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大学の価値を社会に伝えるには、どうするべきか?札幌学院大学の斬新な取り組みから感じる、新たな視点とヒント。

普段、大学と関わりを持たない人にとって、大学はどちらかというと足を踏み入れにくい施設なように思います。とはいえ、一度でも大学のキャンパスに訪れてもらえたのなら、大学は思いのほか一般の人に対してウェルカムな場所だとわかり、大学を見る目も変わっていくのではないでしょうか。今回、見つけたのは、札幌学院大学の一般の人たちを大学に呼び込むための少し変わったアプローチです。いろいろと気になるところがあるものの、こういう視点での取り組みを、私はこれまで見たことがなかったので、すごく気になるところです。

では、これ、どのような取り組みなのかというと、ショッピングモールの販促キャンペーンの賞品として「一日学生体験」をプレゼントするというものなんです。リリースを読んで最初に浮かんだのは、一般の人はこれを欲しがるのか?という素朴な疑問です。

リリースによると、このプログラムの内容は、模擬講義、キャンパスツアー(施設見学)、レクリエーション、ランチ体験とあります。詳細まではわからないのですが、これだけ読むと、オープンキャンパスに近いように感じました。しかし、高校生がオープンキャンパスに訪れるのは、楽しみたいためではなく、志望校になり得るかどうかを確認するため、つまり情報収集のためです。今回の取り組みは、ショッピングモールの買い物客がターゲットになるので、エンタメでなくては成立しません。

ここでまた素朴な疑問ですが、オーキャンは一般の人からしたらエンタメになりうるのでしょうか。大学関係者からしたら、オーキャンは受験生向けのイベントだと骨の髄まで理解しているので、これをエンタメとして活用するという発想はまぁなかなかでてきません。私も外部からではありますが、大学にずっと関わっているので、オーキャンが受験生向けイベントだと骨膜ぐらいまで浸透しており、一般の人向けに開催するという発想はでてきませんし、一般の人が楽しめるものだとも思っていませんでした。これが単なる思い込みで、実際は“賞品”になりえるのかどうかというのは、けっこう興味があります。

また、今回の「一日学生体験」がオーキャンぽいというのは、リリースに書かれていた内容を見た印象でしかなく、本当は違うのかもしれません。では、オーキャンという枠を取り払ってしまい、そもそものところで、大学が持つ多種多様なコンテンツを上手く組み合わせたら、ショッピングモールの買い物客に響くエンタメをつくれるのか?、これも気になりました。

公開講座や大学博物館、大学図書館、学食など、大学には一般の人も楽しめるコンテンツはそこそこあり、組み合わせによっては何とかなる、のか……。でも、けっこう人を選ぶよなあ……。考え出すと、なかなか悩ましいのですが、工夫次第では魅力的なプログラムをつくれる可能性はゼロではありません。こういったプログラムを考えるのに学生たちを巻き込むといいアイデアに頼るのもいいかもしれません。今回の札幌学院大学は、いちゼミでの取り組みでしたが、全学規模でのコンテストにしたり、大学を横断したプロジェクトにしたりすると、より面白いものが生まれるように感じました。

さらにいうと、大学の持つさまざまなコンテンツを、一般向けのエンタメにするという発想も面白いのですが、これを“賞品”にするというのも、絶妙なところをついてきたなと感じました。今回のプログラムが、もし有料だったら、購入しようとする人はあまりいなさそうです。かといって、無料にしてしまうと、それはそれで広告臭が立ちのぼってくるし、安っぽさが出てきます。でも“賞品”であれば、本当はもっと価値があるんだけど、当選したので無料でお渡しします、みたいな意味合いになり、価値を保ちつつハードルを下げることができます。世間からの価値が定まっていない、今回のような取り組みを広げていくうえで、このやり方は、かなりベストに近いように感じました。

18歳人口が減り続けることがわかっており、大学はより広い世代に門戸を開けた場にならないといけないとずっと言われています。その取っ掛かりとして、大学の価値を社会に伝える、広める、ということがとても大事です。今回の札幌学院大学の取り組みは、荒削りではあるものの、大学に接点がない人に大学を伝えるという意味で、非常に参考になるように思います。個人的には、この発想を発展させて、いいプログラムをつくって、ふるさと納税の返礼品にできたらいいのになあ、なんてことを妄想したりしました。

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