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楽曲探訪:乃木坂46「三角の空き地」

世の中には様々な「いい曲」があると思います。

毎日のように聴くようにしているルーティンになっているような曲。
テレビやラジオで流れているのを久しぶりに聴いて、しみじみいいなあと思う曲。
そして、何かあった時に不意に思い出して、こんな歌があったなと、ふとエモーショナルに浸るような曲。

私なりに「三角の空き地」は、そういう曲だと思います。
いろいろな思い出があります。
本当にいい曲です。

私と中田花奈さん

私が中田花奈さん(以下:かなりん)を見つけたのは2011年の「乃木坂って、どこ?」という番組でした。
私はその頃バリバリのAKB48のファンで、その流れで乃木坂46やその一連のコンテンツを見ていたのですが、その際にかなりんを見つけました。

私がかなりんに見出したのは、「AKBっぽさ」です。AKBっぽい子がいるなあと思いました。
うまく言葉にできない、直感的なものです。
初期の生駒里奈さんや生田絵梨花さんにも似たようなものを感じていましたが、かなりんが特に顕著でした。

なんていうんでしょうね。
クラスにいるかわいい子だけど、あんまり喋らない地味な女の子」。そういう印象でした。
アイドル好きなのもそういうイメージに拍車をかけていたかもしれません。

だから自然とかなりんのことは目で追っていました。
本当にいい子だし、熱いハートの持ち主だし、何よりファン想い。
ダンスが上手で、表現力があったことも魅力的に映る要素でした。
とにかく、気になってしまう。
私にとってそういう存在でした。

だから「インフルエンサー」で久々に選抜入りした時は本当に嬉しかったです。
2013年に再度選抜落ちしてからも、粘り強く活動し続けたかなりん。そんなかなりんと一緒に決して諦めることなく応援し続けたかなりん のファンの皆さん。

アンダーになってからは長く伸ばしていた髪も、「インフルエンサー」で再びバッサリ。
ショートボブ。やっぱり中田花奈ってこれだよね、みたいに思えるかなりんも良かったです。

あと、「インフルエンサー」以降はなかなか選抜メンバーに選ばれることはなかったけど、他仕事等で歌番組を欠席するメンバーのポジションにすんなり入るかなりんが好きでした。
まさにこれぞ中田花奈、という感じ。
一介に推しとは言えないけど、かなりんのああいう姿が好きだったファンは多いはず。

卒業の際も、世間の雰囲気や時期的に白石麻衣さんの卒業の裏でひっそりと卒業していきました。
でも、その時に地上波の歌番組で代表曲「おいでシャンプー」をセンターで卒業記念で披露できたのはひとえに彼女の人徳と、運営からの労いの気持ちだったと思います。
そういうことを周りの人はみんな知っていて、その結果好かれている。

不思議だけど、実に魅力的なメンバーでした。

そんな感傷的な 僕は君が好きらしい

アンダー曲の集大成

さて、「三角の空き地」という楽曲の話にしたいと思います。

乃木坂46は「選抜」と「アンダー」という区別でメンバーを分けることがあります。
本来はAKB48において、劇場公演のオリジナルメンバーのポジションに対し、それの代わりで出演する「代役」という意味合いで使われ始めました。

昔はAKB48のカップリング曲にも、アンダーガールズという名義がありました。
乃木坂においては、それの派生で仮につけられた名称だったかと思います。
でも今ではAKBにアンダーという分類の集団はなくなったので、もう現在ではほぼ完全に乃木坂用語と言っていいでしょう。

選抜は言わずもがなですが、昔はアンダーも個別に積極的にライブ(アンダラ)とかがあって、なかなか精力的でしたよね。
アンダーの下剋上感と、これから選抜入りだというワクワク感。それがアンダーの持つ不思議な結束力と魅力につながっていたと思います。

アンダー曲って、基本的に暗い曲調の楽曲が多いんですよね。
基本的に表題曲がメインにあって、個別にピックアップしたユニット曲や企画曲があって、アンダー曲はそれの穴埋めみたいな。

「三角の空き地」の表題曲である21stシングル「ジコチューで行こう!」の収録内容の構成を見ればそれは一目瞭然です。

明るく、自分を励ますような歌詞のアップテンポな表題曲である「ジコチューで行こう!」。
アニメ映画『七つの大罪』の主題歌として作られた「空扉」。
3期生のフレッシュな楽曲である「自分じゃない感じ」。
日本テレビ系高校生クイズのタイアップ曲である「あんなに好きだったのに…」。
あとは、何曲か選抜メンバーのユニット曲があって、最後に「三角の空き地」というラインナップ。

21stシングルはこういう内容となっています。どうしても、表題曲やユニット曲がアップテンポなことが多いので、シングル全体の構成的にアンダー曲はいつも暗いミディアムテンポの曲が多いんですよね。
アップテンポな曲もあるんですけど、明るい曲というのはどうしても少ないんです。

「三角の空き地」もその例に漏れません。
でも、この曲はそれこそ、これぞアンダー曲と言えるようなどこか不思議な「乃木坂らしさ」があるんですよね。
表題曲とは違う、カップリング曲ならではの魅力とでも言うんでしょうかね。

まず、曲名に「三角」が入っているのがいいですよね。坂道グループのアイコンである「⊿」を連想させます。

あとは、失恋や悲恋を歌う曲なんですよね。
それでいて、曲の主人公が大層な哲学的思考を持っており、思慮深さや感傷がある感じ。


他のアンダー曲で言えば「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」「涙がまだ悲しみだった頃」「嫉妬の権利」の系譜です。
これらの曲もファンの間で語り継がれる大変な名曲ですよね。

「三角の空き地」もここに名を連ねるどころか、一歩抜きん出たイメージがあります。
これぞアンダー曲という不思議な存在感を持つ曲です。

暗いくて切ないんだけど、どこか力強くてエモーショナルな曲。
これぞ、乃木坂46を裏から支えた「アンダー」の彼女たちが表現するべきに相応しい曲だと私は思いますね。
本当に名曲です。

すべてがエモーショナル。すべてが中田花奈のためにあるような曲。

そんなこれぞ乃木坂、これぞアンダーという楽曲のセンターにかなりんが抜擢されたことは絶対に意味付けがそこにあると思っています。
この時期のアンダーには、他に魅力的なメンバーやかなりん以上に人気のメンバーはいましたが、「三角の空き地」のセンターに中田花奈が選ばれた理由が必ずあります。

むしろ贔屓目じゃなく、かなりんがセンターだったからこそこんなに魅力的な楽曲になったのではないか?とも思います。

かなりんがセンターだからこそ、「三角の空き地」はこんなに魅力的に仕上がって、私たちの元に届いたんだとも思うんですよね。

ダンスはもちろん、衣装がセクシーですよね。かなりん着用の衣装は他のメンバーが半袖・長袖と様々なのに対して、ノースリーブになっているんですよね。
首のチョーカーや、手袋も相まって、上半身全体の黒色はとても映えます。
でも、スカートの色も目が覚めるような赤色でこれぞセンターといった感じ。

個人的には「せっかちなかたつむり」や「口約束」を差し置いて、「おいでシャンプー」に匹敵するくらい彼女の魅力が存分に出ている曲だと思います。

本当に、「三角の空き地」=中田花奈とハッキリ言えるような。
かなりんだからこそ、こんなに私たちの心に深く響くような楽曲として世に出てきたのだと思います。

だけど今は 手を伸ばしても
三角の空き地だ

最後に

中田花奈さん、卒業しちゃいましたね。
本当に白石麻衣さんの影でひっそりと卒業しましたが、それでも卒業記念の写真集発売は嬉しかったですね。
付録のタロット風ポストカードも彼女らしいと思いました。アイデアとセンスのある人なんです、彼女は。

タイトルの『好きなことだけしていたい』。
秋元康さんの帯コメント。

中田花奈の笑顔に癒される人は多いだろう。
それは、“今”という瞬間を心から楽しんでいるからだ。
『好きなことしかしたくない』という彼女は、子どものように無垢である。

秋元先生が書いてくれる写真集の帯コメントにしては、かなりの長文です。
それもそのはず。かなりんは乃木坂最初期を代表するメンバーでしたからね。

他の1期生もそうですけど、比較的に秋元先生が乃木坂46のプロデュースを熱心にしていた時期です。今はもう乃木坂には楽曲の提供くらいしかしてないですけどね。

さて、久しぶりに「三角の空き地」のことを思い出しましたが。

これからもきっと、何かにつけて思い出すんでしょうね。
この名曲を、彼女の思い出とともに。

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