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武庫川女子大の取り組みから考える。学内にリカレント教育の機会を提供することの、けっこう多彩な意味と価値。

学び直しの振興は、突き詰めていくと大学だけでどうこうできるものではないのですが、そうはいっても大学はこれを行ううえで非常に重要なアクターであるのは間違いありません。では、大学はどのように学び直しに向き合うべきなのでしょうか。今回、見つけた武庫川女子大学の取り組みは、これをやったら解決する!というものではないものの、推進していくうえでとても重要なところを抑えているように思いました。ぜひ他大学にも広がってほしいので、今回はこちらを取り上げようと思います。

受講するからこそわかる、リカレント教育の魅力!?

リリースされているのは、リカレント教育「MUKOnoa+(ムコノアプラス)」という取り組みです。今年4月にスタートする本取り組みは、リスキリングをテーマにしており、仕事で役立つ150以上の講座を開講するとのこと。さらに再就職・就職支援も対応してくれるようで、趣味・教養ではなく働くための学びを徹底して提供するといった印象を受けました。

ただ、今回のリリースで目に留まったのは、この取り組み自体ではなく、プレ講座を大学職員が受講生となって体験した、というくだりです。リカレント教育が大切だ、普及させよう、というのはよく聞くのですが、実際問題、提供する側はどれくらいリカレント教育を経験しているのでしょうか。

リカレント教育の推進に携わる職員は、当然その魅力をターゲットとなる社会人に伝えなくてはいけません。でも、リカレント教育に限ったことではないですが、やったことがないことの魅力を伝えるのって、ものすごく難しいですよね。私はゴルフをしたことがないのですが、もしアイアンやらパターやらを人に勧めないといけなくなったとしたら、相当困り果てるように思います。

とはいえ、スポーツ用品店であれば、スポーツが好きな人が比較的スタッフとして集まりやすいでしょう。一方、大学職員の場合はどうかというと、ジョブローテーションで定期的に部署が変わるので、リカレント教育が好きな人がリカレント教育の部署に所属できるかというとそうとは限りません。それに、たとえ学び直しに興味があったとしても、勤め先の大学の講座を費用を払って受講するかというと、うーんどうなんだろう…という気がします。

こういったことを考えると、今回の武庫川女子大のように、職員に自大学のリカレント教育を体験できる場を提供するというのは、とても大事だし、必要なことなように思いました。なかには講座の運営に関わるのだから、受講しなくても内容や魅力はわかるゾ!と考える人もいるかもしれません。でも、運営側と受講者は、まったく違うと思うんですよね。私はセミナーを運営するときがありますが、それとセミナーを受けるときでは、何から何まで違っていて、とてもじゃないですが同じ視点で捉えることはできません。少なくとも同一視ができるかできないかを判断するためにも、一度は受講者側に立つ必要があるように思います。

大学教職員は最も近くにいる“お客さん”

またぜんぜん違う視点なのですが、リカレント教育を普及していくという意味でも、大学教職員に積極的に受講を呼びかけるのは意味があるように思います。

入試広報であれば、これぐらいの学力で、このエリアからよく進学してきていて、こういうニーズを持っているといった、ターゲットとなる高校生像がわりかし明確にわかっています。一方、リカレント教育の場合、ターゲット像がぼやけがちなうえ、そのターゲットがどこにいるかもよくわからないし、どうやったら情報が届くのかもわからない。それどころか、社会人とか、管理職クラスのビジネスパーソンとかだけしか決めておらず、ペルソナの設定がされていないことも多々あるように思います。

予算が潤沢にあるのなら、それでも力業でなんとなかなるでしょう。でも悲しいかな、だいたいの場合、リカレント系の取り組みって、予算はそこまでなんですよね…。効果的な情報発信の方法もターゲットもしっかりと見えていないうえ、予算もかけられない。であるのなら、身近なところにいるターゲットに近しい人物に情報を届け、コツコツとファンを増やし、人伝えに認知拡大をしていくというのが、地道だけれど現実的なアプローチになるように思います。

では大学にとって身近な社会人が誰かというと、地域の方々!…もありなのですが、もっと身近なところにいる人たちとして、教職員がいるわけです。これまであまり“お客さん”として見てはいなかったと思うのですが、情報を届けるのが容易だし、講座の受講は本人のためだけでなく、大学構成員の能力を上げるという意味で、大学のためにもなります。もちろん受講してもらうには、それなりの優遇措置が必要でしょうが、それを差し引いてもかなり価値があるように思います。

リカレント教育の魅力を正しく伝えられるようになるために、さらにはリカレント教育の普及+教職員のスキルアップのために、自大学のリカレント教育を学内で活用するというのをぜひ考えてみてはいかがでしょう。学内でリカレント教育の価値がちゃんと共有され、当たり前のように学び直しがされるようになると、きっとその大学は素晴らしい大学になるように思います。

そして、ここまで書いて思ったのですが、正課の授業についても、教職員が受けることってそんなにないのかもしれません。ここらへんも視野に入れて、自大学の学びをどう上手く学内で活用するかを考えてもよさそうです。なんかだいぶ大事なテーマなように思いますね、これ。

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