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105_『ピンポン』 / パク・ミンギュ

単調な日常の繰り返しに刺激を求めて手に取る一冊。

本の中に広がる、自在の想像力は確かに刺激となる。このパク・ミンギュのその意味での安定感。

サブカルチャーのジャーゴンとして一時的に流行った「セカイ系」の類型が奇しくも当てはまってしまう本作。学校帰りの野原での何気ないやりとりの繰り返しが、最終的には地球の存続にまで繋がってしまう。

ピンポンのラリーのように繰り返す日常。ただ、いつかはスマッシュを決めるし、あるいはミスをして、ボールは地面に落ちる。そのボールがあるいは地球だったとしたら。

とにかく、ひたすらに疾走する想像に頭も耳も目も、全神経をそのまま委ねるのみ。もしかしたら、いや、もしかしなくても、その意味や物語を理解する必要はなくて、その流れに思考を同調し自分もいつか走り出してしまうような感覚。

この不思議な感覚は、翻訳による効果もあるような気がしていて、それは『ライ麦畑でつかまえて』で感じたそれに近い気もする。この言葉の上を走るような感覚。

この読後感を、ピンポンのように、誰かと語り合いたい、そんな気分。



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