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たけとりものがたり

火葬場があった。
 
昔、疫病がはやって亡くなった人は土葬ではなく、火葬された。
その火葬場は煙も灰も里には降らない山の奥の奥の奥まったところだった。
 
ざあああああああああ
 
火は風を呼ぶ。
風がまた火をあおる。
 
なむあみだぶつ なむあみだぶつ なんまんだぶつ なまんだぶ・・・・・・・・
 
ざあああああああああ
 
大きな炎がうねりをあげ、
あちらへこちらへ手を伸ばすように、形をかえ、色を変え、
空へ吸い込まれていく。
 
ざあああああああああ
 
そして残りは山に還っていった。
 
なんまんだーぶ なんまんだぶ なまんだぶ ・・・・・・・・
 
 
その山の頂上からは遠く鳥取大山が見えた。
山を下りていった中野村に正蔵坊という山寺がある。
僕が生まれたお寺だ。

火葬場があった


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