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些細なことだけど、とっても大事!?プロジェクト名に”オール近大”とつけられる、近畿大学の文化の価値

大学と地域の連携は、いろんな大学がいろんなアプローチで行っています。今回、見つけた近畿大学のプレスリリースも、そんな地域連携プロジェクトの一つを伝えるものになります。内容もさることながら、プロジェクト名の付け方が、とても近大らしいなあと感じたので、今回はこちらを取り上げたいと思います。

オール近大で取り組む?地域連携プロジェクト

ではまず、どのような取り組みなのか見ていきましょう。取り組み名は「"オール近大"川俣町発・復興人材育成プロジェクト」といって、東日本大震災からの復興に取り組む福島県川俣町を支援するプロジェクトになります。2021年度から5ヵ年計画で継続的で実施しており、今回のプレスリリースでは「かわまたジェラート」の新味「ニホンミツバチのはちみつ」を開発し、販売することを伝えていました。

震災から10年以上が経ってもなお、このような活動が続いていることに、ほっこりとしながらも、今回、気になったのはそこじゃないんですね。プロジェクト名、より詳しくいうと"オール近大"というくだりに惹かれました。

というのも、このプレスリリースを見て「"オール近大"川俣町発・復興人材育成プロジェクト」とあり、ひとつの町を近大が総出で支援しているのかと思って、リリースを読み始めたんです。それで読んでいくと関わっているのが、農学部2学科と、文芸学部1学科ということがわかってきました。近大は15学部49学科+短期大学部があるので、ぜんぜんオールじゃないわけです。

さらにもうちょい深堀りして近大の公式Webサイトを見てみたところ、このプロジェクトに関わっている担当教員の名前が15名載っていました。農学部、文芸学部以外の教員名もあり、プレスリリースから受けた印象より大規模だとわかったものの、オールかというと、うーん、どうなんだろう…という感じです。

実態より想いを大事にする文化が取り組みを加速させる

”オール近大”って書いているのに、実態は”オール近大”ではない。こういった事実にネガティブな印象を持ったのかというと、ぜんぜんそうではなくて、近大らしくて良いなあと感じました。だって、自分がプロジェクトの名前を付けられる立場にいて、将来的に多くの学部学科に関わってほしいと思っていても、現段階で関わっているのは数学部+数組織の教員のみだったら、なかなか“オール◯◯大”ってつけられないと思うんです。取り組みを紹介する記事の見出しなんかではつけるかもしれません。でも、煽り文句とプロジェクト名では天と地ほどの差があります。プロジェクト名に、こういう言葉を入れるのって、かなり勇気いるんじゃないかという気がします。

でも、近大はこういうタイトルの付け方を、ちょくちょくやるんです。いくつか目についたものを下記させてもらいます。

◉ “オール近大”新型コロナウイルス感染症対策支援プロジェクト

◉ オール近大健康観察継続プロジェクト

◉ 理工系院生・学生のためのオール近大 業界研究フェア

1つ目の新型コロナウイルス感染症対策支援プロジェクトは全学的な取り組みですが、2つ目の健康観察継続プロジェクトは東大阪キャンパスの学生のみ対象だし、3つ目の業界研究フェアも理工系の院生・学生に向けた取り組みです。実態を正確にあらわしてなくても、意気込みや想いがあれば、それを優先して名前を付けてもいい文化が近大にはあるのでしょう。これって些細なことなんですが、現場や企画立案者へのリスペクトが根付いているからこそできることです。

このように書くと、別にどの大学でもできるし、やっているのでは?と思う人もいるかもしれません。確かにできるっちゃできるでしょう。でも、本当にやるのか?というと、誰かにツッコミを入れられそうだとか、大風呂敷を広げるのはリスキーだとか、いろんな懸念が出てきて結局ボツになる気がすごくします。企画立案者の想いより、何かあるかもしれないという曖昧なリスクを回避することの方が大事だと考えてしまうわけです。さらにいうと、そもそもつくり手の想いを重視してイベント名やプロジェクト名を付けるという発想自体がない大学も、なかにはあるのではないかと思いました。

“オール近大”じゃなくても、“オール近大”という気持ちがあれば、“オール近大”と言えちゃうのが、すごく近大らしい!そして、こういう名付けができるのは、現場をリスペクトする文化があるから(予想)。そんな一文で済むことを書きたかっただけなのですが、書いてみると長い文章になってしまいました…。広報的なインパクトも強まるし、現場のやる気も上がるので、やり過ぎはダメですが、こういう文化ってすっごく大事な気がします。

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