そもそも別物!?大学のこれからを左右するかもしれない、これからのキャリア教育&支援について考える。
今回、取り上げるのは立教大学のオンラインイベントです。オンラインイベント自体もう今となればめずらしくないうえ、このイベントが取り上げているテーマもそこまで突飛なわけではありません。でもこれは……と思ったのは、このイベントがキャリアイベントと銘打っていたからです。大学のキャリア教育、キャリア支援というのは、これから先ものすごく変わっていくんだろうなと、このイベントを見つけてしみじみと思いました。
今回のキャリアイベントは合計3回あるのですが、注目したいのは1回目と2回目です。1回目は「Rikkyo Career Conference 2021『Society5.0を支える人材育成と産学協働のあり方』」という、企業採用担当者を対象にしたセミナーです。人材を送り出す側の大学が、企業採用担当者向けにセミナーをするのも面白いですし、そのテーマがSociety5.0というのも面白い。採用ノウハウや人材育成等ではないんですよね。2回目は「社会を知る講座『私たちの知らない5Gの世界~5Gの今とこれからを紐(ひも)解く~』」という在学生向けのセミナー。こちらも業界研究やキャリアデザイン等ではないんです。
大雑把にいってしまうと、採用する側のセミナーも、される側のセミナーも、未来社会についてがテーマ。これらがセミナーのテーマになるということは、採用する側もされる側も、社会がこれからどうなっていくかがわからないということです。アメリカの研究者、キャシー・デビッドソンが、「2011年度にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」と語り、話題になったことがあります。まさにこういった社会に近づいてきている、どころか、コロナによって社会がまた別のベクトルでも変化しているので、未来はさらに予測困難になってきているように思います。
ひと昔前のキャリア教育やキャリア支援というのは、業界や仕事、働き方がある程度定まっていたり予測できていて、それを理解することや、理解したうえで対策するのが主な内容でした。でも、これからのキャリア教育&支援は、どうなるかわからない社会を予測することであったり、予測した社会で働き続けるにはどうしたらいいかがテーマになります。さらにいうと、学生側だけが未来を見通せていないのではなく、企業側も同じように見通せていない、つまり答えはどこにもないのです。そう考えるとこれまでとこれからでキャリア教育&支援はまったく別物ですし、やるべきことの難易度は雲泥の差です。
私立大学を中心に、大学には「就職のために進学した」という学生がかなりたくさんいます。彼らの目的に真面目に応えるなら、これまでと同じ内容、ボリュームでキャリア教育&支援をしても、的外れになるし量もぜんぜん足りません。極端な話、研究者養成や国家資格取得を目的にしていない大学・学部なら、学びのベクトルをすべてキャリアに寄せていくぐらいの力のかけ方をしてもいいように思います。また、今回の立教大学のイベントがそうであったように、企業もまた予測不可能な社会について学ばなくてはいけません。そういう意味では、これからのキャリア教育&支援は、企業と学生、それに大学が共創的につくりだしていくものになるのかなという気がします。
VUCAの時代のキャリア教育&支援はどうあるべきか。この悩ましくも興味深いテーマは、これから徐々に顕在化してくるのでしょうが、まだ今の段階だと予測すら十分にできない状況です。学生支援や教育の一部が変わるといった小さな変化ではなく、大学教育そのものに深く関わる変化になるのはおそらく間違いないので、長期的に注意を払っていきたいです。
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