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オンライン授業に必要なのは監視か、信頼か。テレワークとは異なる、オンライン授業ならではの難しさ。

オンライン授業が、コロナ後の大学教育にどんな影響を与えるのかは、大学関係者でなくても興味のあるトピックです。今回、取り上げる早稲田大学のニュースは、そんな大学のオンライン授業の今後を考えるうえで、しっかり議論した方がいいもののように感じました。こういったニュースを、大学そして社会がどう受け止め、どうやって未来への肥やしにしていくかが、大学教育を豊かにしていくうえで必須なような気がします。

ニュースの内容は、早稲田大学の一部の学生が、一つひとつ視聴しなければいけない授業動画を何本も同時再生し、それがバレてその授業の成績が「不可」となったというもの。対面授業に当てはめるなら、代返しているのがバレて単位がもらえなかった、といった感じの内容です。これだけだと、ニュースにするほどのことでもないのでは?という気もしますが、今回は人数がすごい。なんと受講者の約半分にあたるおよそ100人が、このズルによって単位を落としています。一事が万事というか、この授業だけズルがあったとは考えにくく、他の授業でも同じようなことが起こっている可能性は十分にありえます。

またこのニュースを見て、おっ!と思ったのは、ヤフーニュースで見つけたのですが、かなりコメントが付いていたんですね。私がこの記事を書いている2月20日の段階で410件のコメントがついていました。冒頭にも書きましたが、大学のオンライン授業というのは、多くの人の関心を呼ぶ出来事なのだと、あらためて感じました。

今回のニュースを見ていて、誰が悪い、何が問題かが、自分のなかでうまく整理ができなかったので、テレワークとオンライン授業の違いとは何なのだろうという視点で考えました。ちなみに私の会社では、テレワークを積極的に取り入れており、全員が顔を合わせるのは、月1回もないような状況ですが、それなりに上手くやっています。

テレワークでのスタッフの評価は、突き詰めていくと仕事の量と質だと思います。ただこの仕事の量と質は、信頼関係があるという前提がなければ、正しく評価されにくいと感じています。出勤していたらプロセスも見えているので、なぜこの仕事がこうなったのかを、何となく察することができます。テレワークだとプロセスがあまり見えないので、本人の言葉を信じるしかありません。そうなると、信じられる、信じてもらえるという関係性がなければ、評価自体がそもそもできなくなってしまいます。

一方、大学の授業で積極的にオンライン授業が導入されているのは、大人数の授業です。ゼミなどの少人数授業ならまだしも、大人数授業で先生と学生の信頼関係を築くのは、なかなか大変です。ではこの状況で、正しく評価するにはどうするか。その答えとして、多くの大学がやっているのは、いろいろな方法で情報をとって学生たちを擬似的に可視化する、ということだと思います。今回の早稲田のように動画の再生履歴を調べたり、毎回小テストを課したり、などなどです。でもこれって前から思っていましたが、学生を可視化するための工夫であって、理解を促すための工夫ではないように思うんですね。

オンライン授業を発展させるのに必要なのは、学生を可視化することではなく、見えていなくても互いに信頼関係が結ばれている状況を、いかにしてつくるかです。学生の可視化を重視するのであれば、おそらくコロナ後、大学の授業のほとんどが対面に戻るでしょう。擬似的に可視化するより、直接、見たほうが確実だし手っ取り早いわけですから。

もちろん対面授業には価値があるし、戻るべき授業は戻るのがいいように思います。でも、せっかくオンライン授業という選択肢が増えたのだから、こっちはこっちで洗練されていって欲しい。ただ、今回の早稲田のニュースを見ると、学生との信頼関係を結ぶのは難しいなぁと感じざるをえません。反転授業にして、定期的に対面授業をはさむことによって関係性を構築したり、ゼミなどすでに信頼関係が築けているグループ単位での受講を推奨したり、何かやり方はありそうなのですがどうなのでしょうか。

早稲田のニュースに寄せられたヤフコメの数からもわかるように、オンライン授業は社会から広く関心が寄せられているテーマです。オンライン授業を取り入れるにしろ、取り入れないにしろ、大学教育について、皆で考えるよい機会だと捉え、いろいろと可能性を模索するのがいいように思います。

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