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沢木耕太郎さんが考えるノンフィクションとは:『旅人の表現術』

角幡唯介さんの『旅人の表現術』を読みました。

本書は、ノンフィクション作家を目指す人だけでなく、文章を書くのが好きな人にとっても、おおくの気づきを与えてくれる一冊。

お目当てはノンフィクションの巨匠・沢木耕太郎さんとの対談でした。

予想通り、その対談は文章を書く上でのヒントが満載。

今回はその対談のなかから、とくに沢木さんから学んだ3つの視点についてご紹介します。


1. コンセプトへのこだわり

沢木さんの言葉の一つひとつから、ノンフィクションに対する深いこだわりが伝わってきます。

(第一線でご活躍されている方なので、当然といえば当然ですが...)

対談のなかで、コンセプトに関して印象にのこった4つを列挙します。

a. ノンフィクションとは何か

沢木さんにとって、ノンフィクションは「自分が事実でないと知っていることを事実として書かない」というシンプルな定義で成り立っています。

この言葉から、ノンフィクション作家が、いかに誠実に読者に伝えるべきかということが分かります。

b. 批評の視点

沢木さんは、『哲学者とオオカミ』という本には、批評性が足りないと評価を下しています。

具体的には、「野生のものをペットとして飼う自分は、そのオオカミにとって何者なのか?」という視点が欠けているとのこと。

このような、自分を客観視する視点は、ぼくたちが何かを表現する際にも、つねに意識すべき点です。

その視点が欠けているがゆえに、上記の本の著者が、オオカミを飼っている自分を特別視しているだけのよう、と語っています。

c. 一人称と三人称

沢木さんいわく、『死のクレバス』とう作品は、登場人物二人がそれぞれ一人称で書くことで、読者は三人称の視点をあわせもつことができる稀有な作品。

沢木さんはこの手法に感銘を受け、自身の作品『』を書くことに。

その作品をとおして、「三人称で、一人称のような視点を手に入れられないか」とチャレンジしたそうです。

d. ナゾの存在

沢木さんは、角幡さんに「ナゾ」というアドバイスを送っていました。

これは、たんなる謎解きではなく、自己探求の過程を表しているように感じます。

自分のなかにあるナゾを、自分が歩いていくことで、そのナゾが少しずつ解けていく。

そして、新たな発見や自分の成長にもつながります。

自分のなかにある疑問を追い求めることは、作家だけでなく、どんな人にとっても大切なヒントになるはず。

2. 創作ツールとしての手紙

おどろいたのが、沢木さんは『深夜特急』を、最初は書くつもりではなかったこと。

旅が終わってから、書くと決めたそうです。

そのときに役立ったのが、現地から友人へ宛てた手紙。

手紙を書くには、相手に理解してもらうために、状況をしっかりと描写しなければいけないので、日記よりもよいのだそう。

(ちなみに角幡さんは日記派で、日記を書かないと忘れてしまうと語り、毎日1時間ぐらい書くのだそう。)

3. 沢木耕太郎さんの選んだ三冊

そもそもこの対談は「ノンフィクションとは」がテーマ。

対談の前に、「自分の話す内容に関係のある本を三冊、相手に読んできてもらう」というルールを沢木さんから提案されたそうです。

そして、沢木さんが角幡さんに指定した本は、以下の3冊。

右のコメントは、沢木さんのコメントです。

・『ベトナム戦記』:現場報告としてのルポルタージュの典型。
・『極限の民族』:ルポルタージュに民俗学的な要素を加えた作品。
・ 『さもなくば喪服を』:ノンフィクションの最高到達点のひとつ。

沢木さんいわく、『ベトナム戦記』と『さもなくば喪服を』のあいだに、ノンフィクションというものの幅が存在するのだそう。

これらの作品を読むことで、ノンフィクションの幅広さや奥深さを知ることができそうです。

さっそく『ベトナム戦記』と『さもなくば喪服を』を買いました!

まとめ

旅人の表現術』を読んで、ぼくはノンフィクションに対する興味が深まりました。

沢木さんの言葉の一つ一つに、深い意味が込められており、何度も読み返したいと思える一冊。(沢木さんとの対談自体は40ページほどしかありませんが)

それらは、たんに文章を書く上でのテクニックだけでなく、物事の本質を見つめるためのヒントを与えてくれるような気がします。

この本を読んで、ぼくも読者に感動を与えられるようなノンフィクション作品を書きたいという気持ちが強くなりました。

これからも、さまざま作品を読み、自分自身の表現方法を模索していきたいと思います。

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