雑学マニアの雑記帳(その11)1961
数学好きというものは、問題を解くことが好きであるだけでなく、問題を作り出すことも好きであったりする。役に立つかどうかは度外視して、身近な事柄でも面白いと思えば問題を作り、そして自分で解を模索する。傍からみればマニアック以外の何ものでも無いかもしれないが、マニアの側からすれば、それが楽しいのだ。
さて、ある日のこと、ふとひとつの問題を思いついた。自分の生年(1961年)にちなんで、1961という数字は、何か面白い性質を持っているのか、持っているとすればどのようなものか、という問題である。「面白い」というのは曖昧な表現で、凡そ数学の問題を設定するに当たって使用すべき表現ではないのだが、例えば「素数」であったり、「平方数の和」であったりすれば、自分としては十分面白いものの範疇に入れることができる。ここでは、個人的な興味によって問題を設定しているので、自分にとって「面白い」と思えれば良いものとして、話を進める。
さて、この1961という数字、一見して2、3、5では割り切れないことが分かるので、ひょっとしたら「素数」かもしれないという期待が持たれる。早速、調べてみることにする。もちろん、ネットで素数表を見てしまえばすぐに素数かどうか判定できるのだが、それでは面白くない。せっかくなので、エラトステネスのふるいに掛けていき、判定の過程も楽しむことにする。電卓やエクセルを使っても良いのだが、じっくりと楽しむには暗算に限る。7、11、13と順番に素数で割れるか確認をしていく。
割り切れる素数が見つからないまま、29、31と進んでいくがまだ割り切れない。残るは37、41、43のみ。この三つで割り切れなければ1961は素数である。これはいけるかなと思った矢先、残念ながら37で割り切れてしまった。1961は、37×53というふたつの素数の積であったのだ。しかしながら、これはこれでレアケースではないだろうか。1900年代の100年の内、37より大きな素数同士の積で表されるのは、1927(41×47)しか存在しないのだ。1961はそれに次ぐ快挙といって良いだろう。我が生年、なかなかのものである。
今後もし、個人的なグッズをオリジナルで作るようなことがあって、その中に長方形の部分があるのなら、迷わず縦37センチ、横53センチにしよう。面積1961平方センチのミニ風呂敷でもつくろうか。
さて、素数の次は平方数の和に挑戦だ。ここから先はエクセルを駆使して効率的に作業を進めることにした。これも下の図中の二番目の式で示すように、44の二乗と5の二乗の和で表現できることが判明。ピタゴラスの定理を使えば、直角を挟む二辺の長さが44と5である三角形の斜辺の長さは1961の平方根となるわけだ。1961の平方根の作図をする機会があれば、この性質を使うこととしよう。(そのような機会など、有ろう筈がないとは思うが。)
その他にも、平方数の差、三つの平方数の和差、立方数による表現など、下図(3)~(5)に示すように1961はなかなか「面白い」性質を持っていることが判明した。これだけの結果が得られれば、とりあえず満足。こんな遊びなら、お金も一切かけずに楽しむことができるのだから良いことずくめ。ボケ防止も兼ねた老後の楽しみとして、数字遊びは打って付けである。
ところで、五番目の式だが、末尾の4の3乗の項は余計である。これがなければ、非の打ちどころのない「面白い」式であっただろう。逆に言えば、4の3乗である64を1061に加えた2025年について言えば、この最後の項が外せることになる。そう思うと、2025年生まれが俄然羨ましく思えてくる。
しかも、この2025という数字、一見して25で割り切れることが分かるので、試しに割ってみると商は81となる。81といえば、言わずと知れた掛け算九九の最後を飾る「九・九・81」である。一方で25の方は「五・五・25」である。つまり2025は次の式でも表現することができる。
つまり、2025は平方数(45の二乗)でもある。さらに、この式を見ていると、五の二乗の部分が気になる。五の二乗といえば、思い出すのがピタゴラスの定理の説明で良く出てくる次の関係式だ。
この式を使えば、次のような形に変形することができる。つまり、2025はふたつの平方数の和としても表現出来る訳だ。
ここでさらに式を変形すれば、次のような式を得ることもできる。
自分の生年ではないので、2025の分析はこのあたりで止めておくが、調べていけばまだまだ面白い性質が見つかりそうな予感がする。1961も面白かったが、2025も侮れない。ただし、1961にはもうひとつ、2025にはない性質がある。算用数字で書いた時に、下の図のように上下逆から見ても同じ(180度回転させても同じ)となる「点対称」な図形になる。これも「面白い」性質のひとつである。西暦でこのような数字は滅多に現れない。
このように、数字遊びには尽きることがない楽しみがある。点対称の西暦は他にどのくらいあるのか調べるもよし、ふたつの平方数の和で表すことができる西暦はどのくらいの頻度で出現するのか調べるもよし。芋づる式に新たな問題はいくらでも作ることができる。数学好きの興味の対象は尽きないのだ。
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