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『氷の城壁』第4巻購入・紹介・感想(その3)

はやくも数日後の今月4日には、物語の前半終了ともいえる第5巻が発売されるので、取り急ぎ第4巻の残りの感想について、比較的簡潔に書いていくこととします。
もちろん本記事を含めてネタバレになっていますのでご注意くださいませ。
また、(その1)(その2)は以下をご覧ください。

涙を流してしまうほど感動してしまった第4巻部分(その3)

【美姫を救うこゆん(主に40話「陰と陽」)】
いつものように保健室で昼食のパンを食べているこゆんに、美姫が相談を持ち掛けるシーンが中心となります。
ずいぶんあとの話(『氷の城壁』全体でも非常に重要な回で出てくるセリフなので、あえて第何話かは明記しません^^)でこゆんが自分で言うように、「私は昔から 怒りやすくて 心が狭くて こういう人間だよ」という側面で、自分だったらこうするという意見を最初に出し、こゆんが相談に対応しはじめていきます。さすがの美姫も引くくらいの描き方は素晴らしすぎます。そしてこの相談のなかで、こゆんの名文句が出現します。

「良い所」なんて 誰にだってあるよ
(中略)
その人の 「一部」や「一瞬」」に
ズルズルしがみついていたら
どんどん自分を 消費していくだけだよ
そんな美姫 私は見てられない

「集英社」ジャンプコミックス『氷の城壁』第4巻p.163,165

人生の折り返し地点をとうに過ぎた自分でも 「良い所」なんて 誰にだってあるよ という言葉を初めて見聞きしました。このセリフの強烈さといったらありません。先生の感性とこゆんというキャラクターが最高にうまくはまっています。加えて、美姫のことを本当に大切な友達と思っていることもものすごく伝わります。

そして最後のほうでこゆんは美姫に「誰といる時の自分が好き?」といい、行動してもらいたいという指針を提示します。これに対して美姫のセリフが一般的には思い切り意表をつく「みんなと仲直りしたい」でして、こゆんもぽかーんとして「美姫・・・ すごすぎる・・・」と思い、わたしもそうくるかぁ・・・と初読時には思い、涙を流すほどでした。

おとといまででしたらここでこのシーンの感想は終わりでしたが、昨日、久しぶりにマンガMeeで無料部分(10話まで)をよみかえしたところ、実はまさかまさかの第1巻3話の伏線回収であることに気づいてしまい、このことについても感想を書くこととします。
3話では、ネコをかぶってしまう美姫がこゆんにこぼす場面ですが、以下のやりとりがありました。

●こゆん「私だったら 合わない人と関わるぐらいなら・・・ 1人になりたいけど」
●美姫「えええ~ 1日中誰とも喋らないとか死んじゃう・・・ 」ムリ
●こゆん「だよね。」美姫は

「集英社」ジャンプコミックス『氷の城壁』第1巻p.37

3話では美姫が単にグチをこぼしているだけなのに対し、40話では実際に何らかの対応をとらないといけない局面なのにもかかわらず、基本的にこゆんも美姫もその時点での「本来の自分」に沿って話し、3話と同様の意見・対応を決めていることになります。3話では簡潔かつコミカルに書き、40話では実際のトラブルに即してものすごく真剣なタッチで表現しています。こんな伏線回収ってあるのかな、と昨日初めて思った次第です。
美姫・・・ すごすぎる・・・」という表現が、この書き分けのすごさを増幅していることを含め、改めて阿賀沢紅茶先生のすごい才能を感じさせるシーンでした。

ほんとは今回で第4巻の感想を終えるつもりでしたが、3話と40話の対比を書くことによってだいぶ長くなってしまいましたし、ミナトならではの対応にも感想をつけたいということで、ミナトの対応については項を改めることとします。

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