎるクイズになりすぎ、いわば「ゲームバランス」の調整が難しいのはたしかです。

TVとしては視聴率がほしいので、必然的に視聴者がわからない「難しい」方へと傾きます。視聴者に正解を探らせるために出題VTRを長々と見せて「正解はCMのあとで!」とやるために「絶対わかるわけがないクイズ」が当たり前になっていました。

ただ、「わかるわけない」のを逆手にとった「わかる人すごい」ということを主に観せる番組も存在しました。

例えば、今もあるのか知りませんが『高校生クイズ』は「大人にもわからないことがわかって、すごいね」という気持ちで「難問に挑戦する高校生の奮闘を観る」ある種の青春番組として成立していました。

ただ、視聴者はそこで出題されているクイズのほとんどを正解できませんし、おそらくお手上げすぎて考えようともしませんから、厳密にはクイズ番組とは言えないかもしれません。そのかわり正解を引っ張らないので、テンポよく番組が進みます。

なお、クイズ番組がどれだけつまらなくても何の問題もありません。エッチな番組を観た子がHENTAIになるかどうかはわかりませんが、一部のクイズ番組に影響されて理不尽、差別、駄目クリエイターが再生産されかねないことに問題あるのです。

2000字を超えちゃったので、次回に続きます。

(つづく)


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