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優秀な新入社員と優秀な学生は違う!?企業が学生とのコラボに求めるものとは何なのか。

日々、大学の記事をチェックしていると週に三つ、四つ、多いときにはそれ以上たくさんの学生と企業によるコラボレーションの記事を見ます。たとえば、今週後半で目に付いた記事をいくつか並べて見るだけでも、こんなものがありました。

大学の広報物を制作するなかで、「ほとんど0円大学」の記事をつくるなかで、こういったコラボレーションを取材することがよくあるのですが、大学(と学生)が提供しようとしている価値と、企業が欲しがっている価値に、微妙なズレがあると感じることが実はけっこうあったりします。

では、何に、私がズレを感じるのか……ですが、商品開発を例にして説明してみましょう。商品開発の取材をすると、よく学生はいかに本格的に調査等をして、根拠のあるものづくりをしたのかをアピールします。一方、企業は学生の発想が柔軟であったとか、ユニークであったとか、そういったことを褒めることがほとんどなんですね。ここに、ちょっとしたズレがあるように思うのです。

綿密なマーケティング活動を行って商品開発をするのは、企業にとってお家芸です。わざわざ学生にしてもらう必要なんてありません。一方、学生は企業の本格的なものづくりのプロセスに触れてみたいがために、こういう取り組みに参加するわけです。学生は企業と同じように商品開発をしたいのに、企業はそれとは違う方法、発想、考えを求めている。そういう意味では、学生が頑張れば頑張るほど、企業にとって歓迎しない結果になる可能性があるわけです。かといって、学生らしい柔軟な発想で考えて欲しいと言い過ぎたら、それはそれで気にしてしまい迷走してしまうかもしれません。実際の現場では、企業ないし担当教員が、学生たちと併走しながら、時にアドバイスを、時にそれとなく軌道修正することで、よいコラボが生まれているように感じます。

以前、とある女子大で話していたときに、興味深いことを聞きました。そのときの内容をザッとまとめると、「優秀な大学とコラボをすると、新入社員と同じようは発想の提案があがってくる。でも、女子大はそれとは違っていて、ユニークなアイデアが出てくる。それでうちにオファーをくれる企業が多いんです」といった内容でした。

企業とは異なる環境にどっぷりと浸かっている人の考えを知りたい、そこに自分たちでは見つけられない“何か”があるかもしれない、そんな期待が、企業が学生とコラボする理由なんだと思います。そうであるなら、できるだけ企業から遠い環境にいる人が望ましいし、企業に迎合することなく自らの言葉でアイデアを口に出せる人が、コラボ相手としてふさわしい。アイデアをより強固にするために、マーケなり何なりの知識や活動は必要です。でも、一番求められているのはそこではない。そう考えると、女子大は共学よりも企業にとっては謎多き環境だし、人によりけりとはいえ、女性の方が自分自身の視点でモノゴトを語る人が多い……ような気がします。

また、別の大学で学生と企業との商品活動に関わる教員を取材したとき、「企業が入ってくれることで失敗を教えられる」という話をしてもらったことがあります。これは大学単体でベンチャーを起ち上げたり、商品を開発したりすると、資金に余裕がなく、失敗しないことを第一条件として進めるため、思い切った挑戦ができないし、学生の学生らしい発想を十分に活かしきれないという話でした。

この二つのエピソードだけで、学生と企業とのコラボのすべては語れませんが、企業が学生に求めることと、教員がコラボで学生に体験してもらいたいことには通じるものがありそうです。ここらへんをもっと整理して、ゼミレベルでいいので“コラボ方針”みたいなものをまとめておくと、より面白いコラボが増えるような気がします。

きっと優秀な新入社員と、コラボ相手として優秀な学生は、近いけど異なる存在なんです。でも、学生はこれらを同じだと思いがちです。企業がそれを学生や大学に、ちょっと違うから!とはなかなか言えないでしょうから、今回は推測を交えつつ、代わりに(?)書いてみたのでした。

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