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京野哲也先生が語る――民事反対尋問のスキルの読み方

2023年6月5日に発売した『民事反対尋問のスキル いつ,何を,どう聞くか?(第2版)』の著者である京野哲也先生が自身のTwitter上で初版刊行時から「民事反対尋問のスキルの読み方」として、貴重な情報を投稿されています。

法律実務家にとって関心の高い内容だと思われますので、京野先生から御承諾をいただき、noteとしてまとめていきます。

本記事では初版刊行時から第2版までの初版編と第2版以降の第2版編に分けて掲載しております。いずれも、反対尋問に関する貴重なTipsが生の声で語られるものです。
更新については先生のツイートが確認でき次第、随時更新していきます!


初版編

民事反対尋問のスキルの読み方(1)
 以前「CR民事実務講義」の読み方をtweetしていましたが(360回),民事反対尋問のスキルも時につぶやいてみたいと思います。尋問事項メモをどう作ればよいですか,という質問もありました。(1)何十回も書き直す,(2)そのため,かなり早い時点で一応のものを作る,

https://twitter.com/bye02661/status/1098008137615855616?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(2) 
(3)そして作ったメモをいったん「寝かせる」,つまり「発酵の時間」を加えることも大事です。(4)Qを作る作業は,有効打となるQを置くラインを想定し,その1行前のQはこうでなければならない,更にその1行前の行はこうでなければならない,と考えていきます。

https://twitter.com/bye02661/status/1098009999903604739?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(4) 
書き直し作業では,相手方が「非常識な」言い訳をすることも想定してみます。「まさかこんな非合理的な言い訳はしないだろう」と可能性を限定してはいけません。私の経験でのもっとも苦い経験は,非合理的な言い訳に終始する相手方でした。

https://twitter.com/bye02661/status/1098011796424650752?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(5) 
月曜日のセミナー「声には温度があります」と話を始めました。電子空間のデフォルト温度は零度,紙の言葉にはまだ温度があり,語る言葉には暖かさや冷たさが宿っている。反対尋問には関係なさそうですが,弾劾の急所に至るまでは普通の温度で話すのがよいと思います

https://twitter.com/bye02661/status/1098368859914919936?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(6) 
我々は概念について一般形と特殊形という把握の仕方に慣れています。民事反対尋問も,コミュニケーション一般>オーラルな対話>法廷のルールの下での目的的な対話,という特殊形になります。反対尋問も「対話」の一種なんだ,と時折気づくのもよいことと思います。

https://twitter.com/bye02661/status/1098370361681272833?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(7) 
尋問事項メモを一応作ったらしばらく「寝かせる」発酵させることも肝要です。少しでも寝かせた後に,真っさらな頭で読み返すと,実に色々な気づきがあります。特に気付かなかった相手の言い訳に思い当たりますから手直ししますが大抵は当初案から大幅に変わります。

https://twitter.com/bye02661/status/1098730097962496000?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(8) 
「発酵」と気づき。課題を真剣に考え続けていると,朝半覚醒状態のときなど,不思議と気づきやブレークスルーのアイデアが浮かんでくるものです。尋問事項メモも同じで,意識下で考え続けていると次に意識表層に浮かぶとき摩擦により新たな気づきが生じるのでしょう

https://twitter.com/bye02661/status/1098731489787707393?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(9) 
反対尋問も「対話」の一種と述べましたが,特に尋問の「前半」では普通の対話のように接するようにしないと,スムーズに前提を導くことができません。前半というのは長さの問題でなく,「前提を作る」段階のことです。この段階で不必要に圧迫的になると逆効果です。

https://twitter.com/bye02661/status/1099085437321134080?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(10) 
前提をスムーズに作っていくためには,相手方の敵対的感情を緩和することも有益です。私は,冒頭に「これから被告とされているあなたのことを○○さん」とお呼びしますから,私の質問にお答え下さいね」と言うことが原則です。調書上の表現を特定する意味もあります

https://twitter.com/bye02661/status/1099089405828976640?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(11) 
弾劾証拠を出すタイミング(本書§19)。先週のセミナーでも感じましたが,弁護士としては悩むところですね。尋問中の提出(後出になります)をしたところ裁判官から露骨に不快感を示され,雰囲気が悪くなったという経験談も聞きます。書証の事前提出原則と真実発見の

https://twitter.com/bye02661/status/1099799760582529024?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(12) 
書証の事前提出原則と真実発見の要請のバランスが必要な局面ですが,裁判官の訴訟指揮の問題ですから,後出が許されるべき必要性が自ずから裁判官にも理解できるケース・場面での後出に限定すべきことはいうまでもありません。それにしても,ケースによっては

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民事反対尋問のスキルの読み方(13) 
尋問中の弾劾証拠提出を一切許さないかのように指揮される裁判官がいらっしゃることは残念です。ケースにより,弾劾が必要な場合はあります。証拠開示制度が不十分な中で,ずるい嘘をつく相手方に負けないために弾劾証拠後出しが必要なケースは厳然としてあるのです

https://twitter.com/bye02661/status/1099817422134009856?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(14)は欠番 

民事反対尋問のスキルの読み方(15) 
私自身は,人証で決まるような事案では,弾劾証拠を全く用意していなかった事案はむしろ少なかったと思います。受任の段階から,訴訟になった場合に弾劾として使えそうな証拠はないか,意識して事実と証拠を収集し,準備書面やりとりの過程で相手の主張を見極めて

https://twitter.com/bye02661/status/1099888743094247424?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(16) 
事案により,録音反訳のようにズバリの弾劾証拠もあれば,ある事実について相手方があまりに不合理な供述をする場合はこれを出そう,という類いの弾劾証拠(結果的に使わないで済むことが多い)まで,何らかの弾劾証拠の可能性を残すことを意識した争点整理活動を行う

https://twitter.com/bye02661/status/1099890455112671233?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(17) 
ポイントは,圓道至剛先生ご指摘のとおり,事前に証拠提出しなかったことが疑問に思われない,弾劾証拠の必然性が裁判官において理解できる流れができている場合に出す,ということになります。大きな「流れ」としては当方の誠実な訴訟追行,相手の不誠実な供述です

https://twitter.com/bye02661/status/1099892287897653249?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(18) 
本書では弾劾証拠を後出で示す場面はやや多くありますが,私自身の肌感覚としては,後出で示したケースの割合は数割というところです。繰り返しになりますが,尋問の流れからその証拠を示す必要性が裁判官にも分かるケースになります。そのためには,準備書面の段階

https://twitter.com/bye02661/status/1100554961874608128?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(19) 
争点整理において裁判官に信頼が得られる訴訟追行をすることが必要と思います。事実を隠しごまかす相手方に対し,当方はきちんと主張を出し我慢を重ねる。但し,相手方のゴマカシ方によっては弾劾証拠となるものは慎重に留保しておく,このような感覚でしょうか。

https://twitter.com/bye02661/status/1100556008248696832?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(20) 
次の「法律のひろば」に拙著の紹介コラムがありました。ぎょうせいさんの雑誌ですから,宣伝という感じもしますが,このコラムは無署名ながら,法律界の「大家」というべき方々が執筆されているのだそうです。

https://twitter.com/bye02661/status/1103451040723042304?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(21) 
職業上の話で,紛争になっている相手方の主張の中に,事実のレベルでのウソがないと思われるときは,がっかりします(名誉毀損等の問題は別)。どうやってとっかかりを見つけよう。でも気を取り直し今度はウソではない「あるべき事実の不記載」を探すことになります。

https://twitter.com/bye02661/status/1353142027702083589?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(22) 
お久しぶりです。先週,依頼を受けてA県弁護士会で反対尋問の研修会講師をしてきました。書籍と研修会とでは随分違いがありますね。正直,用意したことの4割も話ができず(コメントを付したレジュメを配付していますが),忸怩たるものはあります。

https://twitter.com/bye02661/status/1368534137204699136?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(23) 
ただ,ウェブで参加してくれた,研修所時代の「教え子」(他にいい言い方はないかなと思いつつ)から,翌日ファックスがあり「よかったです。更に日々研鑽したい」という連絡があり,嬉しく,有難く,頼もしく思いました。

https://twitter.com/bye02661/status/1368534330876653574?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(24) 
色々な研究を少しづつしています。米国では民事でも陪審員jurorsにどうやって味方になってもらうか、が主たる作業になるのですね。効果的なプレゼンの一つは「有名な言葉」の引用ですが、引用のネタになる次のようなページもあるんですね(https://www.brainyquote.com/

https://twitter.com/bye02661/status/1564174083402919936?s=20

第2版編

民事反対尋問のスキルの読み方(25) 
おかげさまで第2版の公刊に至ったので(奥付令和5年6月5日発行)、この「読み方」も復活してみます。共著者の方の了解を得て単著としました。ケース素材は殆ど変わっていませんが、弾劾の2つの基本構造を明示して、基本→応用と明快な説明となように書き直しました

https://twitter.com/bye02661/status/1664953103689592832?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(26) 
私が思い至った弾劾の2つの基本構造とは、①直接の矛盾、②経験則による推認で、うち「弾劾の第2パターン」は、記号で書けば〈αならば,γなのだから,通常βであるはず。ところがβでない。ということはαでないと推認される〉というもの。ごく普通の経験則の働きです

https://twitter.com/bye02661/status/1664982752461225985?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(27) 
αが相手方の主張で、例えば、α遅刻しない積もりだった、γ大雨が降ることは昨日から皆分かっていた、β今朝は早めに出るはず、ところが¬β普段と同じ時間に出てる、ということは、¬α遅刻しても構わないと思っていたんでしょ(¬は否定マーク)。こんな感じです。

https://twitter.com/bye02661/status/1664985744912556035?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(28) 
γはαなら通常βとなる経験則や根拠で、当該案件での前提条件のこともあります。この遅刻例では自明ですが、γが自明でない場合には、当方が立証したり反対尋問の最初の方でさりげなくγを確認する質問を、布石として行ったりすることになります。

https://twitter.com/bye02661/status/1664988302875738113?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(29) 筆者が第2との対比で「弾劾の第1パターン」と記した、直接の矛盾を示す反対尋問の手順については、刑事弁護の先生方による優れた先行の蓄積が既にあります(「CCC」と呼ばれる技法など)。第2パターンをクリアに表現したことが本書第2版の特色といえると思います。

https://twitter.com/bye02661/status/1664991316194000896?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(30) 反対尋問も当然ながら言語行為の一種なので、言語の分野の知見が参考にならないかなと思ってアンテナを立てています。本書§9で「なかった事実を提示する」話を書いていますが、このうち「船長と航海士」の話は、宇佐美寛教授が書かれていた内容を元にしています。

https://twitter.com/bye02661/status/1672407822657806336?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(31)初めて反対尋問をする人に何をどうアドバイスしますか?とりあえず最低限ということなら、やはりまずはこれだけ「5大べからず」§47でしょうか。5大を更に単純に言うなら「クローズドなQだけで外堀を埋める」ことを意識して反対尋問メモのシナリオを作ることです

https://twitter.com/bye02661/status/1677866191103365121?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(32) まずはひととおり反対尋問メモを作ってみること。これが尋問予定日の相当前に終わっていないと成功は難しいでしょう。それができてから後に何十回も書き直したり、補充調査が必要になったりするからです。ひととおりの反対尋問メモの雰囲気は「静かな」ものがいい

https://twitter.com/bye02661/status/1677868526223372288?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(33) 「静かな」反対尋問メモは、事実の存否についてのクローズドなQだけが並び、それに「はい」と答えていってもらうだけで、自動的に自然に外堀が埋まっている、という雰囲気です。もちろん、実際にはついつい熱くなったりしますが、静かな幹がある、という感じがいい

https://twitter.com/bye02661/status/1677869570017865728?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(34) スキルって、「分かった」と感じられるのは、具体的なきっかけやトリガーが自然に身についたときかと思います。これを言葉で伝えることは難しいですが、例えば「なぜ、と聞きたくなったら」→「なぜ質問」でなく事実の存否の質問に置き換える(本書§50参照)。

https://x.com/bye02661/status/1739826265375514677?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(35) 別のトリガーですが、(そうであるなら)「契約書作っておくべきでしょ」のように「~べきでしょ」と言いたくなったら、それを言っても議論になるだけ。例えば経理部勤めだという事実、つまりより強く作るはずという推認を働かせる間接事実を示す(§71)ことでしょう

https://x.com/bye02661/status/1739827970859213110?s=20

以下、番号ママにて掲載しております。

民事反対尋問のスキルの読み方(34) 時折、若手の方から「初めての反対尋問」で本をしっかり読んで準備しました(が、やっぱり難しかった)、という声を聞きます。現実のやりとりでは「アタマ」での理解でなく「経験」から体得した知識が必要なので、反対尋問の直前に本を読んでも効果は限定的でしょう

https://x.com/bye02661/status/1759821575208227066?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(35)まず反対尋問のかなり前に、本書の「反対尋問でやること」を見て目的と2つの弾劾基本パターンをざっと理解頂く。次に、「反対尋問の準備」に則り準備スケジュールを考える。そして、尋問日まで相当の余裕をおいて、獲得目標を考えたうえ、粗々の尋問メモを作ってみる

https://x.com/bye02661/status/1759823596413993161?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(36)そして、尋問メモの発問について「5大べからず」のQになっていないか、べからず違反の場合、そのQをその問い方で聞くことが必要か、別の形にできないか、など考え直してみるとよいです。オープン質問、「なぜ質問」、普通~するでしょう、と意見を述べるQなどです

https://x.com/bye02661/status/1759825577488597146?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(37)若手の方の研修会を担当していますが、反対尋問を実演して頂くと、よくある表現をいくつか挙げてみます。「~ということでよかったでしょうか」→よかったか、と聞かれると人はすんなりと認めにくくなります。考えさせ、留保を付けられたり、少なくとも時間をかけます

https://x.com/bye02661/status/1760445897996185966?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(38) 似た表現ですが「~で間違いないですか」→やはり考えさせてしまいます。証人のそれまでの陳述等から特に争わないはずの事項については「~ですね」と軽く確認してすぐ次の質問に移りたい。余計に考えさせたり時間を消費するおそれのある表現は避けるのがよいです。

https://x.com/bye02661/status/1760448551300276452?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(39) 最初に名乗る際「○○から伺わせて頂きます」は多くの場合丁寧すぎ、「○○から伺います」でよいと思います。次に、最初に何を言うか、です。「被告代理人からの質問は終わってますので、ここからは私の質問に答えてくださいね」など、反対尋問者が主導権を握る時間

https://x.com/bye02661/status/1760463874216829154?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(40)主導権を握る時間帯だということをやんわりと注意しておくとよいと思います。ここで、スムーズに質問に入っていく狙いで(被告とされているが)「○○さんとお呼びしますが、ここからは私の質問に答えていただくようお願いします」などと話しておくのもよいと思います。

https://x.com/bye02661/status/1760466334893416888?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(41)「~ですか」と「~ですね」の違いもあります(本書§44)。軽く確認してすぐ次に行きたい事項については、少しでも考えさせてしまう「か」でなく「~ですね」と聞くのがよいです。たった一字ですが、現場では攻める気分の流れで「か」になってしまうこともあります。

https://x.com/bye02661/status/1760946002557796491?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(42) もちろん、ケースにより、「~ですか」に対して肯定せざるをえない証言者がプレッシャーを感じているように見える方が効果的ということもあるでしょう。ただ原則は確認してすぐ次に行きたい場合は「~ですね」。事前メモ作成時にどちらにするかまで考えておきます。

https://x.com/bye02661/status/1760947161922171151?s=20

民事反対尋問のスキルの読み方(43) 改訂を意識しないで、一度執筆した書籍の内容について調べ直すということはあまりしないと思いますが、義務でなくやってみると色々な気づきがあるかなと思います。本書の第2版が具体化する前の時期は、研修会などの機会に見直して気づいた色々なことがありました。

https://x.com/bye02661/status/1766996661958537603?s=20

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民事反対尋問のスキル いつ,何を,どう聞くか?(第2版)

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