【医師論文解説】脂肪肝と高血圧に効くのは卵だった!? 研究で明らかになった意外な結果【OA済】
背景
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、肝細胞内に脂肪が5%以上蓄積する非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が進行した状態で、炎症が伴う。
NASHではこの脂肪蓄積に加えて、壊死と炎症を伴う肝細胞障害が生じる。NAFLDはメタボリックシンドロームの肝臓における表現型として知られ、インスリン抵抗性や糖尿病、脂質異常症、腹部肥満などのリスクを高めることが知られている。
一方、高血圧も重要な健康問題であり、心血管疾患の主要な危険因子の一つである。2000年から2025年の間に高血圧の診断は60%以上増加すると推定されている。
食事はNAFLDや高血圧の予防と管理に中心的な役割を果たす。特にコレステロールの摂取量は高血圧の修飾可能な危険因子である一方、NAFLDへの影響は不明確である。
卵はコレステロールの重要な供給源だが、他の栄養素も豊富に含まれ健康に良い影響を及ぼす可能性がある。しかし、卵の消費とこれらの疾患リスクの関連についての研究は乏しく一貫性がない。
方法
60歳以上の南イタリア人908名を対象に横断研究を実施。Multicenter Italian study on Cholelithiasis (MICOL) のデータを用いた。参加者をNAFLDと高血圧の有無で4つのグループに分け、各群間で特徴を比較。
食事摂取頻度調査で卵の消費量を評価。NAFLDは超音波検査、高血圧はガイドラインに基づき診断。主要な解析として、多項ロジスティック回帰分析を用いて、卵の消費量と各疾患群間の相対リスクを推定した。これには補正なしのモデルと、年齢、性別、1日カロリー摂取量で補正したモデルの両方を用いた。
結果
高血圧のみ、またはNAFLDとの合併ありの参加者では、卵の消費量が多いほど相対リスクが低下する関連が認められた。週3個以上の卵消費は、高血圧のみのグループで79%、NAFLD合併群で66%の相対リスク低下と関連していた。これらの関連は、年齢、性別、カロリー摂取量で補正しても有意だった。
・脂肪性肝疾患なし/高血圧症あり:0.21(0.07~0.62)、0.005*
・脂肪性肝疾患あり/高血圧症なし:0.73(0.36~1.47)、0.38
・脂肪性肝疾患あり/高血圧症あり:0.34(0.15~0.73)、0.006*
補正なしモデルでは、NAFLD非合併高血圧群で1日卵摂取量1g増加ごとに5%のリスク低下が認められた。NAFLD合併高血圧群でも同様の傾向がみられた。
論点
本研究では、地中海食を基本とする南イタリアの高齢者において、卵の消費量が多いほど高血圧とNAFLDのリスクが低下する関連が示された。食事内容の違いが結果に影響した可能性がある。地中海食では野菜の消費が多く、卵料理も野菜と組み合わせることが多い。食物繊維の効果でコレステロール吸収が抑えられることが、卵のコレステロール量の影響を相殺したと考えられる。
遺伝的背景もコレステロール代謝に影響している可能性がある。さらに、卵に含まれる様々な栄養素の効果も疾患リスク軽減に寄与したかもしれない。
結論
本研究では、南イタリアの高齢者集団において、卵の消費量が多いほど高血圧とNAFLDのリスクが低下する関連が示された。食生活パターンの違いや遺伝的背景などが結果に影響している可能性があり、さらなる検証が必要である。しかし、卵の栄養価に目を向け、適切な量を賢明に消費することが重要である。
文献
Tatoli, Rossella et al. “Effects of Egg Consumption on Subjects with SLD or Hypertension: A MICOL Study.” Nutrients vol. 16,3 430. 31 Jan. 2024, doi:10.3390/nu16030430
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