物語の力をつかって日々の問題を解決する『ストーリー思考』レビュー
「運任せ」というコトバが気になっています。
運任せというと、自分の力を信じておらず他力本願で、ネガティブに捉えられがちですが、『ダーク・ジェントリー全体論的探偵事務所』を読んでから、運任せへの印象がガラっとポジティブに変わりました。
主人公のダークは「全体論的探偵」を名乗り、「全体論的」とはすべてが最後にはつながるという、「すべて運任せ」という捜査アプローチです。
手がかりが一切ない状態で、行き当たりばったりの捜査を行う主人公は、他人からみるとふざけているとしか思えません。
しかし、最後にはしっかりと事件の真相にたどりつきます。
作者は、イーロン・マスクや、シリコンバレー起業家たちに多大な影響をあたえた『銀河ヒッチハイク・ガイド』の著者、ダグラス・アダムス。
極上のコメディでNETFLIXでドラマ化もされています。
そして、『ストーリー思考』で紹介される「フューチャーマッピング」も、運任せに近い要素を持っており、全くあたらしい側面から問題解決をみちびく手法。
それはなぜかというと、「現実の課題とはなんの関係もないストーリーを創作する」ことをつうじて、過去の延長線から離れることができるからです。
現在、問題を抱えている会社員の方で、ロジカルな解決策では行き詰まってしまい、新しい切り口の発想が必要な人におすすめ。
また、先行きが分からないプロジェクトを抱え、予測が難しいことに対して準備が必要な大学生や会社員の方にも参考になります。
演習や事例もたくさん載っているので、実際に手を動かすのが好きな人に向いています。
「フューチャーマッピング」は、一枚のチャートにおさまるほどシンプルな手法。
チャートの上に、現実と無関係なフィクションのストーリーを作り、現実に対する意味づけをしていきます。
特徴的なのが、課題解決したときに「ハッピーになってもらいたい人を120%ハッピーにする未来」を想定する点。
自分のためではなく、人のためという視点を取り入れることで、高い視点をえることができます。
さらに、他人をハッピーにしようとすることは、自分自身の成長をもっとも強く促すことにつながります。
そして、利き手ではないほうの手で、チャートの中に右上がりの線をフラフラっと一筆書き。
この線がゴールまでの道となり、引いた線のラインに意味があると考え、特に線が下に向かう期間について、事前に準備しておくことが可能となります。
そして、考えうるストーリーを線の下に、戦略を線の上に書き出し、ストーリーと戦略を並行して考えていきます。
答えがない分野に取り組むのに、特に効果があるでしょう。
著者の神田昌典さんは1964年に生まれ。
もともとは経営コンサルタントですが、1998年に作家デビュー。
分かりやすい切り口、語りかける文体で、2012年にはアマゾンの年間ビジネス書売上ランキング第1位を獲得しています。
そんな著者が紹介するのが、KJ法やマインドマップといった既存の問題解決法とは一味ちがう「フューチャーマッピング」。
いつもの視点では発見できなかった要素を引き出し、アイディアや解決法が湧き出てきます。
この本は、理想と現実にあるギャップを、さらりと埋めて、新しい未来を切り開くのに役立つでしょう。
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