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大学にしか成し得ない視点!? 西南学院大学のリリースから考える、よりよい教育を後押しするための広報活動

大学のプレスリリースには、イベント告知がテーマになっているものもよく目にします。今回、見つけた西南学院大学のリリースも、そんなイベント告知の一つなのですが、内容がなかなかユニークでした。こういう情報発信って大学だからこそだし、工夫次第で広報の可能性が広がるように感じます。

公開練習をプレスリリースすることの意味

ではどんなプレスリリースなのかというと、同大学の法学部公認学生団体「Seinan Vis Moot」が、Vis Mootという模擬国際商事仲裁大会に出場するので、本戦前に公開実践練習を行うというもの。なんとこの公開実践練習、6回も行うようで、かなりの本気度がうかがえます。

とはいえ、本戦前に公開練習するというのは、よくあることです。これまでにプレゼン大会やビジネスプランコンテスト等に参加するゼミや学生を取材したことが何度もあるのですが、結果を残しているところは、ゼミ内や学内関係者に向けてなど、何かしらの公開練習をやっていたように思います。

公開練習がめずらしいものでないなら、なぜこのプレスリリースをわざわざ取り上げたのか?となるのですが、それはこういった呼びかけをプレスリリースでしたことに面白さを感じたからです。広報の役割を、ものすごく大雑把に言ってしまうと大学の価値を高める情報を社会ないしターゲットに伝えること、だと思います。でも、今回のリリースの目的って、そうじゃないんですよね。学生たちがよりよい学びができるように、広報という立場や機能を使って支援しているわけです。

今回、傍聴可能なのが、学内関係者と高校生に限定しているため、プレスリリースがどこまで効果を発揮するのかは未知数です。とはいえ、傍聴者が増えると、学習効果が高まるし、まったく集まらなかったら公開練習が成り立ちません。そういう意味では、広報あってこその学びだといえます。

大学広報の機能を使って、教育をプロデュースする

大学広報が教育にかかわる取り組みは、考えてみるといくつかあります。代表的なのは、学生広報スタッフとオープンキャンパススタッフではないでしょうか。前者は取材やコンテンツづくり、メディア運営などを通して、後者はイベントを作り上げることで、多くのことを学べます。また、学生を取材してコンテンツ化することも、学生が自分の活動を言語化することになり、気づきを生む営みだといえます。

しかし、今回の取り組みは、これらとはちょっと違うんです。スタッフや取材対象者としてかかわってもらうのではなく、純粋に広報の機能を使って学びをプロデュースしています。思えば、大学広報は学外と大学とをつなげる窓口です。ここだからこそつくれる体験や場であったり、広報がかかわることで学習効果をさらに高められることって、探せばそれなりにあるような気がするんですね。

“教育をプロデュースする”のは、大学広報の本来の役目ではないし、企業や自治体の広報ではまず求められないものです。そのため、こういう発想自体生まれにくく、潜在的に意識されていたとしても自覚しにくいように思います。

でも、こういった視点をもって大学広報を行うと、広報部署の学内プレゼンスは自然と高まっていくだろうし、最終的に「大学広報」=「大学の広報」でなくなるのかもしれません。短期的に見ても、当事者として教育にかかわりながら伝えることは、説得力やライブ感のある情報発信になり、他大学との差別化につながります。実際のところ何ができるのかは、もっと煮詰めて考える必要がありそうですが、発想としては面白がりつつも、頭の片隅においておいてよさそうな気がします。

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