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先行きが見えない今だからこそ、受験生には“大学さん(=学長)”との対話が必要なのではないかという話。

各大学の入試広報は、常に受験生に自大学の魅力を伝えようと試行錯誤しながら取り組んでいます。とくに今年は、コロナ禍ということもあり、どの大学もさらに工夫を凝らしており、その多様なアプローチは見ていると興味深いです。今日、開催された上智大学の受験生向けオンラインイベントも、まさにそんな工夫あるアプローチの一つ。個人的にはこういうイベントがもっと増えたらいいのになと強く思います。

では、いったいどんなイベントなのかというと、こちらです。

深く内容を読み込むまでもなく、タイトルですぐにわかります。そうです、受験生が学長と話せるオンラインイベントです。これまではオープンキャンパス内のプログラムの一つだったようなのですが、今年はコロナの影響で、晴れて(?)単独のイベントになったようです。

ちなみに今年の7月に大谷大学でも、受験と学長が話せる「オンライン個別相談会」が開催されていました。

学長と話せる機会というのは、在学生でもあまりないわけで、受験生になると、だいぶ貴重なのではないでしょうか。とはいえ、大学のことをよくよく知るために、学長と話すというのはとても有用なように思います。

“大学さん”の人柄や考えを知る、たぶん唯一の方法

大学の教育内容であったり、学生サポートであったり、すでに実施されていることであれば、知識さえあれば誰でも同じ説明ができます。しかし、これから大学がどこに向かおうとしているのかであったり、どういう想いで教育やサポートを行っているのかといった大学としての考えは、学長にしか語ることができません。これをもうちょっとくだけた表現に言い換えると、大学を一人の人物、“大学さん”と見なしたとき、学長こそが“大学さん”であり、大学と対話するというのは、学長と対話することでしかできないのです。

そして、“大学さん”の人柄や考えを知ることは、これまでも重要でしたが、コロナ禍を迎えた今、その重要性はものすごく増しているように思います。というのも、社会は、これまでもじわじわと変化していましたが、今回のコロナによって、その変化が急激に進んでしまいました。これによって、従来であれば時計の短針の動きのように、変化に気付かないでいようと思えば気付かないでいれたのですが、大学も、受験生も、気付かざる得なくなってしまった。気付かざる得ないということは、そこで何かの決断をしないといけないわけです(決断をしないという決断も含めて)。

とはいえ、大学がアフターコロナの方針を決断したと発表するときは、何かしらの中身が固まってからになるわけで、それなりに時間がかかります。コロナがいつ収まるかわからない今の状況では、そもそも方針を固めるという作業をスタートさせること自体が難しい。でも、方針が固まっていなくても、“大学さん”の頭のなかには、ぼんやりとかもしれないけれど進むべき方向が見えていると思うのです。受験生たちは、コロナが収まるのを待ってから受験するわけではないので、コロナを踏まえた大学のビジョンや方針は、“大学さん”との会話から感じ取るというのが良いように思います。

諸刃の剣?深い議論できる土壌を形成する

ここまで書いてみて思ったのですが、学長と話すことは価値のあることなのですが、その価値って何だろう?というのを、受験生に何らかのかたちで伝えたり、考えてもらったりすることが、前段階で必要になりそうです。そういうものがないと、そもそも受験生は学長と話したいと思わないだろうし、対話も薄っぺらなものになる恐れがあります。上智大学の場合、学長先生が「高校生に伝えたいことや本学での学びについて紹介する」とサイトに書いてあるので、これがそれに当たるのかもしれません。

深い議論ができるようにイベントをつくり込んでいくのは、工夫を凝らす必要があるうえ、実現できたとしても、学長がしっかりと考えていない人だったら、大学にとってマイナスにしかなりません。そういう意味では労多く、リスクも高い取り組みですが、社会、そして大学の変化がこれまでにないほど加速している今、こういう場は必須だと感じます。受験生向けの学長対話イベントが、どの大学でも当たり前のように開催されるようになったら、大学業界はもっともっと面白くなるだろうなと思います。

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